咲柚美が氷帝に来て1日も経っていないのに自分の許嫁だという噂が出回っていて正直驚いた。
まぁどうもしないが。
咲柚美に許嫁であることを口外しないように言ったのは何も面倒なことになるからではない。
騒がれたって放っておけば良いだけの話。
周りに騒がれることには慣れているからなんて事無い。
唯の気まぐれだ。

もう放課後になるが咲柚美とは一言も会話していない。
授業が終わる度クラスに集まる人だかりから逃げるように咲柚美は何処かへ消えていたし、昼休みは俺が教室に居なかったから咲柚美が何をしていたかなんて知らない。
干渉するつもりはない。
あいつが何をしてようが家に迷惑さえかけなければどうでもいい。
今一緒に居なくたっていずれ同じ家で暮らさなければならないんだから今くらい自由でいたい。
だから俺もあいつに干渉しない。

放課後部活に行こうとコートまでの道を歩いていれば後ろから名前を呼ばれた。
振り返らずとも分かるそいつは鞄を持ち小走りで傍に来た。

「景吾さんっ」

「…なんだ?俺は今から部活なんだが」

「あ、ごめんなさい。あの、見学していてもいいですか?」

「あー、別に構わな…いや、今日は帰れ。初日で疲れも溜まっているだろ」

見学くらい良いかと思ったが途中で部活後の事を思い出しやめた。
他人から見たら許嫁の体調を気にして帰りを促す優しい奴に見えるのかもしれない。
実際はそんな優しいものではないが。

「、そうですね。では今日は帰ります。部活、頑張ってください」

眉を下げてにこりと笑い一礼して正門へ向かう後ろ姿を見て俺もコートへの道を進む。

「跡部ー」

部室に入る直前。
忍足に呼ばれ動きを止める。

「許嫁来たんやってー?もう遊ばれへんなぁ」

相変わらず胡散臭い笑みを浮かべて言ってくる忍足に鼻で笑い返す。

「関係ねぇな。俺は自分のしたいようにする」

「ふーん。しっかし可哀想やなぁ許嫁の子」

「アーン?」

「やって自分の婚約者がこんなに知らん女と遊んでんねんで?しかもその事知らんねやろ?」

つい最近までイギリスに居たあいつが俺の女関係を知っているわけがねぇ。
まぁそんな事俺には関係ない。

「ま、ほどほどにな」

忍足はそう言って部室に入って行った。
ほどほどに、か。
そんなに遊んでるつもりはねぇがな。






「ん、あん!そこ…」

誰も居なくなった部室。
静かな室内に濡れた音と女の下品な喘ぎ声が響く。
どうして女はこう大きな声で喘ぐのか。
わざとらしくて冷める。
こういう行為を繰り返しても絶対にキスだけはしない。
萎えてしまうから。
何故だかは分からない。
キスもしない、抱きしめもしない。
ただただ事を進めて吐き出すだけの行為だ。
それでも女は恍惚とした表情をする。
本当に、下品な生き物だ。



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