「中等部テニス部のマネージャー?」
三郎に繰り返し聞かれ、俺は豆乳を飲みながら頷いた。
「うん臨時で。なんか、困ってるらしい」
「却下だ!お前、男の中に一人でなんて…!」
「…まだ中学生だろ?」
「お前、前の自分考えてみろ?十三の時にはしっかり色々経験してただろ?」
それはそうだったと頷けば、ほらみろ、と頭を叩かれた。
「でも俺は例え襲われても撃退できるだろ?」
「それでもお前は今はオンナノコだろ?」
やめとけやめとけ、と三郎はこれで話は終わりだというように手を振った。
一応世話になっている従弟の頼みだから、なんとかしてやりたかったんだけど。
「まあ、三郎がそういうなら…」
「何の話?」
やめておく、と答えようとすると、購買に行っていた雷蔵と勘ちゃんが戻ってきた。
「景吾に頼まれて、テニス部の臨時マネージャーを引き受けようかどうしようか相談してたのだ」
「あ、鉢屋。断れって兵助にいったでしょ」
「え、そうなの?三郎」
勘ちゃんがびしっと三郎に指差せば、雷蔵が驚いたように三郎に問うた。
「危険だろ?男子の中に女子一人なんて!」
「まぁった鉢屋は過保護なことする〜…兵助、鉢屋のことは気にしないで、行ってこいよ。
鉢屋のいってることは建前で、本当は景吾クンに嫌がらせしたいだけなんだから」
「そうだよ、三郎。それに兵助の行動を制限する権限はここにいる誰も持ってないでしょ?」
「でもだな…」
「あ、じゃあ代わりに僕が行こうか?」
雷蔵が名案だというように手を叩く。
それにすぐさまストップをかけたのは、やはり三郎だった。
「そんなの雷蔵だって駄目に決まってるだろ!!」
「でも、僕だって一般の男子中学生には負けないよ?」
「百歩譲って、兵助を止める権限が俺になくても、雷蔵を止める権限はあるからな!?
俺は雷蔵の彼氏なんだから!」
ぎゅっと雷蔵の肩に三郎は泣きついた。
必死すぎてちょっと怖い。
「じゃあ、兵助が合宿行ってもいいんだよな?」
「…」
「鉢屋?」
「…いいけど、」
俺が、けど?と繰り返すと、三郎は真剣な顔で俺を見て、合宿前に景吾を自分のところにつれてくるように、と言った。
その横で、すでに3個目となる菓子パンを咀嚼している勘ちゃんは、呆れたようにため息をついた。
「そろそろ景吾クンで遊ぶのやめれば?」
「遊んでない、人生の先輩としてアドバイスしているだけだ」
「人生の大半を遊んでいる鉢屋のアドバイスって。結局景吾クンで遊んでることになるんじゃないの?」
真剣な顔で答えた三郎に、勘ちゃんも真剣な顔で返した。
学級委員長委員会の二人は、基本的に普段からおちゃらけているのだから、勘ちゃんが言えたことじゃないと思うけど。
そう思ったけど、それを口に出すとまた面倒くさくなるのは目に見えている。
とりあえずは合宿にいっても大丈夫なようなので、景吾に合宿参加と、三郎が呼んでいると旨をメールした。
この合宿で愛おしい後輩と再開することは、まだこのときは思いもしなかった。
(げ、)
(どないしたん?跡部)
(…マネージャーは確保できたが…あー面倒くせぇ事になったな…)
((あの跡部様がここまで落ち込むことってなんなんやろ…))
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蛞蝓更新ではありますが、これからもよろしくお願いします!
オマケ