CHAPTER 03 /
10「…っ、あぁぁぁ!!もう!!」


「皆、お正月はゆっくりと休むことが出来ましたか?今年もこうして皆で新年を迎えることが出来て、とても嬉しい限りです。 それでは、魔族のさらなる繁栄と皆様のご健勝を願って、乾杯!!!」
「「「「かんぱーーーいっ!!!!」」」」

私の乾杯の音頭を合図に皆が一斉にエールを飲み始める。 すぐに私も手元のジョッキをグイッと傾け、エールが喉を通っていく感覚を味わった。 日々の疲れが溜まった体にキンキンに冷えたエールが染み渡る。 こんなに美味しいお酒は久しぶりだ。 そんなことを考えて、なまえちゃんのことが頭に浮かぶ。 チラリと姫とホリ=ゴ・ターツに入っている彼女を見ればチビチビとオレンジジュースを飲んでいて、その姿に少し罪悪感を感じながらもホッと胸を撫で下ろした。

「( よし、ちゃんと私との約束を守っているようだ… )」

なまえちゃんと交わした約束…それはこの新年会でお酒を飲まないということだ。 彼女はこれでもかと言うほどお酒に弱い。 度数の低いジュースのようなカクテルやチューハイでも、数口飲むだけで酔ってしまう。 ただ酔うだけなら、何も問題はない。 そう、ただ酔うだけ、なら。

「( 酔うだけじゃ、済まないんだよなぁ…なまえちゃんは… )」

頭の中で去年の新年会の様子を思い浮かべ、ハァとため息を吐く。 去年だけでは無い。 一昨年もそのまた前の年も…思えば酒の席で、彼女はいつも周りを色んな意味でハラハラドキドキさせていた。
彼女の酔い方…それはとても男の庇護欲を掻き立てるのである。 酔ってぽやんとした仕草や、甘えたような話し方、赤らんだ頬……思わず守ってあげたくなるような隙が出来てしまうのだ。 更に彼女の厄介なところは、酔うと記憶が飛んでしまうことである。 覚えていないが故に、毎年同じような状況になってしまい何人もの男が彼女に堕ちてしまう。 普段は仕事をテキパキとこなすしっかり者の彼女が見せるギャップにコロリとヤられてしまうのだ。

「(去年までは私がとやかく言える立場ではなかったけれど…さすがに恋人となった今回ばかりは止めないと…っ!!あんなに可愛いなまえちゃんを他の男に見せるなんて…私には耐えられないっ!絶対に阻止しなければッ!!)」

グッと拳を握りしめ固く決意する。 私も今日は乾杯のこの一杯だけにして、さっさと彼女の元へ向かおう。 そう思い、もう一度ジョッキをグイッと傾ける。 ゴクゴクとエールを飲みながらチラリとなまえちゃんの方へ視線をやると何故か近くにいた睡魔をポーッと見つめていて、私は思わずブフッと噴いてしまった。

「うわっ!!汚ッ!!!突然どうしたのだ!?あくましゅうどうし!!!」
「(な、何故、彼女は睡魔を見つめているんだ…!?心なしか頬が赤らんでいるような…)」
「…おい?我輩の声が聞こえていないのか!?…も、もしかして、歳で耳が遠くなっているんじゃ…!?」
「( もしかして、私に黙ってお酒を飲んだんじゃ!?…いや、あのグラスに入っているのはオレンジジュースのはず… )」
「…完全に聞こえていないようですね」
「か、改!!す、すぐに補聴器の準備を…!!」
「しょ、承知いたしました!!」
「( と、とにかく!!酔っていようがいまいが、彼女が何か行動を起こす前に止めないと…!! ) 魔王様すみません!!!そこどいてください!!」
「痛っ!?な、何をそんなに急いで…」
「彼女がまた何かしでかしそうなので、行ってきます…!!」
「お、おい!待て!」
「あくましゅうどうし!貴様、耳は大丈夫なのか!?って、おい…っ!!」
「…本当にあいつはなまえのこととなると周りが見えていないな… 我輩、心配になってきたぞ…」
「…同感です」

