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※救済
本来「デートB」の後に更新するはずだったお話です。
下書きのまま更新忘れたのと今更入れるのもなってことで拍手での更新です。







突然お化けが出てきて驚いたくらいで、なんとかお化け屋敷も終え出口へとやってきた私達。
ブザーが鳴らなかったのはずっと手を繋いでいてくれたから。
外に出た瞬間、暗かったからなんとか正気を保てていたのに明るくなった時繋いでる手を直視してしまう。

「……」
「結構長かったな」
「そ、そうね……どうもありがとう」

手を放さそうとすると、零君は力を入れてそれを止める。

「零く」
「2週目行く?」
「……い、行かない!」
「ははっ」

2回目なんて心臓保たない。
笑って零君は手を離すと、出口にいたスタッフさんへ腕輪を外し渡す。

手を繋いでしまった。
まだ手汗とかひかないくらいにはドキドキしてる。
私は何歳だ一体。初めての恋じゃあるまいしなにこれ。

フードコート行くよ、と零君が歩き出し私は慌ててその後を追いかけた。





お昼時ということもあり、フードコートは結構混雑していてハンバーガーを購入するために並ぼうとしたら、席取っておいてと言われたので空いている席を探して待つことになった。
なんか凄いデートみたい。手を繋いだりしちゃって。
こうなるともっと、もっとという気持ちが湧き上がってくる。

今日しかないから、もっと零君と話したい。
もっと零君に触れたい。ドキドキする気持ちの中にもっと触れていたいという気持ち。

好きって自覚してしまうとこんなに気持ちが膨らむんだ。

「お待たせ」
「ありがとう。あっ、お金いくら?」
「必要ない」
「駄目よ!チケット代だってさっき受け取らなかったじゃない。
私は割り勘派よ!」

ハンバーガーを持って戻ってきた零君は向かいに座る。
お金を渡そうとしたら拒否られてしまう。ここのチケット代も払うって言ってるのに零君が2人分一気に払ってしまった。
そのため、お財布を出しで強引にお金を渡す。

「強引だな」
「駄目よ。お金は大切。
私は奢ってほしくてここにいるわけじゃなくて、零君と遊園地楽しむためにいるの。本当はここ私がご馳走する番」
「……」
「でも受け取らないだろうから、せめて私の分」

デートできるだけでも嬉しいのに、更にお金出してもらうのは嫌だから。
絶対に引かないと分かったのか、零君はしょうがないね、とお金を受け取った。

「……やっぱり頑固だ。松田の言う通り」
「それなら零君も頑固じゃない」
「今日はデートなんだろう?デートならカッコつけたい男の気持ちを察してほしいものだよ」
「そんなの、女だってカッコつけたいわよ。
デートというのは対等な関係でしょう?お互いが出しながらデートを楽しむのもいいじゃない」
「対等な関係か。確かにそうだね」

ハンバーガーを食べながら、周りはカップルや家族連れがみんな楽しそうに談笑している。
こんな平和な日常、久しぶり。みんなで夏に海行った以来かもしれないわね。

「……なんか、いつもの日常が嘘みたい。こんな平和な時間」
「そうだね。就いている仕事が仕事だから」
「多分私がこうやって楽しめるようにって……陣平がフォローしてくれてるんだろうなぁ」
「……」

何か緊急なことがあったり、そんなのも陣平がフォローしてくれてるんだろう。
直接聞いてるわけじゃないんだけど、陣平ならきっとそうなんだろうなって。
でもきっとそれを言ったら、いつものツンデレが発動するの。
そんなことねぇーよって。
照れる陣平が頭に浮かんで、ポテトつまみながら笑ってしまう。

「そのおかげで零君と遊園地に来れたんだもの、今度飲み行ったら奢ってあげなきゃ」
「そうだね、松田をもてなそう」

この時間がずっと続けばいいのに。
26歳のまま、今この時が。

そうしたら、救済も考えずただこうして零君と楽しく。

はっ、いけないいけない。
今日は全て忘れてデートを楽しむんだった。
気を抜くと考えてしまう。もう癖ねこれは。

「零君、料理はやってる?」
「ああ。結構レシピも増えてきた」
「そう……私も自炊ちゃんとやらなきゃ。最近ついついコンビニで済ませちゃうのよね」

忙しいを言い訳にコンビニでご飯買って済ますことが多くなって。
ついでにビールも。
私より忙しい零君はちゃんと自炊してるんだから見習わないとね。

「こう、時短レシピとかない?電子レンジだけでできるとか」
「そうだな……そろそろ白菜が美味しくなる時期だから、白菜と豚肉を交互に挟みタッパーに詰めてお鍋のようにやってみたらどうだ?」
「ああ、ミルフィール鍋!」
「ミルフィール鍋?」

首かしげる零君に、ここではもしかしてまだミルフィール鍋ってないの?
確かに原作軸で考えるとそうかも?
今まだ初期だものね、ここって。

「ほら、ミルフィールみたいに重ねるってことで」
「ああ、確かにそうだね。1人前を電子レンジ可能なタッパーに詰めて冷凍し、それを温めるだけにしておくと便利かもしれない」
「なるほど、確かに」
「白だし、昆布だし、カツオだし、色々な出汁で作れば結構飽きないよ」
「そっか。食材が同じなら出汁やタレとか変えればいいわよね」

さすが零君。

「他にもセロリの浅漬けとか簡単で美味しいよ」
「……セロリ」
「嫌なのかな?」
「とんでもない!いやぁ、セロリ推してくるなぁと思って」

嫌じゃないの、嫌じゃないんだけどね。
隙あらばセロリ推しだから。
ジト目向けてくる零君に慌てて謝る。

「ごめんごめん、本当にセロリ大好きなんだなぁって!」
「……」
「……ごめんね?」

不貞腐れる零君に手を合わせて謝る。
そんな不貞腐れる!?

「……怒った?」
「……」
「……どうしたら許してくれる?」

零君はチラッと私を見てくる。

「君が今度は僕に料理してくれないか」
「え?」
「君の手料理をご馳走してくれるなら許す」
「……手料理」
「ああ。どうせならセロリ料理で」
「……」

零君に手料理を振る舞う。

「……そうね。じゃあセロリ料理を調べておくわ!」
「じゃあ約束」

零君は小指を差し出して微笑む。

ーーー約束

「……うん、約束」

小指を絡めて指切りをする。
手料理を振る舞う、それが叶うことはあるだろうか。




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