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 薬学研究室に、二人分の声が聞こえる。
 実際部屋に居るのは一人、暖炉には緑色の炎が燃えている。つまり、暖炉を通じて会話しているわけだ。


「ちょっとセブルス、今週末は帰ってくるって言ったじゃない」
「だから仕事があると」
「言い訳は聞きません!とっとと帰って来なさい」

 ぴしゃりと命令されて、スネイプは押し黙った。
 彼女との会話は昔から苦手だ。主導権がなかなか握れない。

「月1回ぐらいサービスしてくれてもいいじゃない。オクサマなのよ、私」
「…すまん」

 彼が謝るのは月一回。そのオクサマと会うときだけである。

「ところでレイ、実験用具はどうした」
「なに」
「この間ふくろうを寄越しただろう。足りない分を買い足して送ってくれと」
「…………そうだっけ?」
「忘れていたな」
「や、やだなー届いてないだけだよ?」
「…ほう」
「あ、今来た今!めちゃくちゃ弱ってる!どんだけ放浪してたんだろうねー!」
「嘘をつけ嘘を!!否を認める気はないようだな」
「だってふくろうが悪いんだもん!私悪くないもん!」
「いくつだお前は…」

 片手を頭にやりつつスネイプは大きなため息をついた。

 彼は今、過去の発言を後悔していた。
 なぜなら、彼女は忠実に彼の言ったことを守っているからだ。

 自分からは決して折れない。するとスネイプから折れるしかなくなる。
 結果、妻の立場ばかりが強くなっていく。



「言うのではなかった…謝るのは最後にしろ、などと」



 そうひとりごとを呟いて、恐妻家はもう一度、大きなため息をついた。





End. 

→あとがき


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