「アルエちゃん、まだ?」
「ん…あと、もう少し…」
「おっさん、腰ヤバイ」
「も、もうちょっと…っ」

アルエを肩車したレイヴンの腰がガクガクと震える。
アルエの体重はさほど重いわけではないのだが、長時間肩車をしていると、流石に堪える。

「なん、で…そんなところにしまったの…」
「使わないと思ったから…って、レイヴンさんしっかり支えて下さいー!」
「も、もう、無理…死にそう」
「あああっ、だったら一度降ろして下さい!」
「ヤバイ、腰、ガクガクして身動きとれない」

レイヴンの身体が先程にも増して、プルプルと震える。
震えがアルエまで伝わっていることから、相当腰に負担がきているのだろう。




「ごめん、無理だわ」

ボソリと呟かれたと同時に、レイヴンが膝から崩れ落ちる。

「ひゃあああっ」

無論、肩車されていたアルエも床へと崩れ落ちる。
レイヴンが下敷きになったお陰か、アルエは怪我をせずに済んだが、下敷きになったレイヴンはガタガタと身体を震わせて悶えていた。

「アルエ、ちゃん…退いて…」
「え?あ、ごめんなさい!」

慌ててその場から退くと、よろよろとしながらレイヴンが立ち上がる。
ぐったりと気だるげな表情をしていたが、正面に見えるものを見て、がくりと項垂れる。

「アルエちゃん…」
「はい?」

レイヴンが力なく指す方を振り向くと、アルエまでも項垂れてしまった。



「どうすんの、これ…」

先程二人が崩れ落ちた振動が原因なのか、棚が倒れ、棚の中身や上に置かれていた物が散乱していた。

「あうー…」

「おっさん、一抜け〜」
「ちょお!?」

はい、さよならー等と言いながらレイヴンは手のひらをひらひらと振ってその場から颯爽と立ち去ってしまった。

「こ、これ、一人で片付けるんですかー!?」

レイヴンが去った方に向かって叫ぶが、返事は返ってくることはなかった。



――虐めだ…。



再び散乱した荷物を見下ろし、項垂れるアルエだった。



(うー、後で仕返しを…!)



アンバランス

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