▽不法侵入 100万で買い取った家は中々良い家だった。 家具も真新しい物があり、台所もリビングも全てが綺麗だった。 こんな素晴らしい家を本当に100万円で買い取っていいのだろうか。 ……まぁ、安く手に入れたからいいか。 自分の部屋となろうドアノブに手をかけた。が、 「……あれ、開かない」 何度横に引いてもビクともしない。 襖だから鍵とかかける場所はないから開けれるはずだ。 それにさっき一応全部の部屋を回って、この部屋も扉を開けて中を確認した。 だから入れるはずだ。 …のに、何故開かない。 「ちょっ、本当何で開かな「只今先約がいまーす。入らないでくださーい」」 中から人の声がした。 少し高めの声。 私はその声を聞いて顔を引きつらせた。 「あの、何でいるんですか」 「俺ん家だから」 「ふざけないでください。沖田さんでしょ?ここ私の家です。出てってください。っていうか不法侵入です。訴えますよ!?」 「俺警察だから大丈夫でさァ」 「あぁ、そっか……って、余計駄目です。何で警察が不法侵入してるんですか。可笑しいでしょ」 「お前もう家にとっとと帰って寝ろ」 「その言葉そのままそっくり釘バットで打ち返します」 開かない扉の前でそう言うと、急に扉が開いた。 吃驚して固まったら沖田さんが扉から顔を覗かせた。 私はじっと沖田さんを見る。 すると沖田さんは私の顔を見ては、はっと鼻で笑った。 「ざまぁ」 「……」 あぁ、腹立つ。 何だこいつ、まじ腹立つ。 本当嫌。こういうガキみたいな奴まじ無理。 眉間に皺を一気に寄せ、沖田さんを睨んだ。 が、沖田さんにそうしても無意味な訳で。 沖田さんは「おー、怖っ」と怖くもなさそうに言いながら「ま、入りなせぇ」とか自分家みたいに言った。 またもや怒りゲージがMAXまでに到達しそうな程溜まったが、その怒りを何とか抑えながらも部屋の中に入る。 バックを部屋の隅に寄せ、座布団の上に座り、沖田さんと向き合う。 ついでに言うと沖田さんは寝転がっている。 かなりうざい。 「…何回も言いますが、何で沖田さんがここに居るんですか」 「お前のこと気に入ったから」 「……」 「嘘に決まってまさぁ、ばーか。お前みたいなちびガキ、相手に何かしやせん」 「知ってます。ただ引いていただけです。証拠に顔かなり引きつってんですけど。ってかちび言うなガキが」 「あ゛ぁ?」 「あー、今日は良い天気だなぁ」 刀を出すのは反則だと思う。 というかこの人は本当何しに来たのだろう。 私今すぐにでも寝てしまいたいんですけど。 言葉が続かず無機質な音が部屋に響く。 沖田さんは寝っ転がってただゴロゴロしてるし、私はただ座っているだけ。 気まずい。かなり気まずい。 早く帰ってくれないだろうか。 そう視線で訴えるが、シカトを決め込んでいるのか、それとも本当に気づいてないのかは知らないが、沖田さんは帰る気はないようだ。 私は仕方がなくはぁ、と溜息をつき、口を開いた。 「沖田さん邪魔です。人様の家に不法侵入した上に居候だなんて警察沙汰ですよ」 「居候なんてしやせんよ。ただ寝てるだけでさァ」 「女子の家に不法侵入は変質者同様に扱って結構ですよね?」 「女子ってどこにいるんでィ」 「死ね」 わざとらしく顔をキョロキョロさせて探す姿は腹立たし過ぎる。 あれ、私さっきから怒ってばっかりじゃないか。 まぁ、沖田さんが悪いのだ、仕方がない。 本日何度目か、再び顔が歪んだ。 沖田さんと居ると疲れる。 面倒、静かにさせてくれ。 その思いが顔にかなり出ていたのか、体を起こして座っていた沖田さんが溜息をついた。 「仕方ねぇ。今回だけ帰ってやりまさァ」 「上から目線うぜー」 「じゃ、そこの棚ん中に菓子入ってっから勝手に食うんじゃねーぞ」 「は?」 「じゃ、またな」 「いや、意味わからな、」 バタンッ 沖田さんが出てった扉を暫く見つめる。 意味不明すぎて混乱中。 え、お菓子入ってる?何で? 引っ越し見上げ? いや、でも食うなって言ってたし…。 取り敢えず扉を開けて見ましょう。 (うわっ、沢山お菓子入ってるし…。あ、メモみっけ) “俺のおやつ” (………………死ね) <<|back| |