「なに?咲柚美が日本に来る?」

いつものように朝起きて朝練に行く準備をして部屋から出るとミカエルに言われた。

「はい。御家族で日本に帰国するとのことです。咲柚美様は坊ちゃんと同じ氷帝学園に通うとお聞きいたしました」

「…そうか、」

咲柚美、か。
その名前を聞いたのはいつ振りだろうか。
俺は幼少期の頃から跡部を継ぐ為様々な教養を受けてきた。
日本に来る前、イギリスで生活していた頃は良く話していた気もする許嫁の結城咲柚美。
あいつは根っからのお嬢様で俺が言うのも何だが本当に世間知らずだ。
教養は完璧だがな。
俺の記憶では小学校を卒業した小さい咲柚美しかない。
まだ日本に帰国したばかりの頃はあいつからの電話にも出ていたように思うがそれも学校に部活、家のことで忙しくて出なくなった。
正直言うとどこか面倒だという思いもあったのかもしれない。
咲柚美は大人しく、勝気で俺に歯向かってこれるような女ではなくて俺のタイプではなかった。
例えるなら昔の日本の女だ。
夫である男の三歩後ろを歩くような、そんな女だ。
きっとあいつは日本では大和撫子と呼ばれるに相応しいのだろうが、俺の趣味ではない。
だからか、氷帝に入学してキングとして氷帝を纏めてきた俺に言い寄るメス猫は数知れない。
許嫁が居ようとも今俺の傍には居ないのだからと抱いてくれと言われたら迷わなかった。
中学生の癖に、と言われるかもしれないがそれがなんだ。
咲柚美に対しての罪悪感は不思議となかった。
そもそも忘れていたのだから。
最低と思うだろうか。
しかし興味がないのだ。
だからミカエルから咲柚美が氷帝に来ると聞かされた時自由に遊べなくなる、と思ったんだろうな。



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