「やっぱり、この人の代わりだったんですね」



“私”という存在を抹消され、レイヴンさんの中ではこの写真立ての人しか見えてなかったんだ。



「アルエ…」
「“誰”の姿を見て、呼んだのですか…?私は、“この人”なのでしょう?」

違う、と叫びたかった。
だが、過去の自分の記憶がそれを阻止する。



「ごめんなさい…、部屋、出ますね。勝手に見てしまって…ごめんなさい」

アルエは何度も謝りながら、部屋を足早に出ていってしまった。

一人部屋に取り残されたレイヴンは頭を抱え、その場に座り込んだ。

「違う、違うんだ…。アルエちゃんはキャナリじゃない、そんな事はとうにわかっていたのに」




――過去の俺の記憶が、否定させてくれないんだ。




アルエが消えた扉に向かって、レイヴンが謝罪の言葉を幾度も呟いた。



「ごめんね、アルエちゃん…」



重ねた面影

- 62 -
PREVBACKNEXT
top鴉と兎
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -