「四月一日、もう茶碗蒸し蒸し上がるよ。」
「おっ、サンキュ。そっちの柚子あんかけ出来てるか?」
「もちろん。やっぱり、百目鬼が貰って来る食べ物はいい出来なのね。柚子の香りがいつもよりいいから、すごく美味しく出来たよ。」
「まあ、あいつの気は誰よりも清いからな。まあ、気にくわねぇのは変わんねぇけど。あ、こっちの蟹あんかけも完成した。」
「その蟹も百目鬼が持って来たやつだから、新鮮さは文句ないね。」
「でも、この蟹の旨さを引き出したのはあいつじゃなくておれだから。」

昆布とかつお出汁が香り立つキッチンで。二人はのんびりと会話をしながらも、随分と手際良く手を動かしていた。今日二人が作った夕食は、昆布とかつおで出汁を取り、椎茸、鶏もも肉、かまぼこを入れたシンプルな茶碗蒸し。そして仕上げは三つ葉と、小皿に柚子と蟹、二つのあんかけを添えるのが二人が作る茶碗蒸しの鉄板だ。

「それにしても、この小花模様の器と木製の受け皿、この間の依頼の報酬で貰ったものだっけ?」
「ああ。随分見事だろう?厄介な依頼者からの厄介な依頼だったけど、ここまで見事な報酬を貰えれば、もう文句を言えねぇよな。」
「ふふっ…出ちゃってるよ、文句。女郎蜘蛛からの依頼でしょう?依頼に来た時、倉庫の日本酒も根こそぎ飲まれちゃったもんね。料理用のお酒もあれでなくなっちゃったから、また近いうちに買いに行かないと。」
「そういえばそうだったな。じゃあ明後日辺りにでも繰り出すか。」
「料理用のお酒が手に入ったら、ビーフシチューとか良くない?日本酒で牛肉の下ごしらえして、和風ビーフシチューとか…」
「いいな、それ。でもまずは、今日の茶碗蒸しを味わうとこからだろ。」

料理談義にひとまず区切りを付けた四月一日は、苦労して手に入れた器達に入れられた茶碗蒸しを四人分、おぼんへと移す。そして端にあんかけが乗った小皿と、追加のあんかけが入った瓶を乗せると、お腹を空かせた百目鬼とモコナが待つ居間へと足を向けた。

「じゃあおれ、これ先に運んで来るから。ご飯と味噌汁任せてもいいか?」
「大丈夫だよ。あと、小鉢に作り置きの南瓜のきんぴらと柚子大根の漬物も出しとくね。」
「ああ、助かるよ。じゃあさっさと仕事終わらせて、おれ達も熱いうちにご飯食べよう。」
「そうだね。今日の自信作の茶碗蒸し、美味しいうちに食べなくちゃ。」

今日のメインは、昆布とかつおで出汁を取り、椎茸、鶏もも肉、かまぼこを入れたシンプルな茶碗蒸し。柚子と蟹のあんかけを添えて。そして、真っ白なご飯にシンプルなお味噌。副菜は南瓜のきんぴらと柚子大根の漬物。二人がこだわり尽くして作った料理は、大切なひと達の笑顔に変わるのだ。


甘く、とろけるような

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