1 [ 1/27 ]



シュテルンビルト帝国は、二つの勢力によって二分されている。
一つは、海賊。もう一つは、それを取り締まる海軍警備隊。鏑木・T・虎徹はいわずと知れた大海賊であった。
虎徹は、不当に資金を溜め込んだ政治家や、国家の税を肥やしに違法で取引された船を襲っては市民に無償でその報酬を与えていた。海軍警備隊に所属する、最年少にして司令官の地位についたバーナビー・ブルックスjr.は、そんな彼をひそかに追っていた。バーナビーは腐れきった帝国の政治が嫌いだった。そんな彼にとって虎徹の行為そのものは、権力によって身動きのとれない自分の悲願を叶えてくれるものであった。
虎徹の賞金は日に日に跳ね上がってくものの、誰もが彼を捕らえることはできず形だけは平穏なものであった。しかし、そのな平穏もいつまでも続くとは限らず、ついに怒りに震える権力者は、バーナビーを呼びつけ「鏑木虎徹の確保」を命じた。
しかし捕まえにきたはずのバーナビーは逆に捕らえてしまう。
実際に見る虎徹は想像以上に野蛮で、彼はやはり「海賊」なのだ絶望するバーナビー。バーナビーは幼いころ両親を海賊の手によって殺されており、海賊に対してはいい気持ちはしていなかった。しかし、虎徹の評判や絶対に殺戮をしない事実に、心のどこかで「きっと彼は他の海賊と違う」と思い込んでいたのだ。
バーナビーは見目がよかった。白い肌に、柔らかい金髪の髪。透き通る翡翠の瞳。鍛えているし、男らしくはあるがその雰囲気はどこか中性的で、惹きつけるものがあった。過去幾度か、そういった「お誘い」を受けたことがあったが毎度低調にお断りしていた。
虎徹はバーナビーを気に入った。彼は、バーナビーを奥の部屋に閉じ込めて愛玩人形のように彼を愛した。無理矢理組み敷き、自分を罵倒する口をキスでふさぐ。いつしか抵抗することを諦めたバーナビーは、基本的なことには大人しく従うようになった。虎徹は素直になった彼が可愛くてしかたなかった。もともと、そこまで酷いことが好きではなかった彼は、バーナビーを船のなかでは自由に生活させ、自由に遊ばせ、一緒に酒を飲み、たわいのない会話をするようになった。時がたち、ある日気づく。
愛玩道具だったはずのバーナビーに、それ以上の感情が芽生えてしまっている自分。
虎徹は悩んだ。だが答えはすぐにでる。愛してしまったからには、無理強いはできない。バーナビーを解放する虎徹。しかし、バーナビーはその時点で虎徹に好意を少なからず抱いていた。


[*prev] [next#]



.