魔王様と改くんが何やら叫んでいたが、今はそれどころでは無い…!ごめんなさいと彼らに心の中で謝罪し、彼女の元へと急ぎ足で向かった。




「見過ぎだよ、なまえちゃん…ッ!」
「ひゃっ、」

彼女の背後から手を伸ばし、いまだに睡魔を見つめている視界を遮る。 突然の出来事に彼女は驚きの声をあげるが、そんな声さえも愛しくて誰にも聞かせたくない…なんて馬鹿な事を考えてしまう。

「レオ君…?ど、どうしたんですか?」
「それはこちらのセリフだよ…っ!ど、どうしてそんなに睡魔を見つめていたんだいっ!?」

すぐに私だと気付いてくれたことが嬉しくて浮かれてしまいそうになるが、本題を思い出し彼女に問いただす。 焦る気持ちから思わず語尾が強くなってしまったけれど、彼女はそんなことを気にも止めず答えてくれた。

「えっと、お酒をあんなに気持ち良さそうに一気飲み出来て羨ましいなぁと思って…」
「…えっ!?あ、そ、そうだったんだね、ごめんっ、私はてっきり…!」

てっきり、睡魔の飲みっぷりに見惚れていたのかと…そう思っていた私は彼女の言葉に拍子抜けしてしまう。 そして自分のあまりの余裕の無さに恥ずかしさが込み上げてきて、カアッと体が熱くなった。 私はまたひとりで暴走を…ッ!!!そんな私の葛藤もつゆ知らず、彼女はそっと私の手に触れ、あろうことか指まで絡ませてきた。 なっ、ななな、彼女は、一体何を…っ!?

「ねぇレオ君、『てっきり』、どうしたの?」
「えっ!?あ、いや、その…っ!」
「…私が睡魔さんに見惚れてるって、思った?」
「…ッ、!」

楽しそうな声色で図星を突く彼女に、私は何も言えず黙り込んでしまう。 これじゃあ、はいそうですと言ってるようなものじゃないか…!!彼女は何と答えれば良いか分からずまごまごとする私の手を、自らのお腹へとグイッと引き寄せる。 不意を突かれた私はされるがまま、彼女を後ろから抱きしめるようにホリ=ゴ・ターツへと入り込む体勢となってしまった。

「ッ!?!?!?」
「ふふっ、レオ君大っきいから、私の体すっぽり収まっちゃった」

まさにすっぽりと胸の中に収まる彼女の体がとても華奢で、きゅううんと胸が締め付けられる。 …な、なんだこの可愛い生き物は…!?本当に同じ魔物なのか…!?そんな馬鹿な考えが私の頭の中に浮かんだその時。 透き通るような真っ白いうなじが目に入り、思わずゴクリと唾を飲み込む。 こ、この体勢は、非常にまずい…!!!まさに男の憧れのシチュエーションだけれど…理性が働いている内に早く離れないと…!!私は煩悩をかき消すかのように、彼女のうなじから目を逸らし、離してもらうよう訴えた。

「ッ、!!あ、あのなまえちゃん?、こ、この体勢はッ、ちょ、ちょちょっと、まずいというか…っ!ほ、ほら!皆も見ているし!ねっ?…っ、なまえちゃん、?」
「…私はレオ君ともっとくっついていたいのに、レオ君は違うの?」
「っッッなまえちゃん!?!?」

涙目で見上げてくる彼女のあまりの扇情的な表情とどろどろに甘い言葉に、ガンッと鈍器で殴られたような衝撃が頭に響く。 な、何だ今の破壊力は…ッ!!もはや魔王城最大の攻撃力なのでは…!?しかし彼女の攻撃はまだ終わらない。 体力がほぼゼロ状態の私に、彼女は容赦無く追い討ちをかけてくる。

