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05



「次の方」

「はい」

緊張し、少し上ずった声で返事をしながら緑色の古びた扉はギギギと音を立てて開ける。
私はごくりと唾を飲み込み、面接官の前の椅子に座った。
面接官は履歴書を見ながら「なるほど」と呟く。

「ハルカさんであってますよね?」

「はい!」

「ではここを志望した理由は?」

「私は料理学校に通っていて、少しでも経験したいと思ったからです」


私の話を一通り聞き終えた面接官は「若いのに熱心ですね」とニッコリ笑った。
面接官のもう結構ですよ、と言う言葉にもしかしたら落ちたかもしれないと急に身体が身震いする。
震えるオモリがついたように重くなった足を運びながら、店の外に出た。

カフェはたくさんの客、まぁ主に女性客で賑わっている。
ここのお店オシャレだもんな。
……落ちたら終わりだぁ!
私は頭を抱えながら家に帰った。


「たっだいまー」

「ん、おかえり。手応えはあったか?」

ジイさんのその言葉に私は横に首を振った。
私の暗い顔を見て何となく察したのか、ジイさんは私の好きなキンキンに冷えたコーラを私の前に置いた。
……冷たいなぁ。
私は玄関に響くような声で思いっきり、わざとらしくはぁと溜め息を吐いた。

ジイさんの困り顔は気にしない。
気にしないからな!
私はケータイのアプリゲームで遊びながらこの気持ちを消した。


その日の夜。
私のケータイに一通のメールが届いた。
……あのカフェからだ、合格してますように!
そう祈りながらメールを開いた。

メールに書かれていたのは「この度は弊社面接をお受けいただき、誠にありがとうございました。選考の結果、採用が決定いたしましたのでご連絡致します。明後日の午後6時からのシフトです」
私は思わず飛び上がった。
ケータイを片手にドタドタと階段を駆け下りる。

「ジイさん! 合格! 合格したぁ!!」

「マジか! やったぞー!」

私たちはらしくもなく、二人でハイタッチをした。
その後正気に戻り私は恥ずかしくなったが、ジイさんは思えばいつもこんな感じだったなと思い出したのである。
でも合格出来た! 明後日から頑張ろう。
ビーデルたちにはドッキリとして言いたいので、明日直接会って言う事にする。

その夜は私はずっとご機嫌だった。
ご飯を食べている時も大好物の唐揚げをジイさんに奪われていることも気づかなかったくらいだ。
お風呂の間も鼻歌を歌って凄くご機嫌だったらしい。※ジイさん談。

早く明日にならないかな、なんて子供っぽい事を思いながら私は眠りについた。



「おはよ!」

「おはようございます、なんか嬉しそうですね」

珍しく早くいた悟飯に挨拶されると、嬉しそうと言われたので私はニヤニヤしながら「分かっちゃう?」と笑いながら言った。
私は自分の椅子に座ると、悟飯は自分の椅子をクルリと回してこっちを向く。
どうやら聞いてくれるようだ。
なら言っても良いか! と軽い気持ちでバイトに合格した事を話した。

「本当ですか! 良かったですね」

そう言って悟飯は喜んでくれた。
良い子だなー、チチさん息子さんは良い子に育ってますよ!
あ、そうだ今度ジイさんに頼んで天下一武闘会観に行こう。
もちろん出場はしないぞ!

まず予選落ちだからね、うん。
私はあんなトンデモな奴らとは違う一般人だからな。
ビーデルさんだってもともと強いし、私は生まれてこのかたトレーニングと言うものをした事がないんだよ!




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