CHAPTER 04 /
23「私がふと想像する未来には、」


「ここが…なまえちゃんの故郷…」
「ヴァンパイア・シティ…吸血鬼が暮らす街です!」

くすぐったそうに、ふふっと笑みをこぼすなまえちゃんの可愛らしさに、長旅の疲れなんてどこかへ吹っ飛んでしまう。 とはいえ、あまりに楽し過ぎる旅に大して疲れなど感じていないのだけども。
寝台列車で約1日かけて辿り着いたのは、なまえちゃんの生まれ故郷、『ヴァンパイア ・シティ』。 街の入り口が小高い丘になっていて、そこから街全体が見渡せるのだが、目の前に広がる景色の美しさに、私は思わず見入ってしまった。

「とても綺麗な街並みだね…」
「ふふっ、そうでしょう?この街並みは『魔界の絶景100選』にも選ばれているんですよ!」
「本当にとても綺麗で…いつまでも眺めていられそうだよ」

色とりどりの屋根が連なる大通りにはオシャレなアンティーク調の看板をぶら下げたお店がずらりと並んでいて、その窓からは暖かい灯りが漏れている。 石畳が続く街路の先には、大きな噴水のある広場があって、月明かりに照らされてキラキラと輝く水飛沫がなんとも幻想的だ。

「既にお気づきかもしれませんが…この街も魔王城と同じく、日が昇りません!吸血鬼の多くが日光を苦手としているので、日が昇らないこの地に街を作ったと言われています」
「なるほど…ん?でも『吸血鬼の多くが』ってことは、例外もあるってことかい?」

魔界の多くの地は朝が来ず、永遠の夜が続いている。 その環境は吸血鬼たちにとって、絶好の安全地帯となっているのだろう。 しかしなまえちゃんの言葉からすると『日光が苦手ではない吸血鬼がいる』ということになる。

「実は…吸血鬼の中でも上位種…『ドラキュラ』の通り名を受け継ぐ家系は、ある程度の日光なら影響を受けずに過ごせるんです」
「えっ!?『ドラキュラ』って…!」
「…御察しの通り、私の家系がそれに当たります。 真夏の砂漠や海なんかの強い日差しの中で、長時間過ごすことはさすがに出来ませんけど…日常生活程度なら素肌を出しても問題ありません!」
「そうだったんだね…私はてっきり、なまえちゃんも日光には弱いのかと…!」
「あはは…魔王城もずっと夜なので自分の特性のことなんて、すっかり忘れていました…!」

忘れていたことが照れ臭いのかポリポリと頬を掻くなまえちゃん。 彼女のまさか事実が判明し、私はつい驚いてしまう。 彼女が吸血鬼の中でも上位種にあたるということは、普段の生活から何となく感じてはいたけれど…まさか、かなりのエリートなんじゃ…!?

「でも、この特性のおかげで…夏の海もプールも!一緒に行けますねっ!」
「えっ?」
「ふふっ、今から夏が楽しみですっ」

唐突な彼女の言葉に、理解が追いつかない。 ニコニコと上機嫌に笑うなまえちゃんをポカンと見つめる私の表情は、さぞかし間抜けなことだろう…えっと、真夏の、海、プール……それは、なまえちゃんの…水着姿が見れる、ということで…そこまで考えてしまえば、自然と頭の中に浮かんでくるのはなまえちゃんのビキニ姿。 その姿に、思わずカアッと頬が熱くなってしまう。

「っ、!」
「あ!今、えっちなこと考えたでしょ?ふふっ、やらしいなぁ、レオ君は!」
「なっ!?そ、そんなことは…っ」

目敏く私の変化に気づいてくれることが、嬉しいような、小っ恥ずかしいような…そんな気持ちが湧き上がってくる。 またこの子は、私をからかって…!と、少し悔しくなって何か言い返そうと思うけれど、いたずらっ子のように楽しそうに笑うなまえちゃんに、そんな気持ちなんてすっかりと完全に失せてしまう。

