刀を交えて花一匁 丙 | ナノ
 07.そう、君の追憶でありたい(1/3)

坂田銀時は激怒した。必ず、かの顔面SSR性格ドS爽やか陽キャ系えっちなお姉さん♂をシバかねばならぬと決意した。
銀時には大人がわからぬ。銀時は、ジャンフ〇の民である。パロディと銘打って孫悟○(パイセン)の服をパクり、映画コラボ特典で生意気な鬼滅○刃(コウハイ)のケツを叩いてやり、魑魅魍魎(忍者と死神とハンター)が跋扈する大海原(グランドライン)の荒波を玉と棒1つで乗り越えてきた。けれども股にぶら下がる玉と棒は、人一倍にビンカンであった。

きょう未明銀時は万事屋を出発し、家賃の催促(ババア)を躱し、パのつく所(チンコ)を経由し、隣のヘドロさんちにやって来た。
銀時には父も、母も無い。恋人も無い。けれど世界にたった二人、家族のような人がいた。一人は行方知れずとなり、一人はこの手で葬った。
銀時には大人がわからぬ。銀時は、我慢と禁欲を知らぬ。あと恥も知らぬ。だから、意味深な台詞を残して消息を絶ったくせひょっこり帰ってきて説明責任も果たさず人をおちょくって帰った愉快犯アンチキショーを潔く許す道理も、また無いのである。






ピンポーン

「はーい」
「あ、どうもご無沙汰してます坂田ですけどあのアポも無しにすみません屁怒絽さ……さ、様!」
「坂田さん! 珍しいですねどうしたんです今日は? あ、上がっていきます?」
「いえいえいえいえお構いなく!! お宅の董榎くんいますか!?」
「ちょっと待ってくださいね」

──董榎さーん!

「……ごめんなさい今出掛けてるみたいで……昼までは店番してたんですけど」
「あ、大丈夫ですまた来ますありがとうございます!」



ピンポーン

「はーい! あ、坂田さんじゃないですか。どうしたんですまたこんな夜遅くに」
「あっ、夜分すみません、あの董榎くんいますか?」
「あーすみません、さっき出て行きました……あの、よければ伝言があれば僕から伝えましょうか?」
「あっいいですいいです、そんな大した用じゃないんで! また伺いますね」



ピンポーン

「はーい!」
「夕飯時にすみません、董榎くんご在宅でしょうか!」
「ごめんなさい、急にバイトに呼び出されちゃったみたいです。……あのヘルプ先は分からないんですけど心当たりはあるので教えましょうか?」
「あーいいですいいです緊急じゃないので! また伺います!」



ピンポーン

「はーい」
「早朝にすみません、あの」
「あっ坂田さん、ごめんなさい董榎さんはたった今入れ違いで……」





「………居ねェェェェ!!」

アイツ全っっっ然居ねェェ! どうなってんだ!? いつ行っても行ってもバイト行ってんだけどお前のスケジュール密ですかァァ! 自粛しろよ不要不急の外出はお控えしろください!

あっ、まさかあなたもしかして……ウワサの万事屋さん? 万事屋董榎ちゃん? だって万事屋銀ちゃんより万事屋じゃん? つか最近ウチに依頼入んなかったのアイツのせいじゃね!?

……アッ、それはいつもだ「くォォら万事屋ァ!! 大工が屋根壊してんじゃねぇッ!!」

「危っっぶねオイコラジジイ! どこに屋根の上でトンカチ投げる大工がいんだァ!」
「トンカチ屋根に叩きつけるバイトに言われたくねぇわ!! ギャアギャア喚いてねぇでさっさと拾ってこいアホンダラッ!」
「いッてぇな、分かった行くよ、行けばいいんだろ!」

尻を蹴られながらのそりと身を上げる。あれれーおかしいな、なんでこんな会えねぇんだ。あれからもう結構経ちましたね。最後の更新去年の2月だもん。オイオイそらァまずいって! あのなァ言っとくけど年単位の休載が許されるのは世界広しといえど病気療養とSEKIR○と冨樫だけだから。お前がなかなか来ないから銀さん激怒しちゃったよ? そろそろ帰ってこないと仏のセリヌンティウスもマジで怒っちゃうよ?

