02
「暑い。暑すぎる」
体を照りつける太陽が肌を突き刺す。
というか、暫く歩いていて気付いたけど、ここは何かが可笑しい。
まず太陽が変だ。普通、太陽があんなに笑うか? 顔がついている時点で可笑しいのだけど。
あと、空気が変だ。なんていうか、外国だからなのかは知らないけど、日本とは違う空気をしている。体も何処と無く重さが違う。住んでいた場所と重力が違うものなのだろうけど、明らかに変だ。
重力の違いなんて人間が気付けるものじゃない。自分はマフィアだとしても一応、一般人だから。
それでも明らかに感じるこの重力の違いは、なんなのだろうか。
「あ゛ー……ヤメだ。脳みそ腐る」
こんなクソ暑い中脳みそをフル活用したって逆にヒートしてぶっ壊れるだけだし。あの街についてからゆっくり考えよう。
今は歩く事だけを考えていればいい。街もすぐそこまで見えてきている。
どうやら蜃気楼だったなんていう笑えないオチでは無かったようだし。街についたらまず水でも貰うかな。
金は無いが、まぁいいや。水くらい貰えるだろう。
そういえば、金が無ければ日本に帰れないよな。働いて金を溜めるところから始めないと。
あぁ、疲れてきた。溜息が自然と零れ、もっと疲労感を感じたときに、何かの音が前から聞こえた。何かと耳と目を凝らすと誰かがあの街から出てきたようだ。
何やらスケボーのようなものに乗った、少年らしき人が声を上げながら横を凄いスピードで突っ走っていた。
「……なんだアレ」
一瞬だけだったが、スケボーが浮いていた。スケボーって車輪で動くものじゃないのか?
「変だな」
段々小さくなっていく少年の背を少しだけ見てから、目の前に聳え(そびえ)立つ街を見た。
これは、街と言っていいものなのだろうか。
まぁ、街と言ってもそれぞれだ。もしかしたら街じゃないかもしれないが、水が貰えばそれでいい!
早速中に入ろうと、少年が出てきた場所かに近づく。
体が街に近づいた瞬間、何かピリッと電気が走るような感覚が体中を走って、ばっと反射的に体を後ろへ後退させた。
じっと街を見ても、特に罠があるようには思えない。
何か変だ。
手をゆっくりと前に差し出すと、やはり電気が走るような衝撃が体を巡って手が弾かれる。
「なんなんだ?」
まるで、何かがもこの街を覆っているようだ。
少しだけ後ろへ下がって街全体を見る。
「……?」
薄っすらとだが、何か膜のようなものが街を包み込んでいた。きっと、これの所為だろう。自分が入れないのは。
しかし、これは何なのだろう。死ぬ気の炎とは違う。何か、もっと違う何か。
これは盾のようなものか? 侵入者を拒む為の、防護壁? そうだとしても何故この街にはこんなものが必要なんだ。
何か大事なものでも、この街にはあるのだろうか。それならこの防護壁のようなものは突破しない方がいいのだろうけど。
「脱水症状になるってーの!」
このまま脱水症状で倒れても面倒なだけだ。
今は非常事態だし、どうにかなる。うん。この防護壁をぶっ壊さない様に中に入るしかないな。
丁度、何故かは知らないけどポケットの中に匣とボンゴレリングが入っていたし。
この匣の特殊能力なら防護壁を破壊しなくても大丈夫だ。
指にはめたボンゴレリングから黒い炎が出る。よし、ちゃんと出た。
匣に炎を注入させる。
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