love fool






鍵を鍵穴に差し込もうとした時、ドアが僅かに開いているのに気付いた。

思わず、眉間に皺が寄る。出掛けに、ちゃんと施錠して出た記憶はあるので、考えられるのは……。


「ちょっと、真子!ドアは、ちゃんと閉め……!」

ドアを押し開け、スニーカーを蹴り上げるように脱ぎ捨てて、ずかずかと部屋に上がる。と。

「寝てるし」


ベッドの上、雑誌を広げたまま眠りこけている真子。

ギターを部屋の隅に、そっと下ろし、ベッドの脇に ぺたりと座り込む。腕の下に敷いている雑誌をそっと引き抜いて。

アジトで居眠りしてる姿も見てるけど、あたしのところで寝てるのが一番 気を許してる、なんて思うのは自惚れだろうか。


……子供みたい。

くすっと笑って、さらさらの前髪を撫でる。半分 口をあけた無防備な寝顔。いつまででも眺めていたいとこだけど……。

「今のうちに、お風呂入ってくるか」

真子が起きたら、一緒に入るとか言い出しかねないし。……真子と一緒だと、くつろげないし。



   *   *   *   *    
 


バスボムを放り込んだお風呂に長々と浸かって、バスルームから出てきたら真子は まだ眠っていた。

……疲れてるのかなぁ。

「ま、いっか。今のうちに……」


一応、真子に背を向けて床に腰を下ろすと、ボディローションのキャップを開ける。

ホワイトデーのプレゼントだったバスローブを控えめに肌蹴て、甘い匂いのローションを首から胸元へと軽くマッサージしながら塗る。

最初は、背後で寝ている真子を気にして こそこそしていたものの、そのうち起きる気配がないことに安心して、小さく鼻歌すら歌いながら手足を伸ばす。バスローブは、かろうじてウエストに引っかかってるだけだ。


と、不意に、ボディローションの香りで、すっかりリラックスしていた あたしの首筋に触れる熱い手。

「……ええ匂いやな」

完全に真子の存在を失念していた あたしは、慌てて腰まで落としていたバスローブを上に引き上げようとしたが、それも真子の手で押し止められる。

くすくすと低い笑い声が、やけに耳元で響く。背後でベッドの上に起き上がる気配。そして、伸びてきた腕が あたしを抱き上げた。

既に腰に纏わりついているだけだったバスローブは、ベッドの足下に取り残された……。

 
「匂いは甘いけど、舐めても甘いんかな」

「そんな訳……」

否定の言葉を言い終わらないうちに、舌のピアスが首筋をなぞる。

裸のままで真子の腕の中に納まっている あたしとは対照的に、ネクタイまで締めたままの真子。けれど、いつものスタイリッシュな姿とは違って、寝起きのせいか、緩んだネクタイと くしゃっと乱れた襟元。髪も、僅かに乱れている。だけど……。


きっと、ずっと裸同然の姿でいたから熱が出たんだ。寝起きで、だらしない姿のはずの真子が妙に艶っぽく見えて、真っ直ぐに顔が見られない。

それを裏付けるように小さなくしゃみをした あたしを真子は慌ててシーツにくるむと、ネクタイを投げ捨てながらニヤリと笑って言った。

「風邪ひいたら いかんから、俺が あっためたろ」


…………ベタベタやん。

心の中で呟いたツッコミに、真子の口調が移っていることに気付いて苦笑する。

次に顔を上げた あたしが見たものは、近付いてくる真子の唇。素直にそれを受け入れると、真子の背に回した腕に力を込めた。



(2010.04.22. up!)



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