プリズム | ナノ


昨日の天気予報は雲一つない快晴だと、薄い画面の向こう側で和かに笑うお天気お姉さんが伝えていた。
今朝は楽しみすぎて学校がある日よりも2時間も前に目が覚めてしまった。家の前に止まった乗用車に乗り込みどれだけ楽しみにしていたかを話すと星野君にまるで遠足前の幼稚園児みたいだと突っ込まれた。
どんどん景色が変わり緑に包まれていく車道。車の窓を開けて顔を覗かせると樹々の爽やかな香りが鼻孔をくすぐり、木漏れ日が優しく降り注いだ。
「気持ちいい…」
瞳を閉じても感じる陽の温かさが心地よい。
「もうすぐ着くわよ。」
南の声で瞼を押し上げると眼前に青くきらめく海が広がっていた。



「三人はこの部屋使ってね。」

夜天くん達が案内された部屋バルコニーから海が一望できる白を基調とした広々とした部屋だった。大気君と夜天君が満足そうに白いふわふかのソファに腰掛け、星野君は荷物をベッドへ放り投げてバルコニーに出ていた。3人とも楽しそうで、私と南は顔を見合わせて笑った。

「着替えたら一階のエントランスで待ち合わせね。」

南は3人伝えると、私に目配せして部屋を後にした。
廊下の壁には有名な画家の絵画が飾られ、天井からは大きなシャンデリアが窓から差し込んだ光に反射して煌めいている。圧倒されて、感嘆の溜息を吐く私を見て南は笑っていた。

「ここが碧と私の部屋よ。」
「広っ!」

3人の部屋と同じ白を基調とした清潔感のある広々とした部屋に、クッションや花瓶等の小物に使われたマリンブルーのアクセントがバルコニーから見える海と同調して涼やかな印象を与えている。空気の入れ替えをしてるのかバルコニーは開いていて、涼しい風が部屋に入り込んできている。細やかなレースが施された白いカーテンが風で靡いている。
天涯付きベッドが二つ、壁には海の風景画やドライフラワーが飾られている。本当にホテルに来たような気分だ。
バルコニーに出て白い手すりに手を置いて、目の前に広がる青を眺めた。押しては引く並みの音が心地よく耳を刺激する。

「プライベートビーチだから人は来ないわよ。」
「プライベート…」
「ほら、海行くわよ!早く着替えないと!」
「そうだね!」

私はタイル張りの床が美しい化粧室に行って水着に着替えた。
南とこの前買いに行って悩みに悩んで買った白いビキニ。アンティーク風の大きな鏡の前に立つと、変じゃないか再確認して部屋に戻ると南はもう黒いビキニを着て髪を結っていた。大きなお団子に赤い花が咲いていた。

「可愛い!!」
「でしょ!碧もやってあげる。ここ座って。」

南に促されるままベッドに腰を落とすと、慣れた手付きで私の髪を巻き始めた。いつも髪なんか弄らない私には巻くことさえ新鮮に感じられた。
右に集めた髪をシュシュで緩く結んで、崩れないようにピンで止めると後れ毛を出して全体的にふわふわとした髪型に纏めてくれた。

「うん、可愛い!」
「本当?」
「本当よ。さ、行くわよ!

南と私はパーカーを羽織って三人が待つエントランスへと向かった。