第一章


 “私立セグラノード魔法術学院”―――今年の春に私が入学したのは、国で一、二を争う由緒正しい学院だ。それは歴史であり評価でもあり、いわゆるエリートの卵が山と入学してくるようなところなのである。目的や動機はそれぞれに自由だが、多くは将来、国の魔法開発施設や取締局といった機関に所属することを目標としている。先ほど話した少女たちも、学生生活を謳歌する普通の生徒に見えたとしても、それは違う。彼女たちとて授業となればその手に握るフォークを置いて、何もない空間から伝承の産物を呼び出したり炎を渦巻かせたりと、並みの感性では到底操れないような素質と実力を要する荒技をこなしてみせるのが常なのだ。そして私は、その学院へ今年、主席で入学を果たした。学力上位の生徒にのみ与えられる、権利を得るために。
「……」
「おや、こんにちは」
「……こんにちは」
 長い廊下を進んで階段を上がり、重厚な図書館のドアを開けると先客がいた。この時間は滅多に人と会わないと思っていたので、どことなく不意をつかれたような心地だ。愛想の良さげな笑みを浮かべてお辞儀をした男に、こちらも同じく挨拶を返す。見覚えのある顔だ。確か。


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