CHAPTER 01 /
02「好きすぎてパンクしちゃう!!」


「姫〜!おばけふろしきの回収に来たよ〜!」
「あ、なまえちゃん」

相変わらず人質らしからぬ内装の牢を覗くと、姫はベッドの上ででびあくまのブラッシングをしている最中だった。 ブラッシングを終えたでびあくま数匹が私のところへやってきたので思わずぎゅーっと抱きしめる。

「ふかふかだぁ〜気持ちいいねぇ」
「むー!」

ふわっふわの毛に頬ずりをすると、でびあくまもスリスリと擦り寄ってくる。 あまりの可愛さにニヤニヤが止まらない。

「はぁぁぁ可愛いなあ、あくましゅうどうし様と良い勝負だよ」

そんなことを呟きながら牢の中に入ると、姫が倒したおばけふろしきが山積みにされている箱が目に入る。 物凄い数のおばけふろしきの残骸を目の前にして、自然とこれから蘇生地獄になるであろう上司の顔が浮かんだ。

「また派手にやったねー…あくましゅうどうし様、大丈夫かな…」
「なまえちゃんも蘇生できるんでしょ?」
「出来るんだけど、あくましゅうどうし様とは持ってる魔力量が違いすぎて、効率悪いんだよね…あくましゅうどうし様なら、すぐに蘇生出来ちゃうし、あの声で蘇生直後にお目覚めかな。 なんて言われたら、きゃー!!もうたまんないよね!!」
「……私、寝具の素材集めで忙しいから」
「ちょっと!待って待って!もうちょっとだけ、お話きいて!!お願い!!!誰かに話さないと破裂しちゃう!好きすぎてパンクしちゃう!!!」
「……」

姫の顔を見ると、また始まったよと言わんばかりのうんざりした表情。 今にも逃げ出しそうなので、腕にしがみつく。 だって!誰にもこんなこと話せないし!こうなれば、最終手段…

「じゃ、じゃあ!今度タソガレくんが使ってる冷却装置!こっそり部屋から取ってきてあげるから!」
「…!」
「目覚めてすぐに冷えたミルクが飲めるよ!!」
「レオ君の声、優しいよね」
「ふふっ!そうこなくっちゃ!!!」

ベッドの端に座り、口角をニヤリと上げて隣をポンポンと叩く姫。 変わり身の速さに思わず笑いがこみ上げる。 嬉しくなって、私は姫の隣へ勢いよく座りこんだ。

「この間、あくましゅうどうし様に届けなきゃいけない書類があったから、部屋に行ったんだけど」
「うん」
「ノックしても出ないから、ノブを回してみたら鍵が開いててね!そーっと忍び込んだの」
「へぇ」
「そしたらね、本を読んでたのかそのままソファで寝ちゃってて」
「う、ん…」
「しばらく寝顔を見てたんだけど、綺麗な寝顔見てたら、なんだかムラムラしてきてさ…我慢できなくって、おでこにチューしちゃった!!!!きゃー!言っちゃった!!姫!内緒だからね!」
「ん…」
「って、あら?姫?寝ちゃった?」

話に夢中になってる間に、姫は私の膝を枕にして眠っていた。 それに気づかないなんて、ほんと私ってあくましゅうどうし様のことになると周りが見えてないんだなぁ。

「でもいっぱい話せてよかった…いつもありがとね、姫」
「すやぁ…」

サラサラの髪を撫でると気持ち良さそうに手に擦り寄ってくる姫。 可愛いなあもう!!!!

「ふわぁあ、なんだか私も眠くなってきちゃった」

姫の寝息を聞いていると、眠気がやってくる。 少しだけ、一緒に眠っちゃおう。 寝過ごしてもきっと、大好きな上司が迎えにきてくれるから。

「おやすみ、姫」




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