プリズム | ナノ





太陽が真上に昇った正午、午後から三者懇談のため何時もより早く学校を後にした少女は後ろから掛けられた声に振り返った。今からお昼ご飯を食べに行かないか、と仲の良い友人三人に誘われた少女は特に断る理由もなかったので縦に首を動かした。
空調の効いた店内で早々にご飯を食べに終えた四人の女子高生達はジュースを飲みながら学校の話や恋愛の話に花を咲かせていた。あの男子校は微妙だとか、紹介された男子が禿げてたとか。少女はそんな話を聞きながら、最近頻繁に会うミルクティー色の短い髪を持つ彼女の事を思い出していた。
長らく続いた談笑を終え店内を出た少女達は近くの本屋に寄ることにした。
「…あ!」
少女はある人の横顔を見つけて思わず声を上げた。その声に気付いた彼女は少女の姿を確認すると瞳を細めて微笑んだ。
「はるかさん!」
先程少女の頭の中に浮かんでいた天王はるか、その人が目の前にいた。
「やぁ。もう学校は終わったのかな?」
「はい。今日から三者懇談だから午後はカットなんです。」
「そうなんだ。」
「はるかさ、」
「碧〜?」
突然呼ばれた名前に少女は友人が待っていた事を思い出し顔を曇らせた。友人を待たせる訳にもいかずけれどはるかともまだ話していたい。少女は迷った。見兼ねたはるかが困惑する少女の手を取り入口の方で待つ少女の友人の所まで歩き言い放った言葉に手を繋がれたままの少女は自分でもわかるくらいに顔に熱が集まるのを感じた。
「ごめんね。僕がまだ碧と一緒にいたいんだ。碧を借りてもいいかな?」
少女は友人達が顔を真っ赤にして何度も縦に頷き花を飛ばしながら帰って行く姿を何とも言えない心境で見送った。
「はるかさん…すみません。私の我が侭で」
眉をハの字にして申し訳なさそうに言う少女にはるかは小さく笑って頭を撫でた。
「いいさ。それに、僕が碧と一緒にいたいのは本当の事だしな。」
「え、」
「嫌だった?」
困ったように笑う彼女に碧はぶんぶんと首を横に振った。
「嫌じゃないです。わ、私もはるかさんと一緒に、いたい…から…」だんだんと小さくなる声音と共に耳まで真っ赤にして俯く少女にはるかはまた小さく笑った。