先生ですか?
朝食を食べ終えた後、私は松陽先生に話しかけられた。
その内容は「一緒に授業をしてみませんか?」とのことだった。
「それって……生徒として、ですか?」
そう言うと松陽先生は目を丸くしてクスクスと笑い出す。
何が可笑しいのかわからない私はただ首を傾げるだけだった。
「先生としてですよ」
どうやら私は勘違いをしていたそうだ。
だから先生は笑っていたのだろう。
「先生ですか!?わ、私勉強なんて出来ないし……」
考えたこともなかった。というか第一、私はあまり子供達とはふれあえないのかと思っていたから。
……でも、もし先生としての立場になったらどうだろう。
まず、文字は確実に読めない。
何たってここは昔の時代。
ミミズみたいに一本に繋がったような字のはずだ。
焦る私に松陽先生はまた笑い出す。
「ふふ、そんな焦らなくていいんですよ。ただ、私の補佐をしてほしいのです。休憩中とか私は子供達とは離れていて面倒とか見れないからその時に子供達を見ていてほしいのです」
「そういうことでしたらおまかせください!」
「じゃ、お願いします」
松陽先生は私に話すことを伝え終えたらこの場を去った。
私も教室へと向かおうとした矢先、誰かが私の服を掴んだ。
誰かと思い下を見たら、小太郎君の姿があった。
「菜緒殿、見ていてほしいんだが…」
ポニーテールを揺らしながらお願いする小太郎君。
授業はまだだが、朝の稽古で道場で剣の練習をするらしい。
その練習姿を見て、とお願いしている小太郎君。
「じゃ、一緒に道場に行こっか」
見てくれるのに嬉しいのか、小太郎君は満開の笑みのまま私の腕を引っ張って道場に向かった。
途中、転びそうになったが小太郎君が喜んでいるのに免じて許してあげた。
道場についてから、私は今壁に寄りかかってみんなの練習姿を見ていた。
小太郎君も稽古していてたまに私に手を振ってくれる。
それは銀時君も晋助君も同様だ。
道場に入ってきた私に気がついて何度も手を振っては稽古の練習を頑張っていた。
何だか母親気分で少し照れくさい。
じっと見ていて大体1時間はたっただろうか。
稽古も終わり、みんな着替えに行った。
だが、みんなとは反対に私の方に走ってくる姿が3つあった。
「菜緒!!ちゃんと見ていたか!?」
「うん、見ていたよ」
「菜緒殿、稽古はちゃんと真面目に出来たぞ!!」
「じゃ、後は授業だけだね。頑張ってね」
「稽古も授業も真面目にやったらちゃんとその飴玉くれよ」
「はは、わかってるよ」
1人1人、色々言ってくるみんなに私は慌てて返事を返す。
「ほら、着替えて部屋に行こう。勉強しなくちゃいけないからね」
「「「はい/おー!」」」
3人は元気いっぱいな返事をし、走って着替えに行った。
3人を着替えに行ったのとすれ違い、松陽先生が私の前に来た。
「じゃ、今日から補佐先生よろしくお願いしますね」
「はい、お願いします!」
(あー…、竹刀振ったからあちィ〜…)
(俺もあっちーわ。でも、もうすぐで飴玉貰えるからこれくらい大丈夫だし)
(はっ、俺だってまだまだいけるし。ってかこれ日常茶番だし)
(なら俺だって…)
(言い合いは止めようねー)
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