「ハァ…なまえちゃんになら、どんなにひどいことをされても、本気で怒れる気がしないよ…」
「そんな孫を見るおじいちゃんみたいなこと言ってないで!私が間違いを犯した時はちゃんと叱ってくださいね?…レオ君のこと、頼りにしてるんですから!」

そう言って優しく微笑むなまえちゃんに、キュッと胸が締め付けられる。 本当にこの子は、どうして私の喜ぶポイントをこうも押さえているのか…やはりなまえちゃんには敵わないなあ。 なんて、改めて彼女にとことん弱い自分に気づくのだった。




「ここが、私の実家です!」
「…す、すごく、立派なお家だね…」

街の中へと移動した私たちの目の前には、立派な家…というよりも、もはや城…と言っても過言ではない建物がドンとそびえ立っている。 そのあまりの迫力に、私の緊張は増していくばかりで…握った拳に手汗がじわりと滲んでくるのがわかった。

「見た目は、その、かなり大きくて…初めて見た人は、びっくりしちゃうんですけど…あまり怯えないでくださいね…!」
「う、うん…、ありがとう、」

とは言ったものの、これほどまでの立派なお家…恐らくこの街で1番大きい家、だよなぁ…と考えて、ハッとする。 もしかして、なまえちゃんのご両親って…この街のかなりの権力者なんじゃ…!?そんなことを思った、その時。

「なまえ…?」
「えっ?…っお、お母さんっ!?」
「えっ!?」

後ろから聞こえる、穏やかな優しい声に私となまえちゃんはすぐさま振り向く。 そして、その声の主を目にした瞬間、なまえちゃんは驚いたように声を上げた。 えっ…い、今、お母さんって…っ!?!?

「ふふ、そんなに驚かなくてもいいじゃない。 家の前なんだから、私がいてもおかしくないでしょう?」
「そっ、そうだけど!まさか、出掛けてるとは思わなくて…!」
「今日はあなたたちが帰ってくるから、美味しいもの沢山作ろうと思ってね。 買い出しに行っていたのよ」

目の前で繰り広げられる親子の会話を、私は黙って聞くことしか出来ず、そわそわと落ち着かない。 このタイミングでの対面は完全に予想外で、たらりと冷や汗が流れるのが分かる。 しかし、いつまでも黙っているわけにはいかない…!そう思った私は、勇気を出して声を出した。

「あ、あの…!」
「あら…私ったら!ごめんなさいね、久しぶりに娘を見たら、つい…!」
「い、いえ!そんな、滅相もございません…!」
「ふふふっ、そんなに畏まらないでくださいな。 …あなたが、なまえの…」

ふふふと笑うその柔らかい仕草や表情が、なまえちゃんと重なって、何だか少し安心する。 少し落ち着きを取り戻した私は、自己紹介をするため、ゆっくりと口を開いた。

「は、はいっ、はじめまして…!魔王城の悪魔教会エリアを取り仕切っています、あくましゅうどうし…本名は、レオナールと申します。 なまえさんには、いつも支えられていて…」
「うふふ、レオナールさん。 そんなに慌てなくてもよろしいじゃありませんか。 詳しい自己紹介はあとにして、とりあえず、家に上がってください」
「っ、す、すみません…!気が利かず…!」

先走って挨拶をする私に、なまえちゃんのお母さんは優しい笑顔で笑いかけてくれる。 そして玄関の扉をガチャリと開くと、私たちに家の中に入るよう促してくれた。 確かに、こんな玄関先で立ち話するわけにはいかない…!と、私は素直に家の中へとお邪魔する。

「お邪魔します…」
「久しぶりの我が家だ〜!」
「ふふふ、…長旅で疲れたでしょう?とりあえず、荷物を置いて来たらどう?そのあと、休憩がてらお茶でもしましょうか。 お父さんも呼んでくるわね」
「そうだね!…それじゃあレオ君、私の部屋に行きましょうか!」
「う、うん…!」

『お父さん』その言葉にドキッと心臓が脈を打ち、思わずギュッと拳を握る。 『こっちです!』そう言って、先を歩くなまえちゃんの後を追いながら、気づかれないようにフゥと深呼吸をしたのだった。




