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03
「ネ、ネズミさん? なんで時計……」
戸惑うように言う私をラノベ系やれやれ主人公のようにやれやれとしながら連絡手段に決まってるだろう、と言った。
確かに夢小説とか二次創作物では神様がケータイやらネックレスやらリングを連絡手段で呼び寄せてたな。
王道じゃね、いやでもデザインプリーモさんたちが持ってる懐中時計にそっくりなんですが。
あ、開いた。
中を覗くと小さい金色のダイヤ形のボタンがあった。
「このボタン何?」
「押してみな」
ポチッ。
押した瞬間ネズミさんが肩の上に乗っていた。
なるほど、こういう事ね。
「ネズミさんさっきリンゴ食べ過ぎたせいか重く感じるんですが?」
「……ダイエットします」
ショボーン顔可愛い、写メ撮りたい。
しかもドアップというね、ご褒美!
「そんじゃ原作開始の三ヶ月前だっけ? どこに飛ぶかは俺も分かんないから気をつけろよ」
「ちょ、それ死亡フラグ」
あ、私死んでたんだった。
二回目だよ、でも癖になるんだよ!
「うおぉぉぉぉっ!?!」
足元からドンドン身体が消えていく。
「好きな時に呼び出せよ、じゃあな」
「……うん、ありがとう」
完全に私の姿が消え去った後、ネズミさんはネックレスやらリング状にするのを忘れたと今ながらに後悔していた。
ドサドザサザッッ。
「〜〜〜っ」
何故か地面から10mくらいの高さから落ちたせいでが尻と手がいてぇ。
え? 下品? 女子はそんなものさ☆
なんてねうそです全国の女の子様ごめんなさい。
そして空から落ちるとかテンプレ通り過ぎないかい?
取り敢えずここはどっこだ? パターンにも慣れてきた気がする。
大の字になって寝そべっている私。
空が、青い。
野外かぁ、何処だろホント分かんないよ。
はぁ、とため息をつきかけた瞬間それを飲み込んだ。
突然頭に猛烈な金属で打たれ、死にそうな程痛くなった頭を抱えながら体育座りをした。
なんだなんだなんだ!?
いやマジで何処っすか!?
蹴ったの誰? でも見たくない、何故なら銀髪の長い髪が見えるから。
「う"お"ぉい、てめぇ何処から入りやがったこのドブネズミがぁ!!」
ネズミじゃない人間です! というかドブネズミってなんかやだ!
なんて言う暇もなく、キーンとする前に手で耳を思いっきり塞いだ。
でも煩かったのでスクアーロさんの声が原作よりも大き過ぎるのか、それとも私の耳の塞ぎ方が下手だつたのか。
取り敢えずここはヴァリアー本部の屋上という情報が分かった。
でも私、美少女になってんだよね?
つか服そのまんまだし今思えば下着透けてる!
ネズミさん言えよこのヤロー!!
「う"お"ぉおぉいい、質問に答えろ」
コクコクと首を振る。
首に腕を回された。
恋人的な雰囲気じゃなくて、もちろん険悪ムードだよ?
怖い怖い死にそう。
あ、でも原作終わるまで死なないんだった。
なんて便利なオプションつけたんだろう私!
というか下着透けてることには気づいていない様です。
よかった! てか私Tシャツ一枚とか変態かよ……。
つか涼しいな、原作開始の三ヶ月前だから三月頃か。
まだ学校の入学式は始まってない、出来れば並中に通いたかったよー。
「お前はスパイかぁ"?」
ドスの効いた大きな声で耳元で喋るから鼓膜が破れそうだ、切実に止めてください。
「ス、スパイだったらこんな格好しません。飛行機から転落したらここに落ちたんです!!」
すっげー良い言い訳じゃないか?
考えに考えたこの世界でありえる行為。
うつむいたせいか前髪が凄い長い、後で三つ編みに結ぼうかなIA風に、でもこの場合はセンター分けになるな。
スクアーロさんも納得した様子で私の首から腕を離し私の全身を見た。
「う"お"ぉああ"!?」
スクアーロさんがより一層でかい声で真っ赤な顔をしてプルプルと震えている。
あ、下着透けてんの忘れてた。
反応ウブすぎだろ、童○かよ。
ヤバイどうしよう!
バッと投げ付けられたヴァリアーが着てるコートが私の頭に覆い被さった。
はてなマークを浮かべる私の表情を見て、着ろと一言言って後ろを向いた。
私はいそいそとコートを着、コートのボタンを全て締めてフードを被った。
わー裾ひきずってるよ、悪いから裾つかないように一点に結んで持ち上げよう。
ふふふ、これで「フードを取れ、可愛い!お顔真っ赤ー」状態作戦を目指す!
てか自分の顔確認してないもんな、ユニちゃんくらいってもユニちゃんと同じ顔って訳にはいかないしな。
「す、すいません。コートありがとうございます!!」
「あ"ぁ? 別にその格好でウロチョロされっと困るからな。取り敢えず俺について来い」
親指を横に向けて進んでいくスクアーロさん。
それを追いかける私、ちょい待ち歩くの速くね?
私駆け足だぞ、でも文句は言えない。
無言が辛い、かといってあんまりこの状況では話したくないけど。
てか髪長いなー、しかもサラッサラ。
ゲームで高速でシャンプーで頭洗ってたけど、そうなのかな。
なんて呑気なことを考えながらあることを思い出す。
ネズミさんに貰ったこの小さい懐中時計、せめてリングとかネックレスにしてくれればよかったのに。
(もったいない)
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