夢 | ナノ
世界の為の佐野万次郎




――2010年8月31日 パレスチナ自治区 ヘブロン


 俺が15を迎える年の、丁度この時期から始まる1年足らずの期間が与えられた知識の中、佐野万次郎の人生における分水嶺だった。悲劇と苦痛の連続。救いのいない地獄を一人きりで歩む覚悟が出来ず、俺は逃げた。家族から、東卍から、運命から。
 逃げて逃げて――その先に待っていたのは変わらぬ地獄だった。
 異国から来た俺を暖かく迎え入れてくれたホストファミリーが死んだ。成績を競っていた好敵手が死んだ。尊敬に値した教師が死んだ。
 紙面の上、決められた出来事をなぞるように。1年足らずのうちで。
 俺のせいだ。
 わかっていた。
 俺の成す善行は悲劇に変わる。知っていた。だが。
 逃げる事は善行か? 情を抱くだけで善なのか? 話すだけ、笑いかける事さえ善なのか? それは一体誰が、何の意図を持ちどんな基準で判別している?
 わからない。理解できない。なんという不条理。……だから。

 ―――だから俺は、同じく不条理に苦しむ者たちを集め率いて、その誰かに一矢報いる事とした。

 埃に塗れたブラウン管の中で、時の大統領が意気揚々と戦争の終わりを宣言する。自国へのテロから始まった戦火を自身の代で終結させると高々と熱弁を振るうその様を鼻で笑い、演説の途中で電源を落とす。
 戦争は終わらない。……俺が、終わらせない。
 救済の果てに起きた惨劇は頭に焼き付いている。佐野万次郎が善行を犯す事は決して許されない。……ならば、悪行こそが俺に唯一残された道だろう? 許される悪行を重ね続ければそれはやがて祈りに変わり、俺の怨嗟は地を駆け巡り天へと届く。
 その、果てに。戦果と戦火と戦禍の果てに、きっとその存在は降りてくる、堕ちてくる。罪深き俺の下に、憐れで愚かな俺の下へ、雷鳴を携えて。

 振り返り、そこに並んだ組織の者たちに凍りついた表情筋を無理やり動かし笑いかける。常は無表情を貫く俺から笑みを向けられ、構成員たちはざわりとどよめく。それを気に留めず、俺は久方ぶりに声帯を震わせた。望まれた悪意をたっぷりと込めて、天上から俺を見守っていて下さる誰かへ奉り祈り上げるために。

「見捨てられた俺たちで、神の庭を核の炎で燃やし尽くそう。大切な信徒たちを殺しつくそう。そうすればきっと、かの御方は降りてくる、堕ちてくる」

 死体に群がる蠅のように軽率に、飴に集る蟻のように短絡に、外敵を見つけた蜂のように愚直に。数え切れないほどの祈りを積み重ねたその先に、きっとそいつは堕ちてくる。地獄へと変わり果てた聖地にようやく降臨したそいつへ、俺は面と向かってずっとずっと伝えたかった言葉を吐き捨ててやるんだ。「テメェが余計な事をしたから、万の人間が死に聖地が焦土と化したんだ」って。
 お前が佐野万次郎を変えなければ。お前が余計な知識を植え付けなければ。お前が周りを救えるかもなんて希望を持たせなければ。お前が俺に一時の夢を見せなければ。
 お前が、お前が、お前が。
 ――お前が、余計な真似をしなければ。
 俺は何も知らない、ただ悲劇に彩られるだけの佐野万次郎であれたのに。
 衝動と共に巡るこの感情を、俺は憎悪と名付け天へと向けた。かの御方ならきっと、全部受け止めてくださる。俺の苦痛も後悔も憎悪もすべて。
 俺の犯した罪も犯す罪も全部。全部――俺を変えた、お前が受け止めろ。

