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「…赤井さん、これってさ_____」


ボウヤはいつも危険があろうとなんでも首を突っ込む。注意しても意味がないだろうと、すぐ諦めて一緒に謎を追いかける。それがとても心地よくて懐かしさに襲われる。その懐かしさがなんなのかを俺は知っていた。
ボウヤと謎解き中だか…少し、思い出に浸かってもいいだろうか。きっと俺が少しでも意識が違う方へいってればボウヤはすぐ気づいて不思議がって心配するかもしれない。でももう遅い。その懐かしさに襲われた次点で思い出はどんどん溢れていく。嗚呼、ずっとこの暖かい中で眠っていたい。
確か、その懐かしさの原点は数年前だ。FBIに入ってやっとまともな任務が任されるようになったばかりの頃。ある任務で一年間イギリスにいたとき。気晴らしに行った筈のドライブ中に事件と遭遇してしまった。

そこは川がある野原だった。ポリスやら10人にも満たない見物客がいた。そのポリスの顔は険しい。どうやら全然何も掴めないらしい。思わず、車を止めて見物客の中へ入っていった。耳をたててポリスの言葉を拾う。


「貴方が通報人ですか」
「はい…車が壊れてエンジンを直していたんです。ふと野原を見ると、川の近くに人が立っていていました。そして車の中に戻ってエンジンをかけたらバックファイヤーして、また川の方へを見たらたっていた人が倒れてて…近寄ってみたら血を流してて…」


と、太った通報人は話していた。そして自分で殺ってしまったのかもと慌てていた。殺人事件らしい。普通なら、この通報人が怪しい。こんな野原に人は普段誰も来ない。それに人が死んだ時はこの人しか居なかったのだから。だが車は本当に故障していた。もう少し、みたいと思い見物客の最前列へいく。しかし死体は数十メートル先にある。全然遠い。


「…遠いな……」
「お兄さん、もっと近くでみたいの?」
「…?」


日本語で呟くと、可愛らしい声が隣から聞こえた。日本語で。まだ幼い女の子だった。


「私もそろそろ近くで見てみたいっておもってたんだよね」
「…お嬢ちゃんが見ていいものではないぞ」
「ひとを見た目で判断しちゃだめだよ、お兄さん」


そう女の子は明るい顔でいい、俺の手を引いた。驚くことに女の子は俺を引いて現場へ入っていった。
頭が追い付かない。


「スティラさん、こんにちは」
「ああ、しゃーろっくくん。また君か。…そちらは?」
「んー、知り合い」


いつ知り合いになったんだ。お互い何も知らないだろう。英語も話せてるし、それにポリスと知り合いなのか。何も注意されず、また、と言われてる事からこれはいつもの事なのだろうか。

すると、女の子は俺の手を離し川を見始めた。そして草をみた。そして死体の方へ行く。そんな女の子にポリスは声をかけた。


「銃ではなく後ろから鈍器で殴られたあと、犯人も消えた。…魔法のように」
「…ふぅん。…あなたはどうおもう?」


女の子は振り返り、俺に問いかけた。


「…犯人はあの通報人で、武器は川に捨てた。」
「あの人はただの馬鹿。でなきゃ自分でやったなんて思わない。なんで殺人を成功させたのに警察を呼ぶの」


このお嬢ちゃん、結構言うな。
そして次はスティラと呼ばれてたポリスが問いかけた。


「うまく立ち回ったつもりじゃ?」
「あの通報人に会ったでしょ?病的な肥満体。独り暮らしの独身男性特有の臭い息。あの息づかいからして心臓に病気はあるけど治療は受けてなくて自尊心もIQも低くて余命も少ない。そんな男が天才犯罪者?」
「…!」


会っただけで、そんなにわかるのかこのお嬢ちゃんは。とんでもない子だ。しかし本当に遠慮がない。さっき自分で見た目で判断してはいけないと言っていた筈だが。
スティラポリスは呼ばれて車の方へ行ってしまう。


「彼は殺されてもない」
「他殺じゃないのか?」
「もちろんちがうよ」
「何故?」
「かんがえて。…もっと。」


そう言われ、顎に手を当てて考える。


「ヒントはおおきく4つ。彼はスポーツマンで外国旅行からかえって来たばかり。数十メートル離れた野原におとこ二人、車一台。エンジンの調子がわるくて車は動かず。ハイキング中の男は空をみあげる。鳥でもみてたのかな。そうこうしているうちにあることが起こる」
「ハイキング中の男が殺された?」
「ちがう」
「…バックファイヤーする」
「確かに音はたいせつ。全部を隠せるときは隠せる…注目を浴びるときは浴びる」


少し、違うらしい。しかし、手掛かりでもあるらしい。…彼女は、他殺じゃないといった。銃ではなく、鈍器で殴られたあと。…犯人は、いない。


「…お嬢ちゃんは、鳥でも見たのかと言ったが…鳥ではなくブーメラン。バックファイヤーの音に彼は振り向いた。それが運のつきだ。」


振り向き、後頭部にブーメランがあたる。


「通報人が見たとき、彼はもう死んでいた。凶器はすでに川に落ち、下流へと押し流されていった。スポーツマンだった彼が外国旅行から持ち帰ったのは…ブーメランだった。」


そう言い終わると、女の子は笑顔で頷いた。


「俺は赤井秀一。お嬢ちゃん、名前は?」
「私はしゃーろっく・ほーむず。お兄さん、それは本名?」
「嗚呼、本名だ。…お嬢ちゃんは何者なんだ?」
「そうだなぁ…シャーロック・ホームズを超える探偵だよ」


そうはにかんだ女の子は今、どこで、何をしているのだろう。無性に会いたくなった。







神様に願うのではない




mae ato


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