‖05 愛用している薄浅葱の番傘をくるくる廻しながらゆるゆると双極の丘を目指す。 「隊長急がなくていいんすか」 半歩後ろに居た阿近がそう聞いてくるが、急ぐ気にはならない。 「いいのいいの。疲れてしまうわ」 きっとこの番傘をたためば強い陽射しにやられてしまうんだろうな、と考えながら双極の霊圧を探る。 逃げるにももう少し時間が必要だろう。 あともうちょっとで双極の丘には辿り着くし、急ぐ必要なし。 随分と懐かしい霊圧がある。 元気だったようでなにより。 あれも全て藍染のせいだと思うとなんだか無性に腹が立ってきたわね。 まったく勘弁してほしいわ。 あぁ、着いてしまう。 隊長格が集まる双極の丘。 本当なら近づきたくもないけれど、私だって一応隊長なもので。 副隊長のマユリが使えない今顔を出すしかない。 「わー」 「なんすかその声」 その光景に抜けた声を出せば阿近にツッコまれてしまった。 自分でも思ったけど。 視線の先には藍染が砕蜂と旧友である夜一に拘束されている。 まぁあいつにはあんなもの拘束の内に入らないんでしょうけど。 その周りには残りの隊長達。 なんだか知らない顔もあるけど、あれが例の旅禍なんでしょう。 その中のオレンジ頭の子から覚えのある霊圧がするけど。 今は関係ないわね。 「お久しぶりね、藍染惣右介」 あんな所に居ても仕方ないから取りあえず藍染の前に立つ。 「!玲紋隊長、お久しぶりです」 一瞬目を見開いたけれどまたすぐにあの胡散臭い笑みに変わる。 「彼方!」 総隊長の声が聞こえたけれどまぁほおっといて大丈夫でしょう。 他の隊長達の息を飲む気配もしたけどそれも大丈夫。 「どうしたんですか?貴女が出てくるなんて珍しい」 「マユリが旅禍にやられてしまってね。仕方なくよ」 「あぁ、そうでしたか」 「ところで、貴方こそ随分面倒なことをしてくれてるじゃない?」 そう問えば藍染はにやりと笑んだ。 「貴女からすればそうかもしれない」 「私だけじゃないわよ」 「ふっ。気づいていたんでしょう?あの時から」 「何のことかしら」 「、まぁいいです。もうそろそろ時間だ」 「あらそう。じゃあ最後にひとつ」 空からの光に藍染、市丸、東仙が包まれようとしている。 砕蜂と夜一はとうに藍染から離れている。 近くにいるのは私だけだ。 「何でしょうか」 「貴方、本当に勝てると?」 「愚問だ。私は天に立つのだから」 眼鏡を取り髪を撫でつけたその姿になんだかすごくイラついて、思わず隠し持っている獲物を投げてしまった。 と同時に鬼道を唱える。 「破道の三十一」 「そんなものでどうするつもりですか?」 「どうも。『赤火砲』っ」 「なにを、!?」 直撃した腕と脇腹から大量の出血をおこす藍染の顔が歪んだところで完全に光に包まれた。 もう手出しは出来ない。 けれど藍染相手にこの程度の鬼道であの傷を負わせれたのならまぁいいでしょう。 「藍染惣右介。貴方は私を分かっていない。三十番台の詠唱破棄でその威力があることを覚えておきなさい」 「どうやらそのようだね...ご忠告ありがとう」 きっとあれを身体の中心に当てていたなら死んでいる。 ...藍染でなければ。 この後すぐ総隊長に捕まった。 解せない。 [*前] [次#] |