第U章


 数日後、タガンの部屋に鋏が届けられた。鋏は「刃物だから」という理由で使い古した紙に包んで渡され、広げると、人が一人座れるくらいの大きさがあった。タガンは数日の間を置いてから、白の塔でユリアの前髪を切った。常に影が覆っていた眸は、それが取り除かれると、思っていたより明るいグレイをしていた。
 半透明で何もない、と思っていた眸に、光が入る。それが単なる天窓からの太陽の光であったとしても、呼び声に振り返った彼女の眼差しを、タガンはそれまでより快く思えた。


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