「神は、降臨なされる。……度し難き俺たちのもとへと、天罰を下しに」

 その言葉の後、いつものように表情を落とし口を閉じた俺の後を引き継ぎ、いつの間にかこの組織のNo.2を自称するようになった男が構成員たちに作戦を説明し始める。それを聞き流しながら、俺はもう何百何千回と繰り返した思考に耽った。

 もし。『勧奨懲戒』『善は栄え悪は滅びる』『天網恢々、疎にして漏らさず』古くからあるこれらのことわざが事実なら、必ずや俺には天罰が下るだろう。
 もし。真一郎があんなにも信じたように、多くの宗教が伝えるように、真実この世に神が[[rb:御座 > おわ]]すならこれから俺の成す事柄は決して許されないだろう。
 俺にこの知識を授けた存在が神ならば。俺を知識の中の佐野万次郎から逸脱させた存在が神ならば。その期待と真逆の道へ進む俺を、かの御方は必ずや止めに来られるだろう。

 俺が悪逆を尽くした先に、数多の屍山血河を重ねた果てに、その存在は天上より降りて来て――…罰を。

 ―――きっと、俺が犯した罪に見合うだけのとめどない罰を与えて下さる。



――2010年9月3日 キプロス共和国 アヤナパ


 現地に設置したカメラの向こうで、目を焼くような閃光と共に天高くキノコ型の雲が打ちあがる。遅れて、海を挟み離れたこの島の建物を揺らすほどの爆音が轟いた。
 揺れが収まり、防護服をまとった構成員が線量を測定するためテラスへ出る。二重になった防弾ガラス越しに構成員が振り返り、頷く。それを受け俺は外へでた。海の向こう、対岸の空を黒い雲が覆いつくしていた。その下ではきっと、黒い雨が降り続けているのだろう。
 まるで地獄のよう。恐ろしい光景だ。身の毛がよだつほどおぞましい――そんな光景の、はずだった。

「……そうか、そうだったのか」
「ボス?」

 ぽつりと落とした言葉に、No.2の男が反応する。それを無視して、俺は口元を右手で覆った。
 神じゃない。神などでは無かった。
 自分が愚かすぎていっそ嗤いが込み上げる。
 震える左手で胸を押さえる。神であるわけがない。
 真一郎が死んで以来、いつもいつも胸の内に渦巻いていたはずの衝動は、衝動が今、こんなにも。
 知識を与えた存在が神ならば。逸脱させた存在が神ならば。

 何故、地獄のようにおぞましいこの光景を前に俺の中の衝動は、こんなにも満足している?

「この世に救いは無く――神などいない」

 真一郎があんなにも信じていた神はいない。俺の祈りは天に届かない。あの日神社で合わせた手に意味なんてなかった。
 いくら待てど、黒く分厚い雲の切れ間から日が差すことは無い。いくら罪を重ねても、神は姿を現さない。一瞬にして万の命を消し去った俺に、裁きは下らない。
 この世界に。
 救いは無い。神は無い。天罰は無い。

 なら、空席の天上に向けていたこの憎悪はどこへ行き、俺が犯した罪は一体誰が雪いでくれるんだ?



――2011年5月2日 アフガニスタン カブール


 救いはない。神は来ない。罰は下りない。血に汚れた俺の両手は永遠に雪がれない。転がり始めた石を止める手立てが無いように、俺一人が歩みを止めても組織は進む。贖罪の機会を得られぬまま罪がどんどん重なっていく。押し潰されそうな心を、日本有数の犯罪組織と化した東京卍會の内情を探らせ、今日も誰一人として欠けていない事を確認し安定させる。俺の愛した東卍は今も続いている。俺の選択は間違っていない。間違っていないはずだ。
 ……本当に? 心の内に湧き上がる疑問を握りつぶす。ケンチンもバジもエマもイザナも生きている。知識の中の悲劇は回避した。俺の東京卍會は、今日も生きている。ゆえに、俺の選択は正しかった。正しいはずだ。
 ……その代わりに? 脳裏をよぎる留学後の地獄をかき消す。心は全てあの頃に置いてきた。留学後に出来た知り合いも、友人も、この組織だって。心の片隅にさえ残らない。残さない。だって、残してしまえば――全員不幸になる。みんな、死んでしまう。

