不法侵入



100万で買い取った家は中々良い家だった。
家具も真新しい物があり、台所もリビングも全てが綺麗だった。
こんな素晴らしい家を本当に100万円で買い取っていいのだろうか。
……まぁ、安く手に入れたからいいか。

自分の部屋となろうドアノブに手をかけた。が、



「……あれ、開かない」



何度横に引いてもビクともしない。
襖だから鍵とかかける場所はないから開けれるはずだ。
それにさっき一応全部の部屋を回って、この部屋も扉を開けて中を確認した。
だから入れるはずだ。
…のに、何故開かない。



「ちょっ、本当何で開かな「只今先約がいまーす。入らないでくださーい」」



中から人の声がした。
少し高めの声。
私はその声を聞いて顔を引きつらせた。



「あの、何でいるんですか」


「俺ん家だから」


「ふざけないでください。沖田さんでしょ?ここ私の家です。出てってください。っていうか不法侵入です。訴えますよ!?」


「俺警察だから大丈夫でさァ」


「あぁ、そっか……って、余計駄目です。何で警察が不法侵入してるんですか。可笑しいでしょ」


「お前もう家にとっとと帰って寝ろ」


「その言葉そのままそっくり釘バットで打ち返します」



開かない扉の前でそう言うと、急に扉が開いた。
吃驚して固まったら沖田さんが扉から顔を覗かせた。
私はじっと沖田さんを見る。
すると沖田さんは私の顔を見ては、はっと鼻で笑った。



「ざまぁ」


「……」



あぁ、腹立つ。
何だこいつ、まじ腹立つ。
本当嫌。こういうガキみたいな奴まじ無理。

眉間に皺を一気に寄せ、沖田さんを睨んだ。
が、沖田さんにそうしても無意味な訳で。
沖田さんは「おー、怖っ」と怖くもなさそうに言いながら「ま、入りなせぇ」とか自分家みたいに言った。
またもや怒りゲージがMAXまでに到達しそうな程溜まったが、その怒りを何とか抑えながらも部屋の中に入る。
バックを部屋の隅に寄せ、座布団の上に座り、沖田さんと向き合う。
ついでに言うと沖田さんは寝転がっている。
かなりうざい。



「…何回も言いますが、何で沖田さんがここに居るんですか」


「お前のこと気に入ったから」


「……」


「嘘に決まってまさぁ、ばーか。お前みたいなちびガキ、相手に何かしやせん」


「知ってます。ただ引いていただけです。証拠に顔かなり引きつってんですけど。ってかちび言うなガキが」


「あ゛ぁ?」


「あー、今日は良い天気だなぁ」



刀を出すのは反則だと思う。
というかこの人は本当何しに来たのだろう。
私今すぐにでも寝てしまいたいんですけど。

言葉が続かず無機質な音が部屋に響く。
沖田さんは寝っ転がってただゴロゴロしてるし、私はただ座っているだけ。
気まずい。かなり気まずい。
早く帰ってくれないだろうか。
そう視線で訴えるが、シカトを決め込んでいるのか、それとも本当に気づいてないのかは知らないが、沖田さんは帰る気はないようだ。
私は仕方がなくはぁ、と溜息をつき、口を開いた。



「沖田さん邪魔です。人様の家に不法侵入した上に居候だなんて警察沙汰ですよ」


「居候なんてしやせんよ。ただ寝てるだけでさァ」


「女子の家に不法侵入は変質者同様に扱って結構ですよね?」


「女子ってどこにいるんでィ」


「死ね」



わざとらしく顔をキョロキョロさせて探す姿は腹立たし過ぎる。
あれ、私さっきから怒ってばっかりじゃないか。
まぁ、沖田さんが悪いのだ、仕方がない。

本日何度目か、再び顔が歪んだ。
沖田さんと居ると疲れる。
面倒、静かにさせてくれ。
その思いが顔にかなり出ていたのか、体を起こして座っていた沖田さんが溜息をついた。



「仕方ねぇ。今回だけ帰ってやりまさァ」


「上から目線うぜー」


「じゃ、そこの棚ん中に菓子入ってっから勝手に食うんじゃねーぞ」


「は?」


「じゃ、またな」


「いや、意味わからな、」


バタンッ



沖田さんが出てった扉を暫く見つめる。
意味不明すぎて混乱中。
え、お菓子入ってる?何で?
引っ越し見上げ?
いや、でも食うなって言ってたし…。

取り敢えず扉を開けて見ましょう。




(うわっ、沢山お菓子入ってるし…。あ、メモみっけ)
“俺のおやつ”
(………………死ね)




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