甘えさせて



…眩しい…もう朝か。
目蓋が重い…

昨日は…ああ、そうだ。

学園長先生から命を受けて護衛した姫の城主から、礼にと上等な酒を頂戴して六年生で呑んだのだった。

今日は休みだからゆっくりしたいが何だか寝苦しい。

寝返りを打った瞬間、固いものに腕が当たり思わず目を開けた。

目の前の光景に一瞬頭が真っ白になる。

…何故…文次郎が私に添い寝しているのだ…?

硬直して動けないでいるとうーん、と伸びをして奴が目を醒ました。

目が合うとふっと微笑んで髪に触れる。

「起きたか。体…大丈夫か?」

「!?」

瞬間、長屋に怒声が響き渡った。

「貴様〜〜っっ!!一体私に何をしたのだ!!殺されたくなければさっさと答えろっっ!!」

「なっ、お前何も覚えてないのかよっ!」

「当たり前だーっ!もしっ…もしこの私に良からぬ事を仕出かしたならただじゃ置かないぞっ!!」

「俺は被害者だぞっ!」

文次郎がそう言うと仙蔵が目を見開いた。

「…まさか、私がお前を手込めに…」

「されてねーよ!馬鹿か!」

「もう、朝から何事ー?」

襖が開いて目を擦りながら伊作が入って来る。

「伊作!こやつ、酔った勢いで私に良からぬ事を…」

「やってねえって!お前が一緒に寝て欲しいって言い出したんだろうがっ!」

「なっ、馬鹿な!この私がむさ苦しい鍛錬馬鹿の貴様にそのような…」

ー一緒に寝てくれないか。

「…そのような…」

ー私だってたまには甘えたい時もあるんだ。

「…」

ーお前になら甘えられる気がする。
ー文次郎…私はお前がずっと好きだった。

「…うあああああっ!」

叫びながら仙蔵が部屋を飛び出して行った。



「…思い出したな。酔っ払いが」

文次郎が呟きながら頭をボリボリと掻く。

「朝から痴話喧嘩とか止めてね。こっちも二日酔いなんだから」

「…済まなかった」

謝る文次郎を見ていると可哀想に思えてきた。

「仙蔵はプライドの塊だから仕方無いよね。ところで本当に何もしてないんだろう?」

欠伸をしながら文次郎が答える。

「接吻して乳首に吸い付いた辺りであいつが寝ちまったんだ」

あけらかんとして話す文次郎に伊作は肩を震わせた。

「…前言撤回。馬鹿もんじっ!僕は絶対仙蔵の味方だからね!」

そう言い捨てて襖をピシャリと閉められてしまった。

「…俺だって甘えてーよ。あいつ、膝枕とか死んでもしてくれねーだろうな」

仙蔵が戻って来たらどう機嫌を取ろうか考えながら布団に倒れ込んだ。


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