 話す言葉は最低限。表情は変えず、信頼を向ける事も無い。置物のようにただそこに存在するだけの俺に、それでも構成員たちは命をかける。そうしてどんどん、罪が重なっていく。
 そんな日々の繰り返しの中、用意された椅子にただ座るだけの俺の前に、No.2の男が構成員たちを引き連れやってきた。

「ボス、彼らが今年入った新入りの中で特に功績を上げた者たちです。いずれ幹部昇格も夢ではないかと」

 ぼんやりと宙を彷徨っていた視線を結び、並んだ構成員たちに目を向ける。俺の視線ひとつ、言葉ひとつに価値があるのだと男は言った。顔を見つめ、目を合わせ、名前を呼び、命令する。それだけで命を懸けるに値すると。
 それぞれが口に出す名前を顔と共に頭の片隅へ入れていく。俺がこいつらの名前を呼ぶのは、死地に送る時のみ。鬱屈とした感情がより一層胸に広がっていく。今日はもう気分じゃないと言外に匂わせて終わらせよう。瞳を閉ざそうとした時、男に促され新人の一人が歩み出た。
 ――…パチリと目が合う。

「は、初めまして、ボス」

 おどおどと、しかし真っすぐにこちらを見つめる青い目、周囲に並ぶ構成員とは違う人畜無害そうな表情。それに誰かの面影を見た気がして、椅子から立ち上がる。

「お前、」
「ボス……?」

 困惑するNo.2の男を無視して新人に近付き、ずいと顔を覗き込む。

「名前は?」

 新人は仰け反り、バランスを崩して尻をついた。

「お、俺の、名前は――…」

 床に後ろ手に手を付き、緊張した面持ちで名前を紡ぐその姿が、……目が。強い意志を持ってキラキラと輝く青いその瞳が。会ったこともない誰かに重なる。
 そいつの体を跨いでしゃがみ込み、久方ぶりに表情筋を動かして笑み作りそいつに向ける。記憶の中、紙面の上の佐野万次郎をなぞるように。

「そうか。……お前、今日から俺の側近、な」

 繰り返しの日々の中、重なっていく罪、下されない罰、行き場のない憎悪、息の詰まるような閉塞感。そこに一筋の光明が差し込んだ――ような、気がした。



――2014年7月6日 アフガニスタン ヘラート


 持っていたスプーンを机に置き、汚れのない口元をナプキンで拭う。テーブルの上に料理の大半を残したまま、俺は席を立った。

「もういい、下げろ」
「ボス」
「サラダ食べたからいいだろ」
「……俺が来る前の点滴生活よりはマシですけどね」

 はぁ、とため息を吐いて側近の男はダイニングルームを後にする俺の背中を追う。
 この男と出会い側近に任命したあの日から、3年の月日が経っていた。明らかに周りと違う扱いをしているというのに、男が不幸になる事はなかった。……むしろ。

「……? どうぞ、ボス」

 扉を開け、立ち尽くす俺に首を傾げる男の姿にもしかしたらと湧き上がる希望を握りつぶす。この男を自分の側に置く理由は無く、気まぐれで暇つぶしのごっこ遊びにすぎない。
 無言で部屋の中に入り、いつものように無言でソファに座りぼんやりと点けっぱなしのテレビを見る俺に、男はふと改まって口を開いた。

