馬鹿なオンナ、のお話
山下瑞稀【やましたみずき】side
今日も飽きずにあたしは口に出す。
「愛して、る…って、言って…あっ、」
「瑞稀…愛してる、ぅぁ、」
言葉が欲しいわけじゃないくせに。
本当は、"誰か"さんから欲しい言葉なくせに。
名前も知らない貴方から、欲しいんじゃないの。
分かってる、そんなこと。
馬鹿げてるってことも分かってるよ。
だけど。
「も…っ、む、り…ぃ」
あたしは、君を忘れるために必死で。
君があの子に恋をしていたことなんて分かり切ってたくせに、諦められないんだ。
何度体を重ねたって。
何度口づけを交わしたって。
君とだったら、もっと幸せな気分になれるよね。
君とだったら、もっと口づけを交わしたくなるだろうな。
叶わぬ"君と"を想像して、苦しくなって、だけどやめられなくて。
「痛かったか…?」
「ううん…大丈夫、よ。」
本当に…馬鹿な話、よね。
<君を想って泣くことから早く卒業したいよ>
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