「レオ君が離れるなら、私がくっつくもん!離さないんだからっ」
「なまえちゃぁぁんッ!?!?」

くるりと向きを変えて膝の上に跨り、ギュッと抱きしめてくる彼女に、私は思わず彼女の名前を叫んでしまう。 逃がさないとでも言うようにピタリと密着する体がびっくりするほど柔らかくて、良い匂いで…あまりの刺激の強さに、頭がクラクラする。

「…レオ君の大きな体、だいすき。 男の人なんだなぁって、ドキドキしちゃうもん」
「なまえちゃんッッ!?、こ、これ以上からかうつもりなら、流石の私もっ、怒るよ!?」

これでもかというほど甘えてくる彼女に、流石の私も我慢の限界だった。 これ以上は…っ!私の方がどうなってしまうか分からない!!!!今ならまだ歯止めが効く…!そう思い決死の覚悟で彼女を止めようと口調を強くするが、

「怒っちゃ、ダメです!めっ!」
「うぐっ…ッッ!!(あーーー!!!もうッッッッ!!!『めっ!』って何!?可愛いが過ぎるよッ!?!?)」
「何をやっとるんだ、お前さん達は…」
「あ、師匠」

私が限界を超えてしまいそうになったその時。 睡魔のあくび混じりの間の抜けた声が聞こえ、私はすんでのところでなんとか持ち堪える。 もう少し遅かったら、私は我を忘れて何をしでかすか分からなかった。 ありがとう…睡魔…っ!!!そう心の中で、彼に感謝する。 しかし安心したのも束の間、ホリ=ゴ・ターツの方を気怠げに見つめている奴が次に発した言葉は、私を再び不安の渦へと引き戻した。

「お前さんが飲んでたそれ、酒じゃないか?」
「へ?」
「えっ!?!?」
「ぬっ?」

それと奴が指差したのは、先程までなまえちゃんがオレンジジュースを飲んでいた空のグラスだ。 これが、お酒、だって…?そんなはずは…!!そこまで考えて、ふと先程までの彼女の行動を思い返す。 …やたらと甘えん坊で、話し方もいつもの敬語じゃなく砕けていた。 それにスキンシップも多くて…ま、まさか、…本当に、お酒だったのか!?

「これ、お酒なの?」
「おそらくカクテルだな、カシスかブロッサムか…とにかくオレンジで割ってあったんだろう」
「だ、大丈夫かい?君はお酒に強くないはずなのに…っッッ!?あ、あの、なまえちゃん!?」

飲んだ本人も気付かないほど、アルコールが薄いはずなのに、お酒だと指摘された途端に酔いが回ったのか緩みきった表情を見せる彼女に、私は内心頭を抱える。 それでもお酒に弱い彼女が心配で、声を掛けたその瞬間。 あろうことか彼女は私に抱き着いてきて、私はまたもや大声で彼女の名前を叫んでしまう。

「こんな時しか独り占めできないから、今のうちに堪能しておきますっ!」
「っッッ!君はまた、そんなことを…っ!す、睡魔っ!た、頼む!私には(この状況がご褒美過ぎて)彼女を振りほどくことが出来ないんだ…ッ!代わりにお前が…!!!」
「おーおー、お熱いことで。 お前さん、心の声がダダ漏れだぞ?オレ達はお邪魔みたいだし、退散するとしようか、姫」
「睡魔!?お前っ、ちょっと、待って、」
「ウン、そうだね。 レオ君…ヘタレで年甲斐も無く恋に浮かれちゃって空回りしてるレオ君には、またとないチャンスなんだから…君もしっかり堪能しとかないと」
「何ひとつ間違ってないのが辛い!!!そうなんだよっ!?最もな意見なんだけどね…ッ!?ひ、姫からも、なまえちゃんに離れるよう言ってくれないかい…?こ、これじゃあ、私が(なまえちゃんのあまりの可愛さに)耐えられない…っ!!!」

