リン、カイ
2012.12.17.Monday
彼は微笑んだ。大丈夫だよ、と。一緒に行こう、と。差し伸べられた手は暖かで。裏切ると知っていて取り続けた自分は取らないよりもっと悪質だった。優しすぎる彼を傷つけたくなどないのに。
「いいんだ。私は……。」
そう言って彼はまた微笑んだ。
「君がやるべきことをしてくれ。」
そう言って無理に口角を上げる。彼を裏切っているのは自分自身。知っていて、なお手を差し出し続けた。彼が取ると知っていて。ーーさようなら。二度と会うこともないだろう。毅然と振り返った副官の背を見つめ続けることは出来なかった
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