「ボスは何で、俺なんか気に入ってくれたんですか?」
「くっだらねぇ質問」
「すみません」

 頭を下げた男の金色の髪を眺め、気まぐれに答えてやる。

「お前、死んだ兄貴に似てる。それに――…」
「……それに?」

 顔を上げた男の青い瞳から逃げるように視線をテレビの方へ移した。

「春千夜にも、チョットだけ似てるかも」
「――ハルチヨ?」
「幼馴染。2年前に死んだんだけどね……俺を追っかけて。馬鹿だよな」
「……ボス」

 咎めるように俺を呼ぶ男に胸元からペンダントを取り出し見せてやる。

「これに骨入ってるケド、見る?」
「いえ、遠慮しておきます。……幼馴染、だったら例の組織にも所属していたんですか?」
「そ。東京卍會――…俺の、全て」

 目の前のローテーブル上を埋め尽くす東京卍會の写真たち。その中からケンチンに総長の座を譲った際記念に撮った集合写真を選び手に取る。

「これが春千夜で、俺の隣にいるのが東京卍會のトップのケンチン。反対側にいるのがもう一人の幼馴染のバジで――」
「……ボスは、」

 写真の人物を次々指さす俺に男が口を開きかけ、しかし部屋に鳴り響いた着信音に口を閉じる。胸元から鳴り続ける携帯電話を取り出した男は、申し訳なさそうに俺に頭を下げた。

「すみません、ボス。少し席を外します」

 頷き、部屋を後にする男の背中を無言で見送る。手に持った写真をテーブルの上に戻し、現在の東京卍會の写真を代わりに手に取る。成長したみんなの顔を穴が開くほどに眺めて、小さく息を吐いた。いい未来だ。全ての元凶である俺が関わらない、幸福な未来のはずだ。


 §


 この世界に救いなど存在しない。俺の人生には苦しみしかない。分かっている。……とっくの昔に分かっていた。

『――…はい。事態は全て手はず通りに』

 耳にはめたイヤホンから、この3年の間で聴き慣れてしまった男の声が流れる。建物内に置いた人員配置から外国にいる構成員の所在地まで。男に気付かれないよう仕込んだ盗聴器は、この建物の周りを包囲する特殊部隊との会話内容を子細に俺に伝える。
 情報共有の話が続くイヤホンを耳から外し、ソファの隙間へと落とす。
 裏切り者だった。男は、俺の仲間ではなかった。穏やかな声も親しげな笑顔も全て演技だった。無害な振りをして、この組織に潜り込んだスパイだった。ぐるぐると衝動が臓腑の奥を這いずり回る。

「……どうして、」

 感情は全て、あの頃に置いてきたはずだったのに。ショックを受ける自分自身に動揺を隠せない。
 震える手を伸ばし、東卍創設当時に撮った写真を取る。誕生日プレゼント、一虎から贈られた手製の写真立て。その中で、幼い創設メンバー達に囲まれて穏やかな笑みを浮かべる真一郎。この写真を直視できるようになったのは、見ても真一郎の死の瞬間がフラッシュバックする事が無くなったのは、あの男を俺の側近にしてからだった。
 あいつを側近にしたのは気まぐれにすぎない。ごっこ遊びに使う道具にすぎない。そのはずだった。それなのに、それが、いつの間にか――
 扉の前に気配を感じ、咄嗟に横になり目を閉じる。

「すみません、少し話が長引いて……ボス?」

 声、足音、前に立ち顔を覗き込む気配、頭を撫でる暖かい手。近付かれて体が強張らなくなったのは、触られる手を振り払わなくなったのは、いつだった?

「珍しい、寝てる……」

 頭を撫でる優しい手つきに、柔らかな声に、俺を見つめる穏やかな表情に真一郎の面影を見ていた。キラキラと輝く青い瞳に、善良な性格に、会った事も無い花垣武道を重ねていた。
 馬鹿馬鹿しい。なんて愚かで、救えない。
 心を残さないと何度も言い聞かせながら、垂らされた蜘蛛の糸に惨めったらしく縋りついた結果がこれだ。
 信頼していた男は裏切り者で、この建物は包囲され、同志を集め一から作り上げた俺の組織は今こうして終わろうとしている。

