「やっぱり、この人の代わりだったんですね」
“私”という存在を抹消され、レイヴンさんの中ではこの写真立ての人しか見えてなかったんだ。
「アルエ…」
「“誰”の姿を見て、呼んだのですか…?私は、“この人”なのでしょう?」
違う、と叫びたかった。
だが、過去の自分の記憶がそれを阻止する。
「ごめんなさい…、部屋、出ますね。勝手に見てしまって…ごめんなさい」
アルエは何度も謝りながら、部屋を足早に出ていってしまった。
一人部屋に取り残されたレイヴンは頭を抱え、その場に座り込んだ。
「違う、違うんだ…。アルエちゃんはキャナリじゃない、そんな事はとうにわかっていたのに」
――過去の俺の記憶が、否定させてくれないんだ。
アルエが消えた扉に向かって、レイヴンが謝罪の言葉を幾度も呟いた。
「ごめんね、アルエちゃん…」
重ねた面影