「すみません、レオ君…!まさか母があんなタイミングで現れるなんて…!」
「そ、それは仕方ないよ!それに、私たちのために買い出しに行ってくれていたんだし…そ、それより!私の方こそ…失礼なところは無かったかな!?」
「そんな心配無用ですっ!失礼どころか、レオ君の好青年っぷりに、母もきっと驚いてますよ…!」
「そ、そうだと良いけど…」

なまえちゃんの部屋に着いた私たちは、それぞれの荷物を部屋の隅の方へ整頓しながら会話を続ける。 なまえちゃんが幼い頃から暮らしていたこの部屋にはとても興味があるけれど、正直今はそれどころではなかった。 この部屋を出たら、ついになまえちゃんのお父さんと…そう思うとそわそわと落ち着かない。 そんな私の緊張が伝わったのか、なまえちゃんはそっと私に近づき、ギュッと手を握ってくれる。

「レオ君…あの、緊張するなって言っても無理だと思うんですけど、…いつも通りのレオ君なら、父も母も兄も、絶対に好きになるはずだから…!」
「なまえちゃん…」
「偉そうなこと言って、すみません…っ!でも、私の家族は人を見る目はありますから…!レオ君みたいに素敵な人、気に入らない訳がないです!」

必死になって私を励まそうとするなまえちゃんを見ていると、心がポカポカと暖かくなってきて、不安な気持ちが薄らいでいく。 …私がここで、不安になっている場合じゃない。 なまえちゃんに安心して見守ってもらえるように、しっかりしなければ!心の中で、そう固く決心する。 心配そうにこちらを見つめるなまえちゃんに向き直り、私はしっかりと彼女の瞳を見つめて、口を開いた。

「ありがとう、なまえちゃん。 おかげで自信が持てたよ。 なまえちゃんの恋人として、しっかりした所をみせなきゃ、お父さんに怒られてしまうね」
「…その時は、私が父を怒ります!!」
「ふふ、それは頼もしいな」

力こぶを見せる仕草をするなまえちゃんに思わず、ふふっと笑みがこぼれる。 本当に愛しくて堪らなくて、何にも代えられない大切な存在。 そんな私の気持ちを少しでも、彼女の家族に分かってもらえたなら、きっと大丈夫だろう。 そんな考えが浮かぶと、自然と気持ちが楽になってくる。

「それじゃあ…行きましょうかっ!」
「ああ…行こうか…!」

よし!と心の中で気合いを入れる。 なまえちゃんを見れば、彼女も私と同じようにグッと握りこぶしを作り意気込んでいて、更に私のやる気もアップする。 お互いに視線を合わせコクリと頷き合ったのを合図に、ご両親が待つ部屋へとふたり一緒に向かった。




「お父さん、紹介するね!こちらは魔王城悪魔教会エリアのボス、あくましゅうどうしさん。 私の尊敬する上司であり、えっと、恋人でもあって…沢山お世話になってる人なの!」
「はっ、はじめまして…!なまえさんと、お付き合いさせて頂いております、あくましゅうどうし…本名はレオナールと申します…!本日は突然の訪問にも関わらず、お時間を頂きまして、本当にありがとうございます…」
「………」

黙ったままこちらを見つめる鋭い眼光。 そのあまりの鋭さに、冷や汗がたらりと背中を伝う。 先程、なまえちゃんの部屋を出て、応接間に辿り着いた私たちを待っていたのは、どっしりとソファに座るひとりの男性。 彼を見て嬉しそうに『お父さん、ただいま!』と告げるなまえちゃんの声に、ドキリと心臓が脈打って、無意識のうちに姿勢を正す。 そして、先ほどの自己紹介を始めたのだが…

「(うっ…ち、沈黙が、怖い…っ!!!な、何か気に触ることをしてしまったのか…!?)」

私の自己紹介にも反応せず、ただただこちらを見つめ続けるなまえちゃんのお父さんに、どんどん焦りが募って行く。 もちろん、バチリと合った視線をこちらからそらせるはずもなく…私もそのまま彼を見つめ続けることしか出来なかった。

