第二章


「だめ、なわけは……ただ、どうしてですか。決して、褒められた自習ではないでしょう」
断るような申し出ではない。むしろ有り難い。だが、だからこそ疑問は尽きなかった。なぜ、どうして、本当に。ここは魔法術学院で、彼はそこの教授なのだ。魔法が怖いからそれを封じる禁書を読んでいるなどという生徒に、それを後押しするような援助をしてくれる真意が分からない。だが、彼はそうですねと軽く首を捻って、それからすぐに答えを口にした。
「どんな魔法でも、魔法を封じる魔法だって魔法です。魔法を学びたがっている生徒がいれば、教えるのが僕の仕事ですからね」
「……」
「さあ、どこまで読んでいますか?」
「あ、ええと……」
反論を挟む隙はなく、話を切り替えられて私もそれについていくほかなかった。慌ただしく禁書の並ぶ棚へ行って、端に立てられた“レヴァス”を取り出す。テーブルに置いて栞を外したら、彼も当然のように隣へ座った。眼鏡を取り出した姿に、ああそうか授業のときは眼鏡をしていたのだと、昨日容姿がうろ覚えだった理由を今さら知ってみる。
「……」
「どうしました?」
「……いいえ」
どうしてこんな自己満足のためだけの、学院とは無関係な勉強にまで本腰を入れて付き合ってくれるのですか、と。それは彼がすでに暗号の書き出しを始めていたから、何となく訊けなかった。


- 16 -


[*前] | [次#]
栞を挟む

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -