昔は、会いたければ会えた。
今だって家の距離はあのころと変わらないのに。
距離のあった2年間よりずっと近いのに。
何故だか今の方が遠く感じる。
これが心の距離というものなのか。
好きだけじゃ、ダメなのかしら。


友達だと思っていた方達が実は友達ではなかったことが発覚し、それでも悲しんでいられる暇なんて私には無いからリセットする。
あんなに憧れていた日本。
お父様お母様の故郷。
夢を抱いていたのかもしれない。
現実はこうも違うもので、早々にイギリスに帰りたかった。
でもそんな弱音吐いてはいけない。
だから頑張ろうと気合を入れた。

そんな時、忍足さんが話しかけてくれた。
あんな場面を見てしまったからかもしれないけど、どうやらお友達になってくださるようで、素直に嬉しかった。
正直最初は裏切られたばかりだったこともあり信用出来なかったけど、景吾さんが率いるテニス部の方だと知って、話してみて本心なんだと分かった。
日本に来て初めての本当の友達だった。
もっと頑張ろうって思えた。

また昔みたいに出来ることを信じて、夢を抱いて。




咲柚美と仲良くなって数日が経った。
彼女は相変わらず跡部のファンから鋭い視線を受けているがそれはまったく気にしていない素振りだ。
昼休み彼女の話を聞くのが日課になってきた。
内容はほぼほぼうちの部長様に関してだが。
咲柚美は自分の目で見たものしか信じないタイプの人間らしく、そんな所あいつに似てるなと思いながらも跡部に関しての噂、基女関係についてはすまんと心の中で謝った。
直接関与していないとはいえ、煽るようなことを言ってしまったのは事実だから。

「もうすぐ跡部の誕生日ちゃうん」

「そうなんです!パーティーには招待していただいているのですが、肝心のプレゼントが決まらなくて..」

リサーチしようにもこちらも相変わらず、会えていないらしい。
あいつほんま、どないやねん。
遊んでんのか知らんけどええ加減向いたっても。
もうそれでも頑張る咲柚美が健気でしかたないわ。
どこのラブロマやねん。
俺はハッピーエンドしか見たないで!

「ま、自分の欲しいもんは自分で手に入れてまうやろしなぁ」

「そうなんですよ..何もかもをお持ちの方ですから余計何を渡したらいいものか...」

「去年は何やったん?」

「去年は、私まだイギリスに居たのでメッセージとテニスコートを」

「テニスコート...」

せやったこの子もめっちゃ金持ちやった..。
怖いわぁ。

「じゃあ今年は近くに居るんやし、一緒に過ごせたらええな」

「はい!それで少しは認めてもらえるよう頑張ります!」

あぁもうほんまに!
なんやろ、父性?
こんなにも一途に跡部のことを思っとるってのにあいつは....。

「ところで忍足さん」

「なんや?」

「あの、古典を、教えていただけないでしょうか…?」

申し訳なさそうに、少し恥ずかしそうに。
そう聞いてくる彼女が何だかとても可愛かった。
これが庇護欲というやつなのか。

「ええで。苦手なんやろ、国語とか」

笑って言ってやればぱぁっと顔を綻ばせた。
そして実は英語も苦手なんです、と。

「あぁそっか。日本と本場ではちょっとちゃうんやっけ」

「そうなんです。文法の作りが違うみたいで、まぁ古典なんかよりは全然分かるんですが」

それに私のはイギリス英語ですから、と。

大変やなぁ、ほんま。
早く報われてほしいな…。



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