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少年は重い扉を開け、中へと入る。
できるだけ、いつもと同じを装って。
「やあ、スネイプ君。待っていたよ」
教師はのんびりした態度で彼を出迎えた。
いつもとまるっきり同じだ。
拍子抜けしたセブルスは、出かかっていた言葉を、この間借りた本に関する質問にすりかえた。
それでもずっと、みぞおちの辺りが重苦しい。
思考が散る。
脈拍がいつもより高い。
あまりに居心地が悪くて、とうとう我慢できなくなった彼は質問してしまった。
さっき、あの女が来ませんでしたか。
「ああ、知っとったのか」
それでも教師は態度を変えなかった。
「そう、おそらく君の察する通りだ…まったく困ったもんだよ」
そう言いながらも、困っている様子ではない。
「どうして断ったんですか」
「どうして?」
「どうしてだって?そんなもの決まってるじゃないか」
ここにきてはじめて、教師は愉快そうに笑った。
「くだらんからだよ」
――初めて会ったときから好きだの年の差は気にしないだの、なんともつまらない話を延々15分も聞かされたよ。
――まったく勉強家が聞いて呆れる。私がお茶に招待したからっていい気になっていたらしい。
――これだからハッフルパフは馬鹿だというんだ。客観的な証拠もないのに、思い込みだけで決めつけおって。
笑っている。
教師は笑っている。
少女のあの泣き顔など、知りもしないで。
「馬鹿な少女のくだらん思い込みなど、忙しい私が受けとるべきじゃないだろう。
そうは思わないか、スネイプ君」
「思いません」
いつもなら相槌を打つはずなのに、
彼は即座に切り返した。