小説 | ナノ




結局、ヘタレな俺。

たんに、怖かった。







「はーるまっ!!」


笑顔で俺に手を振る、彼女の舞香【まいか】に笑って手を振り返す。

舞香は、地毛が茶髪で、少し癖っ毛らしく、くるくるとしてる。

そして、透き通るような白い肌。

まつ毛もふさふさで、目がぱっちりしてて。

顔が小さくて、身長も149cmしかない。

そんな高校一年生ながら、学校で多分一番モテる舞香。

それに比べて、モテない、といえば嘘になるけれど、舞香ほどではないし。

たまに、劣等感なんてものを感じてしまう時もある日々。

だけど、舞香のことが本当に好きだし、離れたくない。離したくない。

だから、そばにいるのだけれど…。


「ねーねーっ!!」

「君、可愛いね」


ナンパされたりするのが当たり前。


「可愛いから割引しちゃおっかなー?」

「きゃーっ!!
ありがとうございます!!」


可愛い笑顔をみんなに見せたりするのも当たり前。


さすがに、焦る、時もあるんですよ。


舞香は、無防備だし。

俺だって、オトコ、なわけで。


「今日は、晴真のお家デートっ!!」


そんな言葉を笑顔で言う君が、ときたま悪魔に見えてしまう。


付き合い始めて、早1年。

キス、まではしたことがあるけど、それ以上はない。

ていうか…したい、けど、出来ないっていうか、拒まれたら死ねるっていうか…。

ヘタレ男子、なんですよね、俺。


「とーちゃっく!!」


ニコニコしながら、俺の家の玄関の前に立つ舞香に俺の家の鍵を渡す。

そのまま、鍵を回して


「お邪魔しまーすっ!!」


靴を揃えて、中に入る。

俺もその後に続いて入る。

そんな俺を見ながら、ニコニコとしてる舞香の頭をふわっと撫でて、


「俺の部屋行く?」

「うんっ!!」


悪魔な発言。

自分が拷問になるのに、わかっててやる俺。


…あれ?Mなのか、俺。

いや、違う違う。

このまま、玄関っていうのもないし、リビングは散らかってるし…

仕方ない、んだよな、うん。


「きのうのね、ドラマでね!!」

「うん。」

「晴真に似てる人がいて、晴真にそう言われたら絶対キュンってくるセリフ言ってたの!!」


天使のような顔で紡がれて行く言葉たちに、笑顔で頷く。

俺の部屋の中。

俺のあぐらをかいた足の上に座りながら、終始ニコニコしてる舞香をぎゅっと抱きしめる。


…いまさら、なんだ。

舞香の天然なところとか、無意識にそういう無防備なところ、とか。

気にしてたら、きっと俺の心臓は1日持たない。


「なんて言ってたの?
その俳優さん。」

「あのねっ!!


お前のためなんかじゃねえよ。
ただ、さ…一々、やかせんな、バカ。


って、抱きしめながら、顔赤くしてた!!」


…待って。

それ、俺出来ない。


「え、と…」


ツンデレ?

舞香ってツンデレ好きなの?


やってやって、ときらきらと目を輝かせる舞香に、できない、なんて言えなくて


「べ…つに、お、前のため、なんかじゃ…ねえ、よ。」


あー、くっそ、恥ずかしい!!

死にそう!!


「たださ…あんま妬かせんな、舞香のバーカ。」


…こっちは、本音、だったり。


顔を見られたくなくて、ギューっと舞香を抱き締めると、くるりとタイミングよく振り返った。


「あ、赤い。」


りんごのように赤く染まった頬の舞香が、俺の頬をみてそう言うから


「舞香だって、赤い、っつーの。」


仕返しにそう言って、舞香の頬にキスをした。


「口、がいい。」


ほんの少し、口を尖らせて、そんなことをいう舞香に、心臓は高まり続ける。


…やばい。

やばいってやばい。


そんなことを露知らず、上目遣いでそう頼み込んでくる舞香にキュンキュンしながら、唇を重ねる。


「ン…」


甘い声が小さく漏れて、あぁやばい、なんてことを思いながら角度を変える。

食べるようにキスをして、唇を離すと、


「…やっぱり、晴真はいつものほうがいい。」


恥ずかしそうにそう言った。


「ごめん、なんか…」


期待に添えられなくて、そう呟く。


「やっ!!そうじゃなくて!!
すっごくかっこよかったし、昨日の人なんかよりもキュンキュンした、けど.!!!」

「けど?」


モジモジとしながら、舞香が聞こえるか聞こえないかくらいの声の大きさで


「…これ以上カッコ良くなったら、あたしの心臓持たないもん…」


好きすぎる、なんて続けていった君に、俺はきっと押し倒したくても、押し倒せません。






…俺の方が、好きすぎる、よ。







<俺の力でなら、きっと簡単に押し倒せてしまうけど、それが出来ないのは、君を好きすぎて、拒否されてしまうのが怖いから>




"確かに恋だった"様の"無防備な君に恋をする5題"より"誰にでもスキだらけ"からお借りしました。





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