プリズム | ナノ





星が旅する理由とは何か。私が小さい頃、まだ生まれてまもない時姉さんが静かに語ってくれた。私達は終わりと始まりの旅を繰り返す。星が生まれ、そして消える場所を目指して銀河の星の軌道を辿るのだ。私達は何度だって繰り返す、輪廻の中にいる。約束された未来を進み約束された来世を送る。
あの日も銀河は至って平和で何時もと何も変わらなかった。私の隣で姉さんが今日は天王星を通り過ぎると教えてくれた。私達とは比べ物にならない程に大きな惑星がこの銀河には点在している。その中でも月はとても美しく輝いているのだと聞いた。じゃあ他の惑星はどうなのだろう。私達は星の軌道から外れる事が出来ない。いや、してはいけない。だから私達以外の全ての事柄において知っていることは誰かから聞いた嘘か真かわからない噂話で実際の姿や形を見たことがないのだ。
「あれが天王星よ 」
姉さんが指を差した方に目をやるとそこにはとても大きな星が存在を主張していた。一度でいいから降りてみたい、そう思った時だった。小さな声が聞こえた気がした。寂しい、と泣いているような声に胸が苦しくなった。あの大きな星で誰かが泣いている。何故かいてもたってもいられなかった私は姉さん達の制止の声を振り切って星の軌道から外れ、た。
一直線に落ちる身体は銀河に散らばる星の欠片に乗って落下した。意識を失った私が次に目を覚ました時一番最初に目に映ったのが厳しい目をしたウラヌスだった。私は彼女により侵入者として監視下に置かれた。
部屋にいる間私はずっと考えていた。あの声は誰のものだろうか、と。こうしている間にもあの子は泣いているのかもしれない。考えれば考えるほどに何故だか気分が悪く感じた。二日程経った朝、私は急激な吐き気を覚えた。ウラヌスに運ばれ暫くして落ち着いた私は驚愕した。星の軌道にいる間私は一度も食事を取らなかった。正確に言えば私達は食事を取らなくても生きていけたのだ。けれど軌道を外れこの地に来た私は食事を取らなければならない身体になっていた。私はもう、以前の私とは違っているのかもしれない。それでも私はあの声を聞いた瞬間から決めていたのだ。あの子の側にいてあげようと。
私がこの星に降りウラヌスと過ごすようになって数日経って気付いた。この城にはウラヌス以外だれもいないことに。ウラヌスはたった一人でこの広い城に住んでいる。
「…あの声はウラヌスだったの?」
寂しい、と泣いているように聞こえた声は、貴女なの?