いちご


「ブンちゃんって若松さんのこと好きなん?」




昼休み、呆けた仁王から生気のない声が漏れて俺は間抜けに「はぁ?」と聞き返した。若松ってのは俺らのクラスメイトでかなりのグルメだから仲良くなった女だ。よく食って運動しない癖にデブッてないから時々不思議だが。

「いや、ただのダチだぜ?」
俺も、そして恐らく若松自身も恋愛感情を持ってはいないだろう。だから気さくに飲み食い出来るというか。

「じゃが、この前楽しそうに商店街を歩いてるのを見たナリ」
俺の目はごまかせんよ、なんて言うもんだから。

「何? お前若松のこと好きなの?」
なんて、流石にそれはないか。悪い悪いと仁王を見たら。







耳の先まで真っ赤になってるこいつがいた。

「ま、マジかよ……」

言っておくが仁王はこんなキャラじゃねぇ。何人もの美女に囲まれて余裕な表情を浮かべられる遊び魔だ。それが、これ……?







「別に若松、不細工じゃねえけど可愛いげねぇぜ? もりもり食うし」
「苺ちゃんの悪口は許さんぜよ!」

苺ちゃんって何だよ苺ちゃんって。どうやらこいつの脳内では確立された若松との世界が既にあるようだ。実際はろくに話したこともないくせに。
面白いけど、なんか面倒そうだな。あんま関わりたくねぇ。






「若松なら、食いモンでもやりゃあ一発ヤラセてくれんじゃねえの?」
「ブンちゃん………………」

ヤベエ、こいつあんまり怒らせると幸村君や真田とはまた違った怖さがあるんだよなぁ……!





「悪い、真面目にやるから。仕方ねえなあ、協力してやるよぃ!」
「恩に着るぜよ!」




(ちなみに何で一緒におったん?)
(しつこいな……ビッグかき氷食いに行ってたんだよ)
(やっぱりラブラブなんじゃ! うぅ……)
(うっぜー)


20110910
少し続く気がします。

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