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数えきれないキスマーク



小鳥たちの可愛い歌声と共に私の意識は浮上した。

隣を見ると、既に彼はいない。

気だるい身体を起こし、床に散らばった服をぼんやりとした意識のままかき集め、身につけた。

寝室を出ると香る、コーヒーの香り。

私より二つ年下の彼は、朝決まってコーヒーを飲む。

因みに私はカフェオレしか飲めない。

「おはよう、名前」

新聞から顔をあげて私に笑いかける。

その笑顔が、かっこよくて美しい。

「おはよー、征十郎」

「随分ゆっくり寝ていたね。もう九時になるよ」

そう言われて時計を見た途端、私の意識が覚醒する。

今日は滅多にない彼のオフ。

だから朝から買い物に行く予定だった。

「ごっ、ごめんね、征十郎」

「いや、いいよ。あの後もレポート、遅くまでやっていたんだろう?」

その言葉にこくんと頷く。

これではどっちが年上か分かったものではない。

「朝食は僕が作っておくから、その間にシャワーを浴びてきたらどうだい?」

「いいよ、あたしが作るから」

反論すると、征十郎は膝の上に置いていた新聞を綺麗に畳んで、持っていたマグカップを机に置き私の右手を掴んで引き寄せた。

あっ、と思った瞬間にはもう唇が重なっている。

「たまには僕が作ってもいいだろう?」

微笑む彼に逆らう選択肢など、私には存在していなくて…

素直にお願いします、と頭を下げてタオルを持ちバスルームに向かう。

シャワーを浴びると、覚醒し切らなかった部分まで意識が覚醒した。

シャワーをもとの位置に戻して手早く服を身につけようとした時…

ふと洗面所の鏡に目がいった。

其処に映っているのは私の裸体なのだが、おかしい。

昨日の夜、レポートを途中のままに彼との行為に及んだ(そのあとうつらうつらしながらもレポートを仕上げた自分を褒め称えたい)。

その時付けられた首筋の赤い跡以外にも複数の跡が背中に見つけられたのだ。

「へっ?」

間抜けな声をあげて、また確認するとそれは確かに存在していて、しかも首筋の跡も数が増えている。

これ、ストールで隠せるかな?

ふと自分の身体を見下ろした。

彼の事だ。

背中だけではないはずだ。

見て見ると胸の膨らみの間、わき腹、二の腕の裏、太腿の裏、ふくらはぎ、いたるところが普段より赤く染まっている。

それはこちらが恥ずかしくなるくらいの量で…

顔に熱が集まった。


「早かったね、もうすぐできるよ」

バスルームから出ると、料理は殆ど完成しているようで、何か手伝うと言ったら食器を出してくれと頼まれた。

頷いて食器を出していると、

「今日はストールなんかするんじゃないよ」

なんて釘を刺された。

「へっ、なんで…」

「忘れたのか?今日はバスケ部のOB会だろう?」

年に一度、現役とOBが親睦を深める為に行われる洛山高校男子バスケ部OB会が今日の夕方から行われる。

去年までは私も現役で参加していたけど、今年からはOGとしての参加になる。

本当は私も準備に参加せねばならないのだが、「マネージャーは現役時代働いてくれたからいーの」と二つ上の先輩から言われたのでその言葉にありがたく甘えさせていただいているわけなのだ。

「それは分かってるけど、なら隠さないと…」

「ダメだ」

強く否定される。

「何人の男が集まると思っているんだ。」

それだけ言って、彼は私から顔を背けた。

その頬はほんのりと赤い。

もしかして、みんなにまだ会ってすらいないのに…

「ヤキモチ…?」

って呟くようにして言ったら、何も言わずに押し黙った。

それが少し嬉しくて、年下らしっくて、クスクスと笑っていると、もっと濃くしてあげようか?と笑顔で言われたので全力で遠慮した。




数えきれないキスマーク

それは年下の彼が見せた、独占欲のあらわれ。





結局、禁止されなかったコンシーラーで誤魔化したつもりが、目の行き届かなかった項に付けられたそれを実渕くんに発見され、その場で冷やかされたのはまた別の話。


企画「純白」様に提出

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