第二章


「……なるほど」
あれは、言うなれば魔法の存在そのものを疑問視させるような書物なのだ。使い手の魔法という力そのものを、即ち魔力を封じる魔法が記されている。他者に効果を発するものではなく、自分自身にのみ有効なものだ。おそらく、魔法の開発が全盛期を迎えていた二百年ほど前、意図せず危険な魔法を創り上げてしまった場合などに適用されたものだろう。刑罰の一種として使われていたという記録も残されているところをみると、魔法犯罪に手を染めた者へ、取締局から最後に使わされた魔法という可能性も高い。そういう、魔法そのものを扱えなくする魔法なのだ。禁書として扱われている理由は、その封印を解除する魔法やこれを他者に適用する魔法が開発されてしまう危険を防ぐため。
私の答えは、驚きではあっても意外ではなかったらしい。彼は何かを言おうとしては口を噤み、それからややあって小さくため息をついた。
「あなたは、自分の魔力を持て余しているのですね」
「贅沢な、話です」
「そうは言いません、こればかりは望んで手に入れたわけでもないものでしょうから。ただ、言いにくいですが」
「?」
「禁書に記されている魔法は、どんなものでも使ってしまうと犯罪ですよ。例え、誰かに危害を加えるものでなくとも」
申し訳なさそうに話す声音に、納得がいった。つまり彼は、私が自分の魔力をさっさと封じてしまうつもりで禁書を読み進めていると思っているのか。的は外していないが、少し違う。


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