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「あっつ〜い、お母さんアイス」

「自分で取りなさい」

クーラーで冷えきった空間の中、ソファに寝転がりながらお母さんにアイスを要求した。
お母さんは当然のごとく、何時ものように切り捨てた。
私は「ちぇっ」っと言いながら重い足を引きずって冷凍庫からアイスを取り出した。

はー天国、おいしー。
私は一時間前に買ったばかりのパピコを頬張った。
もう一本は誰にもあげない、また夜に残しておくのだ。
私のお金だし!

「ハルカ、なんか宅配便来てたみたいだから取ってきてくれる?」

「やだよ、暑いもん」

「お小遣い減ら……」

「サーイエッサー」

酷いじゃないかお小遣いを盾にするなんて。
もはやお金を使いたい盛りの学生にとってお小遣いが減るのは死活問題である。
私はお小遣いのために、38度という炎天下の中に放り出されるんだ。

なんてそこまでじゃないけど、若干盛ったけど。
私はパピコを口に咥えたまま黄色のクロックスを履き、玄関の扉を開けた。
その瞬間私の目の前に広がる木、木、木。

え、木!?

私は夢を見ているんだろうか。
私がいたところの玄関の前は道路になっていて、完全なる住宅街のはずだ。
私は怖くなり、パピコを片手に持って開いた片手で定番か! と突っ込みたくなる様な「頬を引っ張る」をした。

「いたい、ね」

これは本当にどういう事なんだろう?
悩みに悩む私はハッと気がついた、お母さんは!?
私はドクンドクンと高鳴る心臓を抑えながらお母さんのいるリビングに走った。

「お母さん!」

ガチャリと乱暴にドアを開け、叫ぶ。
その中には誰もいなかった。
トイレ行ったのか?
いや、まさかまさか。あはは。

私は頭が真っ白になった。
リアルガチの混乱状態だ。
どうしたもんか、私は食べ終わったパピコを流しに放り込みソファの上で縮こまる。

……もしかしたら、トリップと言うやつだろうか。
だとしたら何で私が?
私はトリップする様な事なんてやってな……、あ。

私は一つ心当たりがあるのを思い出す。
私ってばさ、昨日の夜3時にトリップ方法やったよね?
まさかのトリップ成功、だったりする?

「……まっさか〜!」

その乾いた声は、儚くもクーラーの音に消えた。
なんだか身体が冷える、いったん外に出てみようか。
私は上半身黒いタンクトップに下がデニムのショートパンツのザ・夏という格好だ。
一応の意を込めて、ケータイを片手に掴み外に出る。

「……やっぱ木ばっか」

ここは森なんだろうか。
凄く蒸し暑い、あそこより暑いんじゃないか?
汗が二つの意味で止まらなかった。

やっぱり戻ろう、家でじっとしていた方が安全だ。
と確信しまたくるりと家の方を向く。
私は、その瞬間絶句した。

「い、家……が」

ない、その言葉は空に残った。
どういうこと? 私が出たその後まではちゃんと家はあった。
あの数秒で消えたって言うのか?
……なんていうことだ。

私はへたりと座り込んだ。
草が素足を撫でて、少しくすぐったかった。

「はぁー、認めるっきゃないのか」

それにしてもここはどこの世界なんだろう。
少なくともこんな大きい木なんて見たことない。
私はドラゴンボールの世界に行きたいと願ったが、あれは単なる冗談なのだ。
まさか本当に行けるなんて思っても見ない。

本当に行ける事を知っていたら平和な学園漫画にしていたさ。
もしここがドラゴンボールの世界ならば死亡フラグが立ちすぎだ。
キャラは見たい、だが死ぬのは嫌だ。

私はそう思うながら意を決して歩き始めた。
くよくよしててもしょうがないよな、とにかく町を探そう。
人が一人でもいればいいんだけど。

しかもちょうど今は昼時だろう。
まだ太陽がさしていて明るい日差しだ。
まぁ今もそれすら暑いんだがね。



「し……死ぬぅ」

何時間歩いたんだろうか。
もう四時間は歩いたよね、うん。
……どうなってんだここは迷路かよ。

私はもう歩けないよーと訴えかける両足を無理やり動かした。
ぐううぅぅ、うあーお腹もすいてきた。
しかももう日は沈んでしまった。
くそ……最悪だ。

ケータイは圏外だし。
もう餓死するしか私には残っていないのだろうか。
あ……ダメだ、コレ。

私は力尽き、腐葉土が溜まった土の上にどさりと倒れた。




「……女?」

どうしてこんなところに。
それにしてもかなり弱っているようだ。
……連れて帰るか。
いや、これは誘拐じゃないぞ!?




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