木兎光太郎(5)と幼馴染(4)
東京都にある長閑な住宅街に、とっても仲良しな男の子と女の子がいました。
「よーっし、行くぞー!!」
声高らかに駆けていく男の子の名前は、こうたろうくん、5歳。とってもお調子者で少し目立ちたがり。お姉さんが3人いて、甘やかされて育ったのか、ちょっぴりわがままなところがあるそうです。だけど、とっても優しい男の子だとご両親は胸を張って教えてくれました。
「ま、待ってよー……」
そんなこうたろうくんとは対照的に。小さく呟いて、周囲を警戒するようにキョロキョロ見渡しながら、こうたろうくんの後ろを駆けていく女の子がいます。この子の名前はなまえちゃん。こうたろうくんよりも1歳年下の4歳です。内気で怖がりななまえちゃん。何をするのもこうたろうくんの後ろをくっついて歩いて行きます。
「あれー?なまえちゃーーん?」
「……こ、こうたろうくん」
「いたー!なまえちゃーーーん」
「ま、待ってってなまえ言ったのにっ。こうたろうくん、いなくなって、……う、うえっ」
<<あー、泣いちゃうー!!>>
「ご、ごめん、なまえちゃん…」
「うわああああああああんっ」
「ご、ごめんねごめんねえっ!」
行く前から、大丈夫でしょうか?今日は、この2人のおつかいを追いかけます。
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おつかいの内容は、なまえちゃんのおばあちゃんがやっている畑に、大根をもらいに行くというものになりました。畑までの道のりは、ほとんど一本道で分かりやすいです。車の通りも少ないので安全です。体力のあるなまえちゃんとこうたろうくんは、すぐに畑まで辿り着きました。ここまではスムーズです。ただ、問題が1つありました。
「……お、おもーい、」
おつかいの品である大根を、なまえちゃんのおばあちゃんが奮発してくれたところまでは良かったんですが、5歳と4歳にとっては、かなりの重量です。
<<あーあー……>>
こうたろうくんは、まだなんとか持てているようですが、なまえちゃんは、引きずっています。なまえちゃん、そんなことしたら、大根が傷んでしまいます!それに、
「……およよ?」
<<あーーーーーーーー…>>
地面を引きずっていたせいで、大根を入れていたナイロンの袋が破けてしまいました。立ち止まるなまえちゃん。こうたろうくんの名前を呼びます。どうしよう…ママに怒られちゃう…。なまえちゃんの瞳が不安そうに揺れていました。ああ、泣いちゃう。泣いちゃいますよ、こうたろうくん。
「おおー!!あの雲ドーナツみたいだあ!!」
<<聞いてーーーー!!??>>
こうたろうくんは、そんななまえちゃんに全く気づかず、唯一の曲がり角を曲がっていってしまいました。行くときは、しっかり手を繋いでいた2人。しかし帰りは、両手で大根を抱えないといけなかったので、手は繋いでいません。スタッフは慌てて二手に別れました。
「ふっふふーん♪ふっふーん♪」
鼻歌交じりに歩くこうたろうくん。何か忘れてませんか?後ろを振りかえるだけで良いんですよ?とっても、ルンルンでとうとう駆けだしていくこうたろうくん。いつもは、此処でなまえちゃんが泣くのに。こうたろうくん。しっかりしてください。
対するなまえちゃんは……
「ヒックヒック、うえええええええんっ」
やっぱり泣いていました。こうたろうくん!!はやくきづいてくださーーーーーい!!
ずっと泣き続けるなまえちゃん。しかし、いつまで経ってもこうたろうくんは来てくれません。
<<ええー…>>
<<嘘でしょ、こうたろうくん!>>
スタッフ達も頭を抱えました。そして、話し合いをはじめたスタッフたちは、今回は手を貸すことに決めます。1人の女性カメラマンが、こうたろうくんの元へと歩きはじめました。
「こんにちは!ぼくえらいね!”ひとりで”お出かけ?」
「ううん!なまえちゃんと一緒にね!おつかいに行って……?っ、!?」
あれ、なまえちゃん???ぽかん、とお口を開けて。何度か目をゴシゴシと擦りました。そして、パチパチと瞬きを繰り返します。でも、何度目を凝らしても、いるはずの存在がいません。
<<気づいた!!!>>
みるみるうちに顔が真っ青になっていくこうたろうくん。
「なまえちゃあああああああんっ」
全速力で来た道を戻っていくこうたろうくん。その速さにカメラマンはついていけません。ですが、こうたろうくんが向かっている先には、なまえちゃんがいるところです。そこには、なまえちゃんを追っているカメラマンがいます。みなさん、それまで、ご辛抱下さい。
「なまえちゃあああああんっ」
「うええええんっ、こ、こう、た、ろうく、うええええ」
「あーあーあーあーあー!ごめえええん!!ほんとうにごめええええん!!」
辺りには無残にも散らばる大根たち。破れている袋。泣きじゃくるなまえちゃん。パニックを起こすこうたろうくん。もう現場は大惨事です。これはもう無理かな?と思ったところで、VTRを見ていたおばあちゃんがやってきました。
「ごめんね、重たかったねえ…」
「「おばあちゃああああああんっ」」
「ああー、よしよし。よしよし…」
おばあちゃんは、自分が愛用している手押し車を持ってきていました。これに大根を入れて持って帰りと言います。2人は、おばあちゃんがどうやって家に帰るのかを心配しました。
「これがないと、おばあちゃんお家帰れないよ?」
「いんや、大丈夫だよ」
気のせいでしょうか。1人カメラマンがおばあちゃんと目が合った気がしたそうです。
「ほれ、おつかいがんばっておいで」
おばあちゃんのその言葉に頷いた2人。2人で手押し車の持ち手を持って、一緒に押します。おばあちゃんは、この後言いました。おばあちゃんは、この後、カメラマンの1人に家まで送ってもらいました。そして、我々は反省しました。みなさん、おつかいに出す場合は、軽い荷物にしてあげましょうね!!
20210416
After stoy→あれから13年