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04
「おかえり」
「ただいまー、疲れた」
ドサリとバックを床に置く。
やっと授業が終わり、学校から帰ってきたところだ。
あれからの授業は習ったものばかりでつまらないことこの上なかった。
暑さに耐えられず吹き出る汗を襟で拭いながら今日のことを振り返る。
まずは友達ができたことだ。
イレーザとシャプナー、ビーデルと悟飯の四人と友達になる事が出来た。
……とは言ったものの実質的に私は二十歳だ。
埋められない年の差があるからな。
そう思い私ははぁと溜め息をついた。
それを見兼ねたのか後ろからジイさんは冷たい水の入ったコップを肩に押し付けた。
「冷たっ!?」
「暗いぞハルカ」
「うっせージジイ」
「あれ反抗期!?」
反抗期はとっくに過ぎてる年齢だかな、と冷静に心の中でジイさんに突っ込みを入れた。
というかこのジイさんもブウに殺られるんだよな。
それはそれで嫌だ、つか私も死にたくないし。
悟空たちがドラゴンボールで生き返らせてくれるけど一回死んだ事に変わりはない。
私はジイさんから渡された冷たい水を一気飲みし、「ぷはぁー」と言った。
ジイさんからは「オッサン見たいだぞ」という言葉を貰ったので私は心優しく「ジジイが言うな」とニッコリ笑顔で言ってあげた。
「……ちょっと話良いか?」
「え、何?」
何故か急に真面目な顔をするジイさん。
その真剣さに私もごくりと唾を飲む。
「食費がな、危ないんだ!」
「え、えぇー私そんなに食べてないつもりだけど……」
「お前は小食だから助かった、だが問題はワシだ。ワシは大食い選手権で優勝した事があるからな!」
その言葉を聞いて「自慢するな」とジイさんを小突く。
そうか、金銭問題があったな。
……止むを得ないか。
つか私じゃなくて原因はジイさんじゃないか!
「はぁ。ジイさん、私なんかバイトするよ」
「! 本当か!? そう思って、ほれ求人誌だ」
「用意が良いなぁ……」
呆れた顔をしながらジイさんから求人誌を受け取る。
一応私は高校生と言って通っているが実年齢は20歳だし良いだろう。
んーなんのバイトしようかなぁ。
私はパラパラとページをめくり、ジイさんに「んじゃこれ借りるね」と言ってから二階に上がり自分の部屋に戻った。
畳の上にうつ伏せになって求人誌を1ページから見ていく。
ちなみに此処はもともとは物置きだったがジイさんと私で手分けをして掃除をして此処が私の部屋となった。
広さは5畳ほどの大きさだが問題なく使えている。
もともと寝るところは布団だし、畳めるのでペースを取らない。
それにこの二階のここはちょうど日当たりが抜群なのだ。
今は夏だから暑いが、秋や冬は心地いいだろうと少し余裕があった。
「うーんカフェかぁ……時給850円、うーん普通」
いいのがなかなか見つからない。
求人誌と睨めっこをする。
というかこのカフェのアルバイトは裏方じゃなくてウェイターじゃないか。
危ない危ない、ウェイターなんて客とかかわる仕事は嫌だね。
「見つからない!」
求人誌と悪戦苦闘すること10分。
全てのページに目を通したがやはりあのカフェが良いだろう。
場所もここから15分しか掛からないのも結構お得だ。
あまり遠いと交通費がかかってしまうからな。
私は求人誌でパタパタと風を送りながら一階に降りた。
「ジイさん、明日の放課後行くことにした」
「おお! で、なんとバイトだ?」
「カフェのウェイター」
その言葉を聞いた途端、ジイさんは少し涙ぐんだ。
え、え、え? 何ごとだよ。
私なんかしたか? 面倒くさいなー毎度毎度このジイさんは。
「ハルカも女の子らしいところがあったんだなー、ワシお前があまりにずぼらだから心配していたんだ」
「これが一番条件良かったんだっつの! 勘違いすんなジジイ!」
私は顔を少し赤くして怒鳴りつける。
女の子らしいとか、まぁ二十歳だから良いけどさ!
私は顔を腕で抑えながらまた上に上がった。
なんだあのジジイは!
くそ、やっぱ第二希望のコンビニにすりゃ良かった。
嫌でもあれは深夜だしなぁ……。
翌日、オレンジハイスクールにて。
私は教室の机に突っ伏しはぁと溜め息を吐いた。
それを見兼ねてビーデルとイレーザが話しかけてきた。
「ハルカどうしたの?」
「悩みでもあんの?」
「いや、私バイトする事になってさ。カフェの」
その事を聞いた二人は「へぇー」と声を漏らした。
高校生でバイトとは、金に困っているのかなと二人は思っているんだろうがその通りだ。
それもこれもあのジジイの大食いっぷりのせいだっ!
まぁ住まわせて貰ってるから言えないけどさ。
いや言ったか、言っちゃったか。
クソジジイとか言ったな私。
後から悟飯が来て、「どうしたんですか?」と聞かれ二人が答えそうになったのですぐ様口止めをした。
バレると厄介だし、なんとなくだけど、ね。
先生が来てからは皆は水を打ったようにシーンとした。
ピピーッピピーッ!
突然ビーデルの腕の機械から音が鳴る。
あー呼び出しか、私も見たいなぁー。
でも我慢だって、疑われるよ。
私はそんなにメンタル強くないんだから!
「はい! こちらビーデル!」
そこからの機械の音はボソボソとしか聞き取れなかった。
席離れてるからな、ちぇっ。
ビーデルはガタンと席を立ち、「いってきます」と言い言ってしまった。
それをボーッとした顔で見つめる悟飯。
シャプナーに訳を聞き、「便所に行きたい」というなんともバレバレな嘘を吐いてビーデルの後を追いかけていった。
……こりゃー長くなりそうだ。
あれから数十分経ち、やっと悟飯が戻ってきた。
遅れてビーデルも入ってくる。
私の近くのクラスメイトが「そんなにデッカいやつだったのかー」と下品な事を言い教室は笑いに包まれた。
……さっすが高校生、下ネタ好きだなぁ。
後ろ姿しか見えない悟飯の耳は、ほんのりと赤くなっていた。
かっわいー高校生見てると自分の青春時代を思い出すぜ。
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