「オレんとこは万事屋になんべんも依頼してんのによォ、オマエ今日入ったばっかの新入りより動けないたァどういう了見だ、エエ? 壊した瓦は給料からしょっ引いとくからな!」

はーん? するとアレか、時空か、時空が歪んでんのか、君の名はなのか。実はアイツだけ過去に生きてるってことだろ、ってのはまあ流石に冗談で……いやあるな? あの耄碌難聴ラノベ主人公ジジイやけに肌ツルツルだったしタイムスリップ説あるなコレ。

……いや待て、考えなかった可能性がまだひとつあった。俺が考えたくなかった……避けていた可能性。いやいやまさか、いや、まさかとは思うが、

「おやっさーん! 終わった! そっち手伝っていい!?」
「オウ! そんまま瓦持ってきちゃくれねェか、こっちのアンチクショウがヘマしちまってよ!」
「アーイ!」
「ウンウン、テメェはよく働いてくれンなあ……ちったあ色付けてやんねえとこりゃバチが当たるぜ」
「おやっさんバイトに求めるハードル低すぎんだわ。貰えるモンは貰うけどさ」

──まさか俺……避けられてるのか……?

「万事屋紹介しとくぜ。こいつ董榎つってな、飲み込みはそんなに良かねェがまあまあ声張れるし割と真面目だし気が利く期待の新入りだ」
「うはっ、それ褒めてねぇよ。どうもー万事屋さんお噂は兼ね兼ね…………」


「…………」

「…………」


ブッフォァ!!!!!!!!!!

見つめ合いの末、董榎は盛大に血を吹き出した。

「──いやなんで!!?」
「…………不意打ちすぎて、笑う時に舌噛んだ……」
「は!? バカなの? テメェの笑いのツボは水溜まりか??」
「……水溜まり」
「えっいやそんな落ち込……オイなんでちょっと喜んでんだ」
「ふふ、そうか……松陽にはペトリ皿って言われたけど、水溜まりか……」
「ペトリ皿」

俺知ってる、それ、それ……微生物とかタマネギの根とか入れて培養するやつじゃん……細胞分裂の実験とかで使うやつじゃん……めっちゃ浅くてちっちゃいやつ………あとペトリ皿も水溜まりもそんな変わんねーと思う。

「なんだてめェら知り合いかよ?」
「あー、そうそう。元教え子」
「はァ? 教え子?」
「履歴書書いただろ?」

董榎が苦笑するが俺には眉を顰める親父の気持ちがよーーーく分かる。つやつやの黒髪と若盛りの肉体は到底老骨と呼ぶに足りず、外見だけなら俺や桂と同い年にも見えなくもない。高杉クンはアレだ、身長が。

「俺がヘマしたから銀時とは十年くらい音信不通でさぁ、こないだやっと感動の再会したの」
「へぇー? ドラマみてェな話だな?」
「あ、疑ってる? ホントだってー、俺感極まっちゃってちょっと泣きそうになったもん」

やめろやめろそれはネタにしちゃいけない類の話題。情緒死んでんじゃねーのかこのファッキンサイコパスが。いい年した男がもんとか言うな違和感なさすぎて怖ェんだわ。

「お前さんそんな弟子好きならなんで連絡してやんなかったんだよ」
「あはは、ちょっと地下牢閉じ込められてて無理だった」
「アッハッハ! なァに言ってんだお前!」

だからそれ屋根の上でする話じゃないって!! 俺がつっこめねェだろうが!! 当事者を置き去りにするな!! 先生あとでゆっくり話聞かせてもらいますからね!!

「おっといけねェ、さあ戻った戻った! 無駄口叩いてねェでさっさと給料分の仕事しな!」
「えーもう少し感傷に浸らせてくれよおやっさん」
「知らねーなァどっかのバカが直すはずの屋根粉々にぶっ壊しちまったから」
「は〜? 何してんだ銀時」

お前のォ!!! せいだよォ!!!!



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