「……少し待っていてください、ボス。必ずあなたを――」

 その言葉の続きを聞きたくなくて、目を閉じたまま寝がえりの振りをする。男の声が止まり、ふわりと体の上に何かをかけられる。
 扉が開閉する音の後、廊下の前から気配が消えた事を確認して起き上がる。
 体の上に乗せられた男のジャケットを振り払って床に落とし、ふらつく足で隣の執務室へ向かう。 

 無意味で身勝手な祈りで、一体どれだけの人間を巻き込んだろう。最初から、こうするべきだったんだ。胸の内の憎悪は存在不確かな神ではなく、自分自身へ向けるべきだった。周りに降り注いだ不幸は全部、俺のせいなのだから。これ以上の悲劇を起こさないため、全ての元凶である俺に出来る事はただひとつ。

 執務机の引き出しを開けて、そこからアンティークの拳銃を取り出す。
 ……いくら待てど、罪深い俺に天罰が下る事はない。
 シリンダーを開き、その中にゆっくりと弾を込めていく。
 息をするだけで罪が重なっていく。
 先ほどの部屋に戻る。
 この身にこびりついた罪を雪ぐ存在はない。
 部屋の電気がふっと消える。
 罪の重さに耐えかねて心が軋んでいく。
 轟音と共に建物が揺れた。
 贖罪の機会は訪れない。

 この世に神はいない。罪にまみれた俺に罰は降りない。救いは――…

 ドアの向こうが騒がしい。振り返り、手に持った拳銃をこめかみに押し当てる。けたたましい音を立てドアが蹴破られた。先頭に立ち、手に持ったIDカードをこちらに向ける男。その目が。俺の姿を認めた青い瞳が。強い意志を持ってキラキラと煌めくそれが見開かれて、

「……助けてくれ、タケミっち」

 引き金を引く瞬間。脳裏に浮かんだのは真一郎でも東卍の面々でもなく。与えられた記憶の中にしかいない花垣武道の姿だった。

 ドンと、鈍い音が響いた。





――2005年7月7日 日本 東京


「タケミっち、今日から俺のダチ、な」

 そう言って何故かひどく怯えるヒーローの肩を掴んだ瞬間、パチンと視界がはじけた。


 龍宮寺と別れた後、真一郎の思い出が残る部屋で一人考える。
 頭を駆け巡った記憶。ヒーローが来ないことを悟り、日本を出て。異国へ渡り根を張り巡らせ表舞台へ出て、そして――

「――へぇ。あいつ、CIAのスパイだったんだ。本国の特殊作戦群と連絡を取り合って暗殺決行、ね。
 なら、ロシアで起こす予定だった一般市民対象のテロ部隊に入れて、死体と一緒に証拠を残してメディアにリークして……はは、」

 ぐるりと衝動が渦を巻く。許してなるものか、すべて殺せと。
 内通者も密告者も裏切り者も、殺した国も殺す国も、ことごとく。
 一度通った道だ。前回の失態は繰り返さない。ルート短縮は容易、最短経路で表舞台に立つ。
 ああ、何処を巻き込もう。何処まで巻き込もう。人々の思想を、大国同士の思惑を、途上国の貧困を。利用して利用して利用して。
「第三次世界大戦、ABC兵器は全部使う」

 将来、平和の為に俺の元へ潜り込むあの男を戦火の薪として使い潰す。自身が戦乱の発端になると悟った時、あの裏切り者は一体どんな表情を浮かべるだろうか。記憶と共に植え付けられた憎悪が向かう。この世界と――…あの男のもとへ。
 俺の信頼を反故した裏切り者を決して許さない。何度世界を跨ごうと、何をしてでも絶対に。
 必ずこの手で、あいつを、殺す。

「嗚呼、何て楽しみ」

 正解だと言わんばかりに、臓腑の奥を渦巻く衝動は収束した。


 ―――この世は所詮、散りゆく泡沫にすぎない。天上には神も仏もなく、祈りなど無意味。救いに選ばれない世界など、燃え尽きてしまえ。








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