海神




(君よ我は此処に在り)


街の外れに打寄せる
波の音は聴こえるか
君よ我は其処に在り
今日も白砂染上げる

君よ我は此処に在り

朝日に揺れる帆船の
見えない足が辿る路
君よ我は其処に在り
今日も澪は長くあれ

君よ我は此処に在り

疲れた義足の旅人が
何かを胸に夢を視る
君よ我は其処に在り
彼人の唄は終らない


流れるだけの
身体を抱いて
地平へ向けて
今も未だ進む

船を乗せて
鳥を埋めて
昼を越えて
夜を過ぎて

流れるだけの
時の中を眠る
目覚めても尚
繰り返すまま


疲れた義足の旅人が
足を引摺り旅に出る
君よ我は其処に在り
又戻るなら迎えよう

君よ我は此処に在り

夕暮れ背負う帆船の
船乗り達は賑やかに
君よ我は其処に在り
明日も澪は白くあれ

君よ我は此処に在り

街の外れに打寄せる
波の音は聴こえるか
君よ我は其処に在り
空より近く人を待つ


君よ我は此処に在り
波の音は聴こえるか









海 神









沈みゆく身体を掬い上げ
生きろと呼んだ声がした






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