2月22日は猫の日。
多分、童貞×ビッチのつもり

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「ねぇ、膝枕してよ」



猫のように目を細め、勝手に人のベッドに寝転がり雑誌を読んでいた男がそう言った。

色素の薄い茶色の瞳がじっと俺を見つめ、何かを期待してるようにその後男は沈黙する。

俺は男が寝転がるベッドに腰掛けたまま、わずらわしそうに男に舌打ちしてみせる。



「なんで俺がてめぇにそんなこと」

「いいじゃん。別に減るものでもないし」

「そうゆう問題じゃねぇ」

「じゃあどうゆう問題なのさ。教えてよ」

「教えろって……」

「教えてくれないの?いや、違うね。ホントは、答えなんてないんだろ?」

「…………」

「ほら、答えられない。罰として、膝枕してよね」



男はそう言うと、人の返事も聞かずに俺の膝にその形の良い頭をのせた。地味に重いそれに文句を言いたくて口を開こうとすれば、男が笑いながら俺の唇にやけに細い指を重ねて発言を止めた。



「こういう時は、黙って頭を撫でるもんだよ。童貞くん」




ぶちっと頭の中で何かがキレた音がしたが、俺は一度深呼吸をする。落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け。こいつの言葉にキレたら、それこそこいつの言葉が事実だと認めているようなものだ。いや、事実だけど。だけど、童貞とか普通言うか。童貞を卒業できないのは、お前が黙って押し倒されないからだというのに。


俺は、お前がいいのに。


お前は、違うから。




ちらりと俺の膝の上を無許可で枕にする男を見やる。何が楽しいのか、奴はニコニコと俺を見上げていた。その姿に、なんだかもうどうでもよくなって俺は憮然とした表情を作りさらさらとした男の髪に手を伸ばす。


「ふふ、優しいねぇ。俺のお願い聞いてくれるんだ」

「うるせぇ。てめぇも黙ってろ」



言い返せば、男はふっと空気が抜けたような音で笑い、ゆっくりと勿体ぶるかのように目を閉じて俺の手のひらを気持ちよさそうに享受する。



こいつは本当に猫みたいな男だな。

改めてそう思いながら指通りのいい黒髪を俺は黙って撫でる。


普段は俺の部屋に寄り付きもしないくせに、たまにこうして帰宅した俺をこいつは出迎える。俺が昔、緊張しながら渡した合鍵を使って、俺の部屋に入っているのだ。


そうして、人のことを振り回すだけ振り回して、こいつは何の罪も犯してないような顔でこうして俺に甘えてくる。



しかし、それを舌打ちしつつも受け入れる俺はさしずめこいつの飼い主だと思えば、少しだけ気分はよかった。



「ねぇ」



ぼんやりと薄く目を開き、茶色の瞳を男はこちらに向ける。髪を撫でていた俺の手は、男の白い頬へ移る。


「キスして?」



その言葉に俺は、今度は舌打ちせず従ってやった。



本当の飼い主は誰?



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アダルティな話を目指しました。


(20110222)

 

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