また近いこの距離から始めよう

※学パロ
※小ネタの「好きな子にはついつい」の学生編


幼なじみ。
小さな頃から付き合いのある者をそういうのだろう。
一度できてしまった距離も簡単に埋められるもの。そう思っていた。
けれど、実際そうはいかない。
それは年の差なのか男女の差なのか、それとも別の何かなのか。

「あ、妙……」

目の前を横切っていったセーラー服姿の幼なじみ。
こちらには気づかず、さっさと歩いていってしまった。

「ん、何してる銀時」
「ヅラ……」
「ヅラじゃない桂だ。腹が減ったからふぁみれす寄りたいと言い出したのは貴様だろう。何をぼけっとしている」
「いい加減ファミレスくらい言い慣れろよ……いや、今そこ妙が通ったからさ。向こうはこっちに気づかなかったけど」
「む……そうなのか。俺も気づかなかった。彼女は受験生だし、あまり邪魔するなよ」
「どういう意味だよ……」

受験生、と銀時は呟いた。
自分たちも通った道。そこを今度は妙が通る。どこを受けるかはわからない。

「よそよそしくなったよな……あいつ……」

昔は気を遣うなんてことなかった。
言いたい事があれば言うし、何かあれば行動する。そんな当たり前が、今は当たり前でなくなってしまった。
中学に入った辺りから、だろうか。
それまでも、少しずつ変わっていったように思う。
妙はクラスの友達と遊ぶようになり、銀時たちもそうだった。
男と女の差で、ひとつしか違わないのに大きな違いでもあった年の差。

「銀時」
「あ?」
「ファミレスはいいのか」
「……行く。つーか、いきなり言い慣れんなよ」
「言い慣れろと言ったのはお前だろう」

妙の横顔を浮かべながら、銀時は先を歩く桂を追い越した。


****


「あー……やっと補習終わった……」

ぐで、と銀時は机に突っ伏す。
中学よりも色々と自由になった高校。しかし、面倒も増えた。
テストの点数など将来に関係ない。それなのに強制的にやらされる。
これがなければ高校生活は楽しいものなのに。

「おい、銀時」
「あー?」
「この間貸した金返せ」
「今言うこと?つか、高杉お前何でいんの?お前も補習?」
「テメーと一緒にすんな。たまたま廊下通りかかったら天パが死んでたから声かけただけだ」

金、とそれだけ言って高杉は手を出す。
その手にそっと消しゴムのカスを乗せ、銀時は立ち上がり背を伸ばした。
そのまま何となく窓の外を見る。

「ん?」

窓辺に寄り、目を細めた。
遠くてわかりづらいが、学校の敷地の外に黒い毛玉が見えた。だがそれは、別にどうでもよくて。

「妙……?」

セーラー服にポニーテール。
間違いない。あれは妙だ。どうしてこの高校にいるのか。どうして黒い毛玉と一緒にいるのか。

「辰馬……なんでアイツが……」

何やら楽しそうに会話している。
すっ、と高杉が銀時の隣に立った。

「そういや、相談がどうとか言ってたな」
「は!?相談って何!」
「妙に聞け」
「あのバカに相談したって何も解決できないだろ!」

何か悩み事があるなら自分に言ってくれればいいのに。
銀時はぐっと拳を握った。
ただでさえ、最近は顔を合わせる事もない。このままでは本当に距離ができてしまい、元通りにする事ができなくなってしまいそうだ。
くそ、と吐き捨てるように言うと、銀時は鞄を持って教室を飛び出した。
途中で廊下を走るなと怒号が飛んだが気にしてられる状態ではない。
校門を飛び出し、坂本と妙がいた場所を目指す。

「……い、いねェし……」

辺りを見ても誰もいない。
もう帰ってしまったのだろうか。
銀時は大きく肩を落とすと、とぼとぼと帰路についた。

「……このままじゃまずい……よな……。あいつがどこの高校目指すかわかんねーけど……多分俺らんとこじゃねーだろうし……。会う機会がますますなくなって……か、彼氏作って高校生活エンジョイなんて事になったら……!」

ピタリ、足を止める。
まずい。ひっじょーに、まずい!何も伝えてないのに失恋?あいつが彼氏作って?

