翌日、アルエの部屋を訪れたレイヴンだったが、部屋を何度ノックしても返事がないことに不安を抱いた。

「アルエちゃん?開けるよ…」

ノブを捻ると、呆気なく扉が開く。
だが、そこにはアルエの姿はなく、それどころかアルエの荷物すらも見当たらなかった。

「アルエ…?」

ベッドの横にあった小さなテーブルの上に紙切れが載っているのを発見し、手に取る。


―私という存在を認めてくれる人を探しに行きます。
今まで有難う御座いました。
たとえ、レイヴンさんが私ではなく、あの人の姿を見ていたとしても、私はレイヴンさんが好きでした。―



全ての文面を見終わる前に紙切れをぐしゃぐしゃに丸め、床に叩きつけてしまった。

「馬鹿だ、俺…」

女の子一人傷つけて、謝らないまま終わるだなんて、相当の馬鹿者だと、自分を罵る。
過去の女性にいつまでも執着して、自分を想ってくれていた人の気持ちを踏みにじって。
良い年こいた大人が聞いて呆れる…。

小さな部屋の中央に跪き、ありったけの声で叫んだ。
己の愚かさを恨んだ。

気が済むまで叫び、恨むと脱け殻のように床へと転がった。



(逢いたい、逢って、謝って、力一杯抱き締めて、それから…)



――“アルエ”を愛したい。



そう、心から誓い、そのまま瞼を閉じた。




――願わくは、これが夢であって、再び目を開けたときには彼女が目の前にいることを。



現実から目を反らして

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