「(そ、それにしても…この親にしてこの子あり、とはまさにこの事だな…)」

やはりなまえちゃんのご家族というだけあって、こちらをジィッと見つめる彼は、とても精悍な顔立ちをしている。 目鼻立ちのハッキリした整った顔つき、口元と顎には立派な髭を携えていて、それがまた男らしさを際立たせていた。

「(カッコいいな……まるで彫刻のようだ…)」
「……レオナール、と言ったか」
「っ、は、はいっ!」
「……」

あまりに整った容姿に思わず見入ってしまった私を呼ぶ、重く低い声。 その声の存在感に、ハッと我にかえる。 彼は慌てて返事をする私をまたもやジッとしばらく見つめると、ゆっくりと口を開いた。

「…お前のことは、先代の魔王、ウシミツからよく話を聞いている。 魔王城でもかなりの実力者のようだな」
「えっ!?う、ウシミツ様のお知り合いなんですか…!?」
「アイツとは腐れ縁でな。 今でもたまに飲む仲だ」
「そ、そうなんですね…!!」

まさかの事実に驚きを隠せない。 ウシミツ様と知り合いだなんて想像もしなかった…それに、私の存在を知ってくれていたなんて…!!あまりに予想外の展開に、頭がパンク寸前である。

「しかし…アイツから聞いた話では、もう少し荒々しいイメージだったのだが…」
「えっ!?あっ、そっ、それは…っ」
「ふふっ、それって昔のレオ君のことだよね?」
「っ!?、ちょ、ちょっとなまえちゃん…っ!?」

慌てふためく私の様子に、ふふふと楽しそうに笑うなまえちゃん。 何を呑気に笑っているのか…!と少し恨めしくなるが、そんなことより…!まさか私の黒歴史まで把握されているとは…っ!!

「(あの黒歴史は若気の至りだと、きちんと説明しなくては…!!)あっ、あの…!」
「まあ、どちらにせよなまえが選んだ男だ。 元よりそこに口を出すつもりはない」
「えっ!?」
「それに…」

弁明しようと発した声は、彼の言葉によって遮られる。 今の言葉が確かなら…私となまえちゃんの交際を、認めてくれる、ということ…?戸惑う私を察してか、彼は話を続けてくれた。

「こんなにも幸せそうにしている我が子を見て交際を反対できるほど、私も鬼ではないからな」
「お父さん…」
「娘を、なまえを…これからもそばで支えてやってくれ」

なまえちゃんを見つめるお父さんの瞳には、たっぷりの愛情が込められている。 今までなまえちゃんを本当に大切に育て、慈しんできたのが一目瞭然だった。 そんな手塩にかけた愛娘を任せてくれるのだ、私もちゃんと、気持ちを伝えなくては…!

「っ、ありがとうございます…!私が必ず、娘さんを…幸せにします…!」
「レオ君…っ!!」

私の言葉に感動したのか、うっすらと涙を浮かべるなまえちゃん。 その姿がいじらしくて可愛くて…無意識に柔らかい髪を撫でてしまった。 そんな私たちの様子に、お父さんはフッと笑みを浮かべると…

「くくっ…それは、我が娘を嫁にもらうということか?」
「えっ!?」
「っ!?、ちょ、ちょっとお父さんっ!!何でそうなるの…っ!!レオ君が困ってるでしょ…っ」

まさかの言葉に、頭が真っ白になる。 なまえちゃんを嫁に…それは、彼女と結婚する、ということ…

「私たち、まだ結婚の話なんてしてないんだから…っ!変なこと言わないでよ、お父さ…
「あ、あのっ、私はっ!なまえさんと…結婚を前提にお付き合いしていきたいと思っています…!!」
「えええ!?…れ、レオ君っ!?」

