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だいきらい、だよ

なんなの。なんなの。なんなの。

なんでそんなにないてるの。

どうしてそんなに悲しそうな目をしてるの。



「あず、」

「っ、」

「ごめ、…っ」



触らないで。お願いだから。

これ以上惨めな気持ちにしないでよ。



「だいきらい、だよ。」

「雷【らい】…っ」



大嫌いと紡ぐ声が、いつもよりも揺れていることを知っているから。

だから、余計に惨めな気持ちになる。


泣くくらいなら、言わなきゃいいのに。

嘘だよって笑ってくれたら、それであたしは怒って笑って、元に戻れるのに。



「ごめんな…っ、」



どうして何度も謝るの?

どうして傷ついたような顔をするの?

ねえ…

別れ話をしてるのは雷、あなたの方でしょ?



「…あた、しは…」


ーーー大好き、だよ



ハッとした表情が、なぜだか凄く儚くて。苦しくなった。



「…梓、」

「だから。」



困らせてるのは自分だ。
雷を傷つけているのはあたしだ。
それなら…。

取れる方法なんて一つしかないのに。



「…っ、」



どうしても紡げない"別れよう"
頷く、なんてことすら出来ない自分。

どれだけ雷を好きなのか。
やっと、気付いた気がした。



「…あず、ごめんな。」



ふわりとあたしを囲うのは、優しい優しい腕。


ーーー大好き、だった











それから一ヶ月後。
あたしの家に電話がかかって来た。


「梓、ちゃん…?
本堂、だけど。」


本堂、というのは、雷の名字。
電話の相手は、雷のお母さんだった。


「おばさん、あたし、雷と別れたの。」

「知ってるわ。
…あのね、落ち着いて、聞いて欲しいの。」


優しい優しい雷と同じ声で、残酷な言葉を紡がれた。


ーー雷はね、星になった、の。


「ほ、し…?」


ーー「死んだらさ、星になるんだって。
だからさ、俺…死んだら、あずを見守る星になりてえな」


ふわりと思い出された記憶の中の雷は、消えてしまいそうなほどか弱く微笑んでいて。

星になる、という意味が…グサリ、と胸に刺さった。


「ら、い…っ、」


この世にもう既に彼はいない。
あの暖かい腕に抱きしめられることはもうない。


「な、んで…っ、」


電話の向こう。おばさんが泣き崩れる声が聞こえて、込み上げる何かを抑えることが出来ずに、ただあたしは…


「うぁ…ぁあああああ…っ、」


涙を、流した。









End



ーーーーーーーーーーー
雷が別れを切り出したわけは、自分が死ぬとわかっていたから。
辛そうな顔をしていたのは、好きだからこそ。
…切ないお話を書きたかったんです。
でも、なんか書いてたら悲しくなった。



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