孤爪研磨(5)と幼馴染(5)

都内にある長閑な住宅街に、とっても仲良しな女の子と男の子がいました。

「おっはよー♪」

ルンルンとスキップをしながら現れたのは、苗字なまえちゃん、5歳。明るくて楽しいことが大好きな女の子です。最近は、しっかりしてきているそうで、お母さんのお手伝いを率先してしてくれるそうです。

「………」

そんななまえちゃんを黙ってジッと見つめている男の子がいます。この子が孤爪けんまくん。なまえちゃんと同じ年の5歳です。けんまくんは、少し内気で物静かな男の子。あまり手はかからないそうですが、お母さん達はお友達が少ないことを気にしているんだそうです。明るくて活発な女の子と内気で物静かな男の子。今回は、ちょっぴり正反対だけど、とっても仲良しなコンビの大冒険を追いかけます!!







お母さん達は、おつかいの内容をどうするかとても悩みました。ただの買い物なら、けんまくんが頷くわけがないと思っているそうです。「じゃあ、ごはんいらない」と言い出しそう…。とけんまくんのお母さんは頭を抱えていました。それを苦笑いで「なんとかなるわよ」と励ますなまえちゃんのお母さん。子供だけではなく、お母さん同士も正反対なのかもしれません。ウンウン悩みながら頭を抱えるお母さん達。その時、なまえちゃんのお母さんが「なまえが絶対行くって言いそうなことがいいんじゃない!?」と声を上げました。

「えーー!?おかあさんたち、おみまいいけないの…」

明らかにがっかりした声を上げたのはなまえちゃん。お母さんたちは、この日幼稚園の役員会議が入ってしまいました。けんまくんのお母さんも、なまえちゃんのお母さんも、今年度は幼稚園の役員です。そもそも、2人のお母さんが、そこで仲良くなったから、子供達も一緒に居る機会が増えて仲良くなっていったのです。

「どうして?」
「役員だから仕方ないのよ。なまえは良い子だから分かってくれるでしょう?」
「でも、おばあちゃんたのしみにしてたよ?なまえもおばあちゃんにあいたいのに…」
「1人だと危ないし怖いでしょ?」
「うう…」

シュン…と俯くなまえちゃん。なまえちゃんのお母さんは、更に声を大きくして言います。

「だれか一緒に行ける人がいたら良かったのにねえ…」

そして、ちらりとけんまくんの方へと視線を向けました。先程からけんまくんは、静かにジッと、その様子を見守っていたのです。お母さん達は、もう一押しだと頷き合います。

「……なまえ、ひとりでいけるもん」

そのとき、今にも泣き出しそうな顔でなまえちゃんが呟きました。でも、なまえちゃんのお母さんは了承してくれません。なまえちゃんの目からは、とうとう涙がこぼれ落ちてしまいました。その途端、けんまくんが立ち上がってなまえちゃんの方へと歩み寄ります。

「なまえちゃん、泣かないで…」

オロオロとした様子で、なまえちゃんのお顔を覗き込むけんまくん。

「なまえね、ヒック……、おばあ、お、おばあちゃんとやくそく、した、のにっ……」

実はなまえちゃんは、今日、どうしてもおばあちゃんの元へと行かないといけない理由がありました。今日は、なまえちゃんのおばあちゃんの誕生日です。闘病生活を送るおばあちゃんを、少しでも元気づけたいと、この日のために手作りのプレゼントをお母さんと一緒に作っていました。どうしても、それを渡したいなまえちゃん。でも、なまえちゃんのお母さんが1人で行くことを許してくれません。

「……おれも、いっしょじゃだめ?」

泣きじゃくるなまえちゃんを抱きしめたけんまくんが、なまえちゃんのお母さんに問いかけます。

<<おおおおおおおおおお!!>>
<<男を魅せるところだ!!けんまくん!!>>

欲しかった答えが、ようやくけんまくんから出ました。2人のお母さんたちは、ほっと胸を撫で下ろします。そして、なまえちゃんのお母さんが満面の笑みで呟きました。

「そうね。けんまくんが一緒なら、お母さん安心だな」







2人のおつかいは、意外とスムーズに進みました。活発で、どんどん先へと進んでいくなまえちゃん。対して、とっても慎重で、じろじろと周りを観察するけんまくん。

「あっるこー♪あっるっこー♪わたしーーは、げんきーーー♪」
「なまえちゃん、まって」
「あっるくのーーだいすきーー♪どんどん、いっこうー♪」
「もう…なまえちゃんっ…」

焦ったようになまえちゃんの腕を引くけんまくん。その横を、チリンチリンとベルを鳴らした自転車が勢いよく通り過ぎていました。けんまくんが、なまえちゃんの腕を引かなかったら、もしかしたら……。そう考えると、ゾッとしてしまいます。

<<危ないなあ、あの自転車>>
<<周りをよく見てないなまえちゃんもダメだけど、自転車も悪いよね>>
<<けんまくん、えらいなあ…>>

「……ご、ごめ、け、けんまくん、」
「うん」

けんまくんは、スッとなまえちゃんの前に手を差し出します。不思議そうに首を傾げるなまえちゃん。

「おてて…つないでいこ…」
「!!うん」
「あとちょっと、おうたうるさい」
「……え、」

<<けんまくん!?それ言ったらいかん!!!>>

「なまえちゃんのうたは、おれだけのだもん…」

<<………>>
<<なんちゅう殺し文句や!??この子、本当に5歳か!!?>>

「ちっちゃいこえならいいの?」
「うん。なまえちゃんのうた、すき…だから…」
「なまえはね!けんまくんの声すきだよ!!けんまくんもいっしょにうたおー!!」
「それはやだ」
「えええええええ」

けんまくんの素晴らしいボディガード力のおかげで、2人は何事もなく病院に辿り着くことが出来ました。なまえちゃんは、おばあちゃんにおかあさんと一緒に作ったバースデーカードと膝掛けをプレゼントしました。おばあちゃんは、とってもうれしそうにしていたそうです。それから、間もなくして、おばあちゃんは退院しました。なまえちゃんのおばあちゃんのこれからの健康をお祈りすると同時に、この正反対の仲良しコンビが、すくすくと成長していくことを、我々は願っています。



After Story→あれから12年


20220323






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