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今日は警察学校のときの同期と飲みに行く日である。ちゃっちゃと仕事を終わらせて待ち合わせした店に行くと2人とももう座っていた。
「久しぶりだな」
「俺とは先週会ったよな!」
「そうだねー、萩原とは久しぶりじゃないね」
お前言えよ、と松田は萩原を軽く睨んだ。萩原はへらりと笑って返していた。似たような職種だが中々会えず、今日は久しぶりに2人揃った顔を見れた。
それからはお酒を頼んで、仕事の話だったり家賃のことを三人で談笑していた。
「てかお前彼氏できた?」
「出来てないよ…合コンあったら誘っておいて…」
「この間誘ったら仕事が〜とか言って断ったじゃん」
「みおうは仕事がコイビトだもんな」
「まっつんが酷い…そうゆう2人はどうなの…あっ待ってもう結果見えてるからやっぱりいい」
どうせくそイケメンな2人のことだ。一週間に1人くらいには告白されているんだろう。
もう未来はみえている…と顔を覆って悔しんでると2人の小さな笑い声が聞こえた。
「なんだよ…勝者の余裕ってか…?片腹いてぇってか…??」
「ははっ、ちげぇよ」
「え、ちがう?」
「いねーよ、俺も萩原も」
「え……?」
「高校の時からな」
「………?…???」
思わず口をつけようとしていたグラスを一旦置いた。驚きすぎて言葉が出てこなかった。脳みそにスペースが広がった。ここはどこ?
「でもこっちまで噂流れてきてたやつは?」
「松田のやつか?」
「あれはただの噂だ、ばか」
「ぅぶッ!」
呆れたようにため息と一緒にスパーと煙草の煙を顔面に吹っかけてきた。目に沁みたふざけんな!
「ヘビースモーカー抹殺したい」
「はいはい」
「俺の噂とかないのー?」
えー?と言いながら考えてみた。あ、あるよ。と言えば、え!?と萩原は目を輝かせてきた。
「今月のナンパ合計で12回」
「なんか期待してたのと違うんだけど!」
「つか、お前も噂たってたぞ」
「え?私?」
そんな噂たつような事をした覚えない。ハッ…この間友達の部下である風見のスーツにフローラルな香りのファブリーズをぶっかけた事がバレてしまった…?それはまずい…降谷に減給される。
「お前がこの間怪しい動きしてたって言ってたやつがいて」
「…ハイ」
「その後お前が髭面の男とデートしてたっていう…本当か?」
「ハイ…………………はい?デート?」
「え、え!?ガチだったの…!?」
萩原はあんぐりと口と目を開けて、さっきまで自分で話してたくせに松田まで目を見開いて煙草の灰をテーブルの上に落としている。火事起きるから灰皿の上に落として。
「ちょっと待って、デート?私、誰とも………あっ、」
いや、待てよ。あれだ、公安のアイツかもしかして。潜入任務で忙しいと思ったらひょっこり帰ってきたアイツと降谷の家に突入しようと一緒に歩ってたのをきっと見られていたのだろう。
「残念ながらデートじゃありませーん。私が残念ながら!ただ一緒に歩いてただけだよ」
「…なんだぁ」
「お前は結婚願望とかあんのか?」
落ちた灰をお絞りで拭き終わった松田が肘をつきながら聞いてきた。萩原もこちらを見てくる。
少ししかなくなったガラスの中身を全部喉へ通した。そりゃああるよ、と答えると2人の目が少し変わった気がした。
「でもこれから知り合って付き合って、結婚だと…何年後になるんだろ…」
「奇遇だな。俺もだ……だから考えておけよ」
「は?」
「お前とは長い付き合いだし、よく知ってるだろお互い」
「……」
「何を、とは言わせねェぜ。ケッコンのことだ」
俺と、と松田がふと微笑んだ。意味がわからずポカンとしていると横から衝撃がした。…萩原だ。
グイッと肩を抱かれた。
「俺も立候補しちゃう。俺のことも考えといてね?」
「……」
…いやまてみおう。きっとこの人達は疲れてらっしゃるのだ。気の迷い、ただの利害の一致とか、きっとそんなんである。
「……もうちょっと良い人選んだら?確かに利害は一致してるけど」
「みおうみおう」
「なにかな萩原くん」
「好きだよ」
「なッ、!」
耳元で囁かれ、一気にカッと顔に熱が集まった。遊ばれてるだけかもしれないが、恥ずかしくて距離を取ろうにも肩に回ったチカラが強く、離れない。
動けず、何処を見ていいかわからず自分の手の甲を見るしかなかった。
「萩原てめェ…」
「なに?先に抜け駆けしたのお前だろ?」
松田が萩原を睨むと対抗しようと腰に手を回した。
「いや、あの、二人とも、」
「…二軒目いく?」
「そうだな。タクシー拾って少し休みに…宿いくか」
「きょ…拒否権、」
「「ない」」
さよなら我が休眠
その後アーッッってなりました。