私の必死の我慢などお構いなしにギュッと腰に腕を回し抱き着いてくる彼女に、私はまた理性が飛んでしまいそうになる。 近くで私たちを見守っていた睡魔と姫に助けを求めるが、ふたりはこの状況を楽しんでいる様子で全く当てにならなかった。 …他人事だと思って…っ!!!そうして騒いでる間も彼女の柔らかな体は私に密着し続けていて、抱きしめ返したい衝動に駆られるも、グッと堪える。 …そんなことをしてしまっては、本当に歯止めが効かなくなる…!!私は彼女に触れないように、不自然なくらいに両手を上げる体勢を取った。 しかし、そこであることに気付く。 …何だかなまえちゃんが大人しくなったような…?不思議に思ってチラリと視線を彼女へ向ける。 私を抱きしめる力は変わらずそのままだが、俯向き黙ったまま動かない。

「……」
「あ、あれ?なまえちゃん、?どうしたんだい?も、もしかして、気分が悪くなったんじゃ…!?」
「レオ君の、ばか…」
「えっ、?」

心配になった私は声を掛けるが返ってきたのは予想外の言葉で、思わずあたふたと慌ててしまう。 そんな私を上目遣いで見上げる彼女に、ギュンッと心臓を鷲掴みにされたような衝撃が走る。 そして甘えた声で、一言、

「レオ君、ギュッてして?」
「へっ!?な、なななな、そ、そんなこと、」
「そこで抱きしめられないなんて、男が廃るぞー」
「ソウダソウダー」
「退散したんじゃないんかい!!!ちょっと黙っててくれるかなっ!?そこの睡眠マニアたちは!!!!…なまえちゃんっ、あ、あの、こういうことは、こんなところでするものじゃないし、ね?」

『ギュッてして?』彼女の口から発せられたドロドロに甘い言葉が、頭の中で何度も再生される。 本当に体が溶けて無くなってしまうんじゃないかと思うような破壊力で、またもや理性が飛びそうになったが、野次馬ふたりの声に突っ込みを入れることでなんとか冷静を保つことが出来た。 一体、なまえちゃんは何度私の理性を奪いに来るのか…!!しかしそんな私の努力も虚しく…

「どうしてそんなに嫌がるんですかっ!冷静なんですかっ!私ばっかり、欲求不満なんですかっ!」
「な、っ!?」
「もっと、レオ君に触れたいのにっ、レオ君は違うの…??」

プツン。 理性の糸が切れる音が脳内に響く。 今までの誘惑でボロボロにほつれていた糸は、潤んだ瞳で見上げてくる彼女の言葉で、いとも容易く切れてしまった。

「…っ、!!!あぁぁぁ!!!もう!!!」
「ひゃっ!?」
「おお…!」
「おーおー、やっとか、レオにしては中々やるじゃないか」

考えるより先に体が動く。 ガバッと彼女を力一杯抱き締めて、私の胸の中に閉じ込めた。 ここから出したくない。 誰にも彼女の可愛い姿を見せたくない。 そんな歪んだ独占欲がチラチラと見え隠れする。

「んぐっ、れ、レオ君、くるしっ」
「…君が悪いんだよ?あんなに私を煽るから…」
「…ひゃっ、!」

一度切れてしまった理性の糸が、簡単に紡がれるはずも無く。 今までのお返しと言わんばかりに、私は彼女の耳元でソッと囁く。 私の声が好きだと言う彼女はカクンと腰が砕け私の胸元に寄りかかって来た。 そんな普段は見れない彼女の姿に少し優越感に浸るもまだ余裕があるのか、彼女はとんでもなく甘えた声で、愛の言葉を囁く。

「レオ君、すき、だいすき」
「っ、ハァァァ、本当に君は…っ!」
「…?ど、どうしたの?」

『どうしてそんなに嫌がるんですかっ!冷静なんですかっ!私ばっかり、欲求不満なんですかっ!』
先ほどの彼女の言葉が頭の中で再生され、ハァとため息が出る。 嫌がる?冷静?彼女の目には私がそのように映っていたなんて…そんな訳があるはずないのに。