「絶対ェ祝福なんてできねー!」

わしゃわしゃ、髪を掻き回した。
すでに好きな奴がいたらどうしよう、と焦りばかりが胸をつく。
小さな頃に意地悪ばかりしていた自分が恨めしくなった。
もっと優しくしていたら。
そうすれば、頼りにしてくれたかもしれない。相談だって、あんなバカじゃなくて自分を選んでくれたかもしれない。
後悔したところでどうにもならないのに、やはり小さな頃の自分を殴りたいと思った。
ハア、とため息を吐きながら俯いていた顔を上げた。
見えたのは、昔遊んだ公園。妙や新八とも遊んだ小さな公園だった。

「んん?」

見覚えのある頭がふたつ。
ハッとした銀時は、急ぎ足で公園に向かうとそっと覗き込んだ。
やはり。妙と坂本だ。
声は聞こえないが、楽しそうに話している。
ムスッと、銀時の眉が寄った。
邪魔してやろうか。いや、待てそんな事したらまた妙に距離を置かれる。
どうしようかとグルグル悩んでいると、

「うおおおおお!!」

突然坂本が寄生を発し凄まじい勢いで公園を飛び出していった。

「……え、何……だ……?」

思わずポカンとする銀時。

「そんなところで、何をしてるの?」

妙の声が聞こえ、慌てて振り返った。
不思議そうな顔で首を傾げる妙と目が合い、銀時はばつが悪そうに目を背ける。

「銀時君?」
「あ〜……いやぁ〜……」
「何よ、らしくないわね」
「辰馬と何の話してたのかなって……」
「坂本君と?ちょっと、相談をね」

何か思い出したように、クスリと妙は笑う。
やはり面白くない。
桂や高杉に相談するなら、いや、それも腹が立つが、ぎりぎりまだ分かる。
けれど、坂本に相談して解決する事などあるだろうか。
坂本よりはマシな事言える自信はあるのに。
そこまで信用がないのか。

「銀時君、何なのその顔」
「別に。どうせ俺は頼りねーし、妙のことなーんも分かってないし?」
「何意味わからないことを……。それより、坂本君のこと邪魔したり、あまり弄らないであげてよ」
「ハア?」
「本気みたいだから」
「何が?邪魔って?」
「何って……もちろん坂本君の恋路よ」

コイジ?
銀時は聞き慣れない言葉だと首を傾げる。
妙も同じように首を傾げる。

「銀時君、何も知らないの?坂本君……話してなかったのね……」
「待て待て。話が見えねェんだけど」
「坂本君、好きな子がいるの。知らない?」
「は?アイツが……?ん、いやでも……そういや誰かの名前をずっと叫んでたような……」
「呆れた。幼なじみの言う事聞き流してたのね」

妙は大きくため息をついた。

「坂本君が好きな女の子。私と仲のいい友達なの。だから最近相談に乗ってたんだけど……」
「相談?あ……あ!相談って……!お前が辰馬に相談したんじゃなくて、アイツがお前に相談してきたのか!」
「え?ええ……そうだけど」

それがどうかしたのか、と妙が訝る。
銀時は安堵と焦りが一緒になったような奇妙な顔をすると大きく息を吐いた。
思い違いをしていたらしい。
それもこれも、高杉のせいだ。
高杉が紛らわしい言い方したのがいけなかった。
この場にいない高杉に悪態をつく。
いや、そもそも悩みなんてあるとは思えない坂本がらしくない恋の悩みなんぞを妙に相談なんてするから。

「全部人のせいにしてるけど結局は俺が情けないだけなのがムカつく!」
「もう……さっきから何なの?」
「……お前さァ……」
「ん?」

分かっているのだろうか。
いや、きっと分かっていない。
久しぶりに言葉を交わしている事に、妙は気づいていない。
顔を合わせる事減っていると、こちらは頭を抱えるほど悩んでいるというのに。

「銀時君?」
「……お前、俺に対してよそよそしい態度とってる自覚ある?」
「え?そんな態度とったかしら?」
「うん。今もさ、普通に話してるけど、昔はこんな距離なかった」

自分と妙の距離を指で示す。人二人分ほどあいた距離。
一見、変わらないような会話のやりとり。
けれど、壁がある。妙が作っている壁。

「……そう……なのかな……。同じつもりだけど……そうね……作ってるのかな、壁……」
「こうして話すのも久しぶりだし。昔は俺らのあと引っ付いてきたのに、今じゃ用がなけりゃ関わろうとすらしないっつーか。まあ、嫌われてんなら仕方ねーけど……」
「え!?ち、違うわよ!そうじゃなくて……」

妙は困ったように髪をいじった。くるり、毛先を指に巻きつける。

「銀時君が……男の子だから……」
「ああ、男女の違い?」
「ううん、そうじゃないの。昔は友達で通じたものが、段々通じなくなってきたというか……」
「どういう意味」
「私が中学に入ったばかりの頃……だったかな。廊下で会った時、声をかけてくれた事あったでしょ?」
「ん、あった……かもな。あんま覚えてねーけど」
「そのあとね、あの先輩誰?彼氏?って友達にしつこく聞かれたの」

