ねずのもり

トロッコでねずのもりへ向かう。ここは入るにも出て行くにも、ノーラッドからのトロッコしか道がない。
ノーラッドの人々がここへトロッコの線路を引いた理由は、ねずのもりはノーラッドに近いが水気の多い小さな森で、木の実が多く手に入るからだという。奥には湖がある。これも理由のひとつのようだ。ノーラッドに水がなくなった場合も、トロッコが通っていれば飲み水くらいは確保できる。

ねずのもりは丸い葉をつけた常緑樹が並んでいた。固い葉だ。トウラの木と呼ばれていると聞いたが、アクセントに癖があったので、訛りでそう聞こえただけかもしれない。地面はトウラが作る影で湿り気を帯び、気温も低めだった。マグー鉱山から一時間ほどだとは思えない。別世界のようだ。

カロカロカロ、と鳴く鳥がいた。姿は見えなかった。カロカロカロ、カロカロカロ、と必ず三回ごとの規則的な鳴き方をする。
鳴き声の静まったところに、湖があった。水が澄んでいて、深くまで見渡せる。手のひらに掬って一口飲んだ。ほのかに金属のような香りがあるが、体には問題ないという。

地に生える葡萄というものを一房、もらって帰る。実は小さく、味は濃い。その昔、白蛇がこれを口にしたという伝承について面白いものを聞くことができた。帰りのトロッコを拾えるまでの間に、次の頁にて書き記そうと思う。



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