私の考えに余程驚いたのか、大声を出すなまえちゃんには悪いけれど…私は自分の正直な気持ちを話そうと、言葉を続けた。

「具体的に結婚をすると考えていた訳ではありません…だけど、私にとってなまえちゃんは、無くてはならないとても大切な存在で…なまえちゃんが笑えば嬉しい、なまえちゃんが泣いていれば力になってあげたい…なまえちゃんがいない生活なんて、今では想像も出来ません」
「レオ君…」
「私がふと想像する未来には、必ずとなりで幸せそうに笑うなまえちゃんがいます。 もし、お父様に許して頂けるなら、そしてなまえちゃんも私と同じ気持ちを持ってくれているのなら…結婚を前提に、お付き合いしてくれませんか…?」

腰を曲げてなまえちゃんへと手を差し出す。 まさかこんなタイミングでこんなことを言うことになるとは思ってもみなくて、ドクドクと心臓が痛いくらいに音を鳴らしている。 だけど、後悔はしていない。 本当に私には、なまえちゃんとの未来しか考えられないのだ。 …こんなタイミングでの私の告白をどう受け取っただろう?嫌がられるかもしれない…そんな不安な気持ちが溢れてきた、その時。

「っ、レオ君のバカ…っ!!!!」
「えっ?」

叫ぶと同時に握られる手。 …え、えっと…手を握ってくれたから、OKってこと、だよな?、あれ?でも、バカって…
彼女の言葉と行動がチグハグで、思わず困惑してしまう私をよそに、なまえちゃんは言葉を続ける。

「そ、そんなに嬉しいこと、こんなタイミングで言うなんて…っ!反則です…っ!!」
「っ!、じゃ、じゃあ…って、ど、どうして泣いてるの!?なまえちゃん!?」
「うぇっ、…だ、だって、嬉しすぎ、てっ…っ!」

瞳にいっぱいの涙を溜めるなまえちゃんの姿に、私の胸は相も変わらずきゅんっと疼いて、好きな気持ちがどんどんと膨らんでいく。 …こんなに大好きで、愛おしくて、可愛くて…大事な大事な女の子、他に見つかるわけがないじゃないか。 そう、頭の中で考える。 目尻に指を添えて、そっと涙を拭ってあげると、今度は嬉しそうにはにかむ笑顔が、本当に愛しくて仕方ない。

「…私なんかで良ければ、結婚前提に、お付き合いさせてくださいっ」
「っ、なまえちゃん…っ!ありがとう、絶対に幸せにするよ…!!」
「くくっ、くはははははっ!!…まさか初対面の親を前に、このようなことを言いだすとは!中々度胸があるではないか!…よし、気に入った!!!お前たちの婚約を認める!!今後は好きにするがよい」
「お父さんっ、ありがとうっ」
「ありがとうございます…!!」

『めでたいめでたい』と豪快に笑うお父さんにつられて、私たちにも笑顔がこぼれる。 お茶の準備が終わったのか、なまえちゃんのお母さんが部屋に入ってきて、何事かと目を丸くしていたけれど、何となく状況を察したのか柔らかく笑う姿が目に入る。

「(あぁ、なまえちゃんも、なまえちゃんの家族も…皆優しくて温かい…この人たちに出会えて、本当に私は幸せ者だな…)」
「時に、レオナール」
「は、はいっ」
「…私も若くはないからな。 孫の顔は来るだけ早く見せるように」
「ま…っ!?」
「ちょ、ちょっと!気が早すぎるよっ!!お父さん…っ!!」
「うふふ、素敵ねぇ。 男の子も女の子も、どっちも見たいわね、あなた」
「そうだな。 頑張るのだぞ、ふたりとも」
「あ、あはは…」
「っ〜〜!!もう!!!お父さんもお母さんもいい加減にしてーーっ!」

なまえちゃんの叫びが応接間に響き渡る。 私も、これには思わず苦笑いをするしかなく、あははと声をもらす。 ふと、ご両親を見てみると、ぷんぷんと怒るなまえちゃんをとても愛おしそうに見つめていて…そのふたりの姿に、こんな夫婦になれたらいいな、と心の底からそう思ったのだった。




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