女子ってそっちに繋げたがるよな、と思ったが男子も似たようなもの。
男と女が話してるだけで探り入れようとするのだ。
とりあえず疑う。話題作りも兼ねており、会話のきっかけにしたりもする。
からかいの意味もあるだろう。
それは、恋愛に興味を持ち始めたお年頃の楽しみのひとつだったりもする。

「幼なじみだって言ったんだけど……その、絶対に妙ちゃんのこと好きだよ、とか……変な事言い出すから……」

思わずドキリ。
バレていたわけではないと思うが、都合のいいように。そうなら面白いのに。そんな風に思っていたのだろう。
妙がこの手の話題が苦手な事は知っている。
もしかして、それが嫌で。

「避けてた……?」
「避けてたわけじゃないけど……でも、銀時君たちにも迷惑かかるかなって……思ったら……その……」
「あー、あー……うん、わかった」

銀時は力が抜けたようにその場にしゃがみ込んだ。
ホッと、安堵する。

「よかったわ……お前に嫌われてるとかじゃないならさ……」
「え?そんな事あるわけないじゃない……。私だって……本当は……もっと…………」
「妙?」
「もっと、銀時君たちと一緒にいたい!でも、みんな他の友達と一緒にいるし、新ちゃんの事は構うのに私の事は……」

妙はしゅんと頭を下げた。
ゆっくりと銀時は立ち上がる。
妙も妙で思うところがあったのだろう。少しずつ、少しずつ、できていく距離。
それに寂しさを感じていたのは妙も同じ。
銀時はポンと妙の頭を撫でる。

「ふふ。こうされるの、久しぶり」
「そうだな……」
「坂本君と話してたら皆と騒いでた頃が懐かしくなったり」
「うん」
「桂君や高杉君ともお話したいと思ったり……また勉強教えてもらいたい」
「うん……アイツらはどうでもいいんじゃないかな」

よしよしと優しく撫でる。
ほんのり頬を染めて嬉しそうに笑うのは小さい頃のままだ。
意地悪して、怒らせて、最後はこうして仲直り。
つい最近までの事に思えるような、ずっと昔を懐かしむような、不思議な気持ちが湧いてくる。

「あのね、私……」
「ん?」
「銀時君たちと同じ高校受験するわ」
「え?」
「だから色々教えてね……?」

ほんのちょっぴり、照れ臭そうに。
笑う妙に胸が高鳴った。
大きな瞳に吸い込まれそうになり、ごくりと喉を鳴らす。
抱きしめてしまいたい。キスしてしまいたい。
邪な考えが頭をよぎった。
頭を撫でていた手をゆっくりと頬に滑らせ、優しく触れる。
驚いたような妙の顔。

「妙……俺……」
「何してんだテメーは」

膝かっくん。
突然膝の裏を蹴られた銀時は前のめりに倒れ地面に膝をつく。
パッと妙の顔が輝いた。

「あ、高杉君……!桂君も」
「久しぶりだな、妙」
「まったく、邪魔をするなと言ったはずだぞ銀時」
「いや邪魔したのそっちだろ!!」

いいところで登場しやがって、と銀時は高杉と桂を睨む。

「妙、今日は新八と買い物の日じゃないのか?」
「そうだったわ!高杉君よく覚えてたわね」
「いつも決まった日に行くだろ。早く行ってやれ」
「うん……ありがとう」

またね、と駆けていく妙。
その後ろ姿は上機嫌に見えた。

「……………………」
「何を呆けている」
「お前らが来なかったら今頃……」
「失恋してたかもな」
「何でだよ!わかんねーじゃん!」
「失恋か……銀時、何か食いにいくか?」
「いや、だからしてねーよ!!」
「奢らねーけど、付き合ってやってもいいぜ」
「ふざけんなよテメーら!今にみてろ……俺の彼女に気安く話しかけられねーようにしてやるからな!!」

そりゃあ楽しみだ、と。
スタスタ先を行く高杉と桂の背に、銀時は思い切り蹴りを入れた。


end


えー……小ネタの学生編という事なのですが……駄文も駄文になってしまいました……。コレじゃない感……。
話の筋が通らないというか、矛盾というか、それが気になって途中で書くの止めたんですけど……何とか修正できるかなー?とアレコレ肉付けしてったらこうなった感じです。
どうにかしようとした結果、よくならなかったやるせなさ……勿体ないので上げちゃいましたが……!
こういうやり方して納得できるものが書けるわけないともう解っているのに……。
なかなか落ち込む出来ですが、次頑張ろうと思います……!
お粗末さまでした!

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