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今日はほんま久しぶりにクロエに会う。

中1の頃初めて会って、跡部の双子ということもあってか話す機会も多かった。
1年の頃はクラスも同じで、クロエもうるさいのが好きじゃなかったから一緒にいても静かで、でもその静かさは嫌な感じじゃなくてどちらかというと居心地が良かった。
そしたら次第に惹かれていって、普段は綺麗なのに笑ったら可愛ええな、とかあのアイスブルーの瞳にまっすぐ見つめられたら鼓動が速くなるのを感じたり、もうクロエの一挙一動が愛しくなっていった。
でもクロエは跡部の双子で、正直告白とかは迷ってた。
そん時はまだ隣で笑ってくれてたらええな、って思うくらいやったから。
でもやっぱりそんなんじゃきかんくなってしまうよな。

それは1年の頃で、俺は東京に来て、クロエは日本に来て、初めての学校行事である体育祭の準備期間だった時。
氷帝は夏休み明けて9月末に体育祭がある。
文化祭は11月やで。
受験生からしたらちょっとあれかもしれんけど、ほとんどの生徒がそのままエスカレーターで高等部に上がるし、外部受験の奴も最後のイベントやからって気にするのも居らん。
で、クロエは跡部同様1年んの頃から副会長しとったから準備期間中は遅くまで残ってるときもあった。

その日は部活終わりに教室に忘れ物したの思い出して取りに行ったんや。
9月なだけあって6時になると日も暮れるころで夕日が隠れようとしとった。
教室に入ればまだ誰か残っとってびっくりしたけど、それが#!#やって分かったら生徒会のことかな、と。

「クロエ?」

「え?あ、忍足」

「何してんこんな時間まで」

「ちょっと確認作業」

クロエは今日提出された資料を確認して書き忘れなんかが無いかチェックしとったらしい。
俺はクロエの隣の自分の机に手を突っ込んで忘れた教科書を引っ張り出してからクロエの前の席に腰かけた。

「どうしたの?」

「もう終わるやろ?一緒帰ろうや」

手元を見れば残り数枚になっていたし、もう暗くなる。
まぁクロエなら迎えの車でも呼んどるかなって思ったけど本音は少しでも一緒に居たかったから。

「宍戸とかは?」

「あぁ、俺忘れ物取りに来てん。やから先帰らせた」

「そう、じゃあついでに本屋さん付き合ってくれない?」

「ええよ。参考書?」

「そうなの」

どうやら今日は最初から本屋による予定だったらしく迎えはいらないと言っていたそうな。
なんやラッキーやな。
そっからはクロエの作業の邪魔せんように喋らず見とった。
丁度クロエを夕日が照らして金髪が赤く染まった。
俯くクロエの白い頬に長い睫毛の影が出来ている。
なんかそれ見てたらめっちゃ独占欲というかこんな神秘的な彼女誰にも見せたくない、渡したくないって思って気づけば頬に手を添えていた。

「?忍足?」

「なぁクロエ」

「なに?」

顔を上げたクロエはじっと俺の目を見て小さく首を傾げた。
その行為がとんでもなく可愛くて、ほんまどうしようもない。
これはダメやなと悟った。

「俺、クロエのこと好きやねん」

「...ん?」

「正直こんな好きになるとは思わんかってんけど、もう好きすぎてどうしようもないねん」

「え、あ、おしたり..が?」

「そう。やから俺と付き合ってくれん?」

そう言えばクロエは元々大きい目を更に見開いて驚いていた。
小さくてぷっくりしとる口もゆるく開いていて、なんやろな、無意識?
キスしとった。
でもクロエも俺んこと好きなんちゃうかなーみたいな節は多々あったから出来たことやで?
いやほんまに。

クロエの唇は思っていた通り柔らかくてふにふにしとった。
軽くのつもりが俺の意思とは反対に唇は離れるどころかもっと深く、というように荒くなっていく。
息が苦しくなったのか頬に添えていた俺の手をぎゅっと握るクロエに頬が緩むのが分かった。
可愛ええ。
やっと離せば少し息の上がったクロエが頬を赤く染め潤んだ瞳でこっちを見てくる。

「なぁ、返事は?」

きっと今俺の顔はとてもだらしないことだろう。

「、私も、おしたり好き...」

普段の凛とした姿からは想像出来ひんくらい弱々しく、小さな声だったけど俺まできちんと届いた。
普段とのギャップにもやられて俺はおもっきり抱きしめたったわ。

それから今現在まで続いている。
でもクロエから高校は立海に行くと聞いたときは心底驚いた。
しかも神奈川に引っ越すと。

会えへんやん!

事情を聞けば曾お祖父さんの遺言で仕方なく、らしい。
まぁクロエ立海好かんって言うてたしな。
自ら行くわけないか。跡部とも離れ離れになるし。
あいつらほんまシスコンブラコンやから。
俺あまりにもクロエが跡部大好きやから昔軽く嫉妬したことあるし。

クロエ居らんなって寂しいけど、クロエが望み、俺らの目標である全国大会優勝の為にみんなで練習に励んでいた。
クロエはクロエで遺言通り生徒会長にも就任し実家のプロジェクトのことなんかもあり色々大変らしい。
やからほんまに中々会えへんけど、今日みたいに会える日の為にお互い頑張ってる。


「クロエ!」

「いらっしゃい侑士!」

ほんま、一生離されへんわぁ〜。

mae ato
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