三輪秀次(4)と幼馴染(5)

長閑な町並みが広がる三門市。河川敷から吹く風は、とても心地が良いです。そこを少し通り抜けると、にぎやかな住宅街が広がっています。此処に、とっても仲良しな男の子と女の子がいました。

「なまえ、おっきくなったら、アイドルになるー!!」

ルンルンと駆けてきて、楽しそうにお歌を歌っている女の子が見えました。女の子の名前はなまえちゃん、5歳。明るくて元気いっぱい!好奇心が旺盛で色々なことに興味津々です。いっつもニコニコ笑っていて太陽のような子。見ているこっちが笑顔になりますね。

<<かわいいー!!>>
<<元気やなあ>>

「しゅうちゃーーん!!おはよーー!!」

そんななまえちゃんは、何かを見つけて一目散に更に加速していきます。向かった先にいたのは、なまえちゃんよりも、ちょっぴり小さな男の子がいました。この子の名前はしゅうじくん。なまえちゃんより1つ年下の4歳です。しゅうじくんは、人見知りが激しいらしく、あまり他人に懐きません。だけど、真面目でとても優しい男の子なんだそうです。

「なまえちゃん……、えと、あの、お、おはよう…」
「うん!おはよう、しゅうちゃん!!」
「……!うん」

もじもじと俯いた後、意を決して放たれた挨拶。それには、太陽のような笑顔が返ってきました。しゅうじくんの顔は真っ赤です。

<<おやおやおやおや???>>
<<初恋かなー??>>

今回は、こんな可愛らしい2人のおつかいを追いかけます!!







おつかいの天気は、生憎の雨模様。こころなしか、しゅうじくんのテンションはどんよりしています。対するなまえちゃんはと言えば……

「あっめあっめふれふれかあさんがー♪」

こんな雨の中なのに、とってもルンルン。アイドルになりたいと豪語していましたが、天職かもしれませんね。

「しゅうちゃん、行くよー!!」
「うん」

カッパを着て、手を繋いで、さあ出発です。
おつかいの内容は、こんな天気なので、新しい傘を買いに行くということになりました。今2人が持っている傘は、少し脆くなっているらしく、丈夫な物に買い換えます。おつかいを提案するときに、2人のお母さん達は少し不安だったようですが、なまえちゃんもしゅうじくんも何処吹く風。お母さん達の心配を余所に、2つ返事で了承してくれたそうです。これには、お母さん達もびっくりでした。「しゅうちゃんがいるなら、だいじょうぶだよ!」「おれもなまえちゃんといっしょならいいよ」此処に来ても、仲良し2人組は息ピッタリです。

「ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷ、らん、らん、らん!」

行く道でなまえちゃんの歌声が轟きます。にぎやかな雰囲気が苦手そうにしていることが多いと言われるしゅうじくんですが、そんななまえちゃんをイヤがる素振りは全くなく。どこか楽しそうです。

<<なまえちゃんだから、良いんだろうねー>>

何の問題も無くスーパーに辿り着くことが出来ました。傘の売り場も分かっているのか、ぐいぐいとしゅうじくんの腕を引いていくなまえちゃん。なまえちゃん、もう少しやさしく引いてあげて!我々スタッフの心配は届きません。

「うわっ、」

べたん。派手な音を立ててしゅうじくんが転んでしまいます。あーあ、言わんこっちゃない!

<<だいじょうぶー?>>

でも、しゅうじくんはとっても強い男の子でした。

「わあああ、ご、ごめんね、しゅうちゃ、」
「うん。べつにいたくないもん」
「うえええ、でも、おひざあかくなってる!!?」

泣き言1つ言わないしゅうじくん。真っ青な顔をして謝るなまえちゃん。これでは、どっちが転んでしまったのかわかりません。

<<おとこのこだね。つよいねー!>>

今度は、しゅうじくんがなまえちゃんの腕を引きます。そして、ようやく傘の売り場に辿り着きました。

「ねえ、しゅうちゃん。ほんとうにいたくない?」
「うん」
「ほんとにほんとにほんとにほんと?」
「ほんとにほんとにほんとにほんと!」

<<これは、おっきくなったらモテるわあ>>

「ね、はやくえらぼ」

しゅうじくんは、色とりどりの傘に視線を向けます。男の子が好きそうな車のデザインがしてあるものや、女の子が好きそうなハートの柄。いろいろな柄の傘がありました。その中から2人が選んだのは…

「「これにする!!」」

色違いの、ニコニコマークがついた傘でした。ピンク色を選んだのがなまえちゃん。しゅうじくんは水色です。上手にお会計をすることができました。ここまでは完璧です。帰りは、早速買った傘を使ってみることにしました。嬉しそうにニコニコ笑うなまえちゃん。対するしゅうじくんは、なんだか不満そうにしています。あれ?どうしたんでしょう?

<<えー??>>

「しゅうちゃん、やっぱり、おひざいたい」
「ちがう」
「なら、どうしてげんきないの?」

なまえちゃんは、しゅうじくんのちょっとした変化も見逃しません。

「これあると、なまえとおい、やだ」

しゅうじくんは、そう言って差していた傘をたたみます。ああ、傘を差すとなまえちゃんと手が繋げなかったようです。どうやら、ちいさい2人には、片手で傘を差すのが難しいみたいですね。カッパを着ているので、傘を差さなくても大丈夫です。しゅうじくんは、それがわかっているからか、そのまま、先へと進んでいきます。

「まってまってー!」

それを慌てて追いかけるなまえちゃん。でも、新しい傘が気に入ったのか折りたたむことはしません。その代わりに、なまえちゃんは、自分が差している傘の中にしゅうじくんを入れてあげます。

<<相合い傘だー!!>>

仲睦まじく同じ傘の中に入って、帰路へと急ぐ2人の背中は、とても逞しく見えました。まだ、雫が降り注いでいるのにもかかわらず、我々の瞳には、空が七色に輝いているように見えました。



After Story→あれから13年



20220509




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