「…私が冷静に見える?いつもいっぱいいっぱいなのに…それに欲求不満なのは、私も同じだよ」
「えっ?」
「毎日君に触れたくて、仕方ないのに…我慢してるこちらの身にもなってほしいくらいだよ」
「…ッ!そ、れって、」
「っ、!?」

喜びを隠し切れず、ふにゃりと笑う彼女のあまりの可愛さに、私はまたもや彼女を胸の中に閉じ込める。 …こんなトロトロに緩みきった表情を誰にも見せるわけにはいかないッ!!!

「…だから、嫌だったんだよ。 そんなに可愛い表情、私以外に見せたくないのに」
「っッ!?(今日のレオ君、積極的過ぎて…もう、キャパオーバーだぁ…)」
「なまえちゃん…っ!?」

ボソリと呟いた本音は、彼女にはしっかりと聞こえていたらしく砕けていた腰も完全に力を無くし、立っていられない状態になってしまった。

「こりゃ酔いが相当回ってるなぁ…起きたらお前さんの言葉、全部忘れてるんじゃないか?」
「ニヤついてる場合か!!!…なまえちゃん!?大丈夫かい!?」

ふざける睡魔を一喝し、彼女の名前を叫ぶ。 彼女は私の呼びかけに安心したかのように力無く微笑むと、そのまま意識を手放し眠りについた。 スゥスゥと穏やかな寝息を立てる彼女にホッと安心するが、例年と同じような展開になっていることに気付きガックリと項垂れる。 今年は絶対に、酔った彼女を誰にも見せないつもりだったのに…!!!

「…これじゃあ、意味がないじゃないか」
「意味はあったと思うぞ?」
「え?」

私の呟きを聞いていた睡魔が横槍を入れてくる。 何を根拠にそんなことを…無責任な言葉に言い返そうと口を開きかけるが、睡魔はそのまま話を続ける。

「これだけお前さんに夢中なのが分かったんだ。 ライバルも随分減ったんじゃないか?」
「そんなに簡単に減るなら、苦労はしないさ…」
「まぁどちらにせよお前さんはたっぷり彼女を堪能できて、良かったじゃないか」
「なっ!?私がどれだけ我慢の限界と戦ったと思って…!!」
「ほ〜?その戦い、最後には簡単に負けていたようだが?」
「ぐっ…ッ!!」

ニヤニヤとこちらをみて笑う睡魔に思わずイラッとするが、奴の言葉が図星過ぎて何も言い返せない。 悔しくて睨みつける私を、気にも止めず奴はまた口を開く。

「よく眠っているようだし、部屋に運んでやったらどうだ?」
「言われなくても、そうするよ…!!」

私は半ば投げやりに答え、なまえちゃんを抱き抱えて立ち上がった。 私たちが騒いでる間に眠くなったのかホリ=ゴ・ターツで眠っている姫が目に入る。 姫のことは頼んだよ、と睡魔に伝えその場を後にしようと足を踏み出した、その時。

「レオ」
「…なんだい?」

睡魔が私を呼び止める。 その声に振り向き、続きを促すが…相変わらずニヤニヤとこちらを見て笑っている奴に嫌な予感がして、思わず身構えてしまう。 そんな私に気付かないはずがなく、奴は楽しそうな表情でまた口を開いた。

「くれぐれも送り狼ならんようにな。 酔った相手に手を出すなよ?」
「お前なあ…ッ!!!!!!」

私の叫びは虚しくも、ガヤガヤと騒がしい食堂の中に消えていく。 怒る私の様子に肩を震わせ笑いを堪える睡魔をジトリと睨み、背を向け歩き出した。
『送り狼にならんようにな』…奴の言葉に悶々としながら、私